ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 115ダストドーム 「うん、そうだよ。ヒートアイランドの上昇気流で、周辺から水分を含む空気が吹き込んで対流し、上空に積雲が形成されやすくなり、それがにわか雨を降らせると考えられているそうだよ。サーマルプルームって都市風のことらしいよ」 勇気はにわか勉強したことを語った。 「昼間は、太陽からの熱やビルなどの暖・冷房などで地表面や周囲の空気が熱せられ、「サーマルプルーム」と呼ばれる熱上昇気流ができる。これは、都市の大きさや地形などによって異なるので上昇気流の強さも変わる。一方、郊外は、田園や川、池、草他などが多く、地表面気温は低く抑えられ、周囲より冷たいので下降気流が生じる。だからダストドームができるのだろうなあー」 「ダストドームとは、ヒートアイランド特有の循環流が地表付近に発生し、汚染物質などがあたかもドームに閉じ込められたようになる状態のことをいうのでしょう」 「飛行機の上から見て、あのドーム球場のように、黄色く汚れた空気がドームのように見えるそうだよ。都市全体を包んでいるようにね」 「ヨーロッパのように七、八月にバカンス等で東京都心から人口が半分も減れば、ヒートアイランド現象は著しく減少するだろうって書いてあるよ。そうなったらいいのになあー」 勇気は日本がヨーロッパのようになったらいいのにと思っていた。 「それだけのために、バカンスはないけど、ヒートアイランド現象の被害を少なくするためにも、それは有効な手段だと僕も思うよ」 博士は研究好きなので、バカンスより研究をしていたいと思った。 田無タワーは天候によって照明がかわるという。 紫色ならば晴れ、水色なら曇りで、緑色ならば雨であるという。 しかし、現在は昼なので輝いてはいない。 その近くに多摩六都科学館がある。そのプラネタリウムを楽しみに全員で行く。 プラネタリウムだけではなく、科学のことを学ぶことができる。 それも楽しみながら学ぶことができる。 プラネタリウムでは全天周映画をみることができた。 平面ではなくプラネタリウムで見る空(宇宙)が画面になっているのだ。 バスの中でまた博士と勇気は話しをする。 「どうしたら、ヒートアイランド現象はなくなるか、勉強した?」 「したよ。でも、これもなかなか困難なことだね。ますます、パソコン一つも高性能になって、エネルギー消費はあがっていくだろうしね」 「そうだね、簡単なことではない。でも、見放しておくこともできない問題だと思うよね」 「本当にそうだ。二○三一年、東京に人は住めるか? なんてショッキングな見出しで書かれてもあったよ」 「このままだと危険なレベルまでになるということだね」 「数値シミュレーションでの結果を用いても評価できるので、最後に将来の東京の快適性の評価例として、二○三一年の夏、夕刻の最大値は大手町付近でえられ、その値は四十三℃にもなると予想しているそうだよ」 「四十三℃か、それはきついなあー。そんな中で生きていくのは大変なことだよ」 「四十℃を超えると体温上昇、血液の循環不良やヒートショックなどの生理、健康面において危機的状況となるレベルとされ、都市空間は、もはや人間の住める環境ではなくなることが予想されると書いてあるよ」 「でも、それは大げさかもしれないね。だって、インドでは今でもそれくらいの温度にあると思うよ。まあ、かなり住みづらいということは、そんな予測なしでも理解できるよ、この東京の街を歩いていたらね」 「僕はこのイベントが終ってもここで暮らさないといけないと思うと、かなりきついね」 「でも、豊かな生活をしているのは、この地球ではほんの一部だよ」 行者はきびしい顔つきをしている。 「どうしたら、このヒートアイランド現象を少しでもマシにできるのだろう」 腕組みをしている勇気。 「豊かっていっても、悩みだらけの豊かさね」 季が笑っていた。
ありがとうございます。 Index[Ra.] |
最新の画像[もっと見る]
- いい音ってなんだろう-あるピアノ調律師、出会いと体験の人生- 12年前
- 音楽演奏の社会史-よみがえる過去の音楽- 12年前
- AERA ’12.7.16 12年前
- 週刊現代 2012-8-11 12年前
- AERA ’12.7.9 12年前
- 必ず来る!大震災を生き抜くための食事学-3・11東日本大震災あのとき、ほんとうに食べたかったもの- 12年前
- 僕のお父さんは東電の社員です-小中学生たちの白熱議論!3・11と働くことの意味- 12年前
- 日本の原爆-その開発と挫折の道程- 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/13 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/6 12年前