ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 142伝統 「京都にはいろいろな伝統的なものがあります。でも、本当の伝統というのはただ伝えていくのではなく、それを伝承したものが、その時代にあったものに創意工夫していくものです。新しい物好きの京都人と他の地方の人からは言われます」 「伝統かあー。僕の生活に伝統なんかあるのだろうかなあー」 と、勇気は考えてみる。 「伝統は自分たちで守るものですね。今の日本人って多くは古い日本のことを、ダサいとか言っているのはがっかりするわ」 「そんなことはないさ。むしろ、軽率な今の日本の文化より、よほど優れているよ、江戸の文化もなかなか素敵だよ」 「何でも、西洋の物がよいというものではないよね。インドの時計が世界一と言われているよね」 「どうしてか、東洋の物を日本人は低くみてしまう」と、勉。 「山菜寿司が運ばれてきた。食べてくださいね」 「鱧の出汁でつくられたお吸物もおいしいですよ」 「刺し身湯葉もどうぞ。明日は湯葉のお店と、豆腐のお店を見学しますよ」 「京都の水、水は命をささえる大切なものですね。それも勉強してくださいね」 「この野菜はなんという野菜なの」 「壬生菜どす」 「壬生菜って聞いたことないなあー」 「これは、京野菜といって、これも伝統ある野菜です」 「野菜までに伝統があるのか?」 マイクはびっくりしている。 勉はあることを思い出した。 「壬生浪って言葉あったよね。たしか新撰組のことだったよね」 「そうです。ごろつきとかわらないから、壬生浪って陰口たたかれていたんですよ」 「この水菜はおいしいね」 「水菜と壬生菜は煮ていますけど、違うもんどっせ。壬生菜と水菜は葉っぱがちがうんです」 「美味しいよ」 「美容と健康にもいいにのよね」 「そうでっせ。京野菜は京都がほこる野菜でっせ。伝統が息づいております」 「へえー、知らなかった」と勇気。 「このごろは、品種改良というのをするでしょう。ほら、放射能をかけて、遺伝子に傷をつけて、ええ野菜をつくろうと実験してはるでしょう……」 「でも、人間なら遺伝子が傷ついたら、ガンになるっていわないかい!?」」 「そうでしたね。そんなことして欲しくもないのにね。金儲けのためにしている人たちがいます」 「また、アメリカだなあー。遺伝子組み換え食品とかいうのあったよねえー」 「まったく、アメリカってあきれるよー。拝金主義者でいやだねえー」 「アメリカン・バッド・ドリーム」と、あきれる博士。 「京都はアメリカみたいに環境を破壊しないで、品種改良も伝統でやってきたんだよ」 博士はうれしそうな顔をして、壬生菜を箸でつまんで食べた。 「栄養もえいよ」 勉からならった日本語のダジャレであるが、確かにいい。
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