総理がコジキでコジキがソーリィー 035 いじめにあうのはよい子 少年は水面を見つめていた。ソーリィーは何も話さぬ少年の顔をのぞきこんだ。 「おじさん、本当に僕のこと知らないの?」 「知っているさ。でも、忘れたほうがいいことは忘れることにしている」 「それで、忘れることができるの?」 「できない!」 ソーリィーも少年も笑った。 「おじさんの娘って、自殺したんでしょう」 「真美か……。そのとおりだ」 眉間に皴ができるソーリィー。 「どうして自殺したの」 「いじめがあったからだよ」 「弱かったんだね」 と、自分のことは棚にあげる少年。 「そんなことはないさ。しっかりしたいい子だったよ」 ソーリィーは力むことなく、自然に口にした。 「母親が幼稚園のときに交通事故で亡くなったんだよ。それなのに、わたしは何もできなくって、真美のほうが親みたいだったなあー」 「親みたいだったの?」 「そうさ、食事なんてつくっていたのは、わたしよりも真美の方が上手だった。だから、その数も徐々に真美の方がよくつくるようになった」 「いい子だったんだね」 「そうとも、いじめにあうような子供はよい子なんだよ」 「よい子?」 自分もよい子なのかもしれない……と頭の隅で少し思った。でも、すぐに否定した。 「いじめにあうような子供はよい子が多いんだよ。そして、自殺するような子どもも、よい子が多いんだよ」 「そうかなあー。そうでもないと思うよ。おじさんの娘の真美さんは、そうかもしれないけどさあー」 「いいや、文献にはそう書いてあるんだよ。わたしの思いこみじゃない……」
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