
寒風が吹いているのに、戸を開けっ放しのちいさな町工場があった。
なかがまる見えだった。機械や部品が乱雑を極めているようだったが、きちんと使いやすいように配置してあるのかもしれなかった。
新しそうな機械もいくつかあり、男がひとり忙しそうに働いていた。
「写真を撮らせてください」
と、声ををかけると、こちらを一瞥して
「どうぞ」
と、いって、また仕事をつづけた。
画像は19日、印西市大森で撮した。
過程音いま決定音機械冴ゆ 草田男
断続的にきこえていた不揃いの試作の音が、安定した連続の音に変わったのだろうか。
「冴ゆ」が冬の季語。
子供の頃、祖母の家に行くと、周りに一軒だったか、何軒もあったのか・・工場があって、機械の音が、バッタンバッタン聞こえていた。
隣におばの家もあり、そこにはいとこもいて、祖母の家に行くことは、そのころ一番の楽しみだった。
今でも、テレビでこの音の場面が出てくると、その頃の、祖母の家のまわりの風景を思い出す。
機械の音が冴え渡った冬でも、とっても暖かな気持ちだった。
いまは閑静な住宅街になりましたが、町工場はこちらのほうにも移転してきているのですね。大きな工業団地でして、そのうちに写真を撮ってこようと、いま、思いつきました。
「べい独楽のおどけがましう廻りけり
麦人」