116風の街

ラヂオアクティヴィティ［Ra.］ 第二部・国境なき恐怖 六、夢の島とヒートアイランド 116風の街 「それはエネルギーの消費を減らすことだと思うよ。まず、トイレの水を飲み水から天水にかえるっていうのもあったと思う」 「まず、トイレの水かい？」 博士は困った顔をして笑っている。 「でも、一般の家庭では現在でもトイレ用水には、飲める水を使っているよ。水をつくるのにもエネルギーが使用されているよ。そのエネルギーが無駄だと僕は思う」 「水の問題には、水質の確保などあるだろうねえ。川の水をそのまま、トイレで流しても問題がある場合もあると思うよ」 「でも、雨水を使用しているビルがあるって、ニュースで見たことがあるよ」 「それでも、ヒートアイランド現象を軽減させることができるよね。他には何かある？」 「あるよ、ゴミ問題だよ、それを何とかできるとしたら、かならず軽減させることはできると思うよ」 「そうだよね、ゴミや廃棄物の問題は、燃焼によって発生する猛毒のダイオキシンの問題もあり、年々深刻となっているよね。ゴミを出さない社会の構築とリサイクルシステムの導入が待たれるよね。一家庭の年間ゴミ処理費が十万円というのは、無駄としか言いようがないよ」 「十万円は大きいよね。神奈川県の川崎市では十八年前からゴミの減量化やリサイクル化で、すでに十八年間で十一億円の処理費を節減しているというデータもあったと思うよ」 「また、何でも都市に集中するから、そこに人が集まるから、人はエネルギーを使用するから、温度が上ってしまうそうだよね。だから、地方に機能を分化させることも、ヒートアイランド現象の軽減になると思うよ」 「都市工学を考えると、風をうまく利用するという手もあるよ。ヒートアイランドが消滅する風速があるそうだよ。台風が過ぎ去ると晴天になることが多く、東京からも遠く富士山がくっきり眺望できることはたびたび経験するそうだね。ヒートアイランドも風が弱く、よく晴れた冬の早朝に観察されるが、風が強くなると消滅することが知られている」 博士がそう話すと、勇気は本に書いてあったことを思いだした。 「たとえば、東京では風速が約十四メートル毎秒を超えると一時的にヒートアイランドは吹き飛ばされ消滅するそうだ。でも風がなければ、すぐダストドームが形成されるそうだよ。困ったことにねえー」 勇気いくら風が強く吹いても、すぐもどってしまうなら、何も役立たないと思った。 「そう風は有効だよ。だから、東京では風の通り道をつくったらいいと提案している人たちがいる。高層化によって、風が通りぬける道がなくなったという人たちがいる。だから、夕涼みもできなくなったという人もいるよ」 「風の通り道」 「そうだよ。東京駅付近で風が高層ビルに当たるので、通りぬけるようにしようという考えさ。川の近くは風が通りぬけるから涼しいだろう。また、その風の道から裏道などに住む人にも風が通りぬけるようにする、都市工学を考えている人たちもいる。これも有効だと僕は考えるよ。でも、すぐにはできるものじゃないね。しばらく、我慢だろうなあー」 「我慢だろうなあー。しばらくは、今よりひどくなるような気がするよ」 うんざりしている勇気。 「まだまだ、ヒートアイランド現象を軽減させる方法はあるよ。排熱利用もその一つだろうねえ」 「そうだよね。それはいい方法だと僕も思う」 「パリをはじめとしたヨーロッパ各地では、地域暖房の熱源として火力発電排熱、つまりコージェネレーションやゴミ焼却排熱では、工場排熱、低温排熱などの利用が進んでいて、蒸気や温水パイプを敷設して行われているそうだ。これは省エネルギー・環境保全を目的として、国・自治体が積極的に行っているそうだよ」 と博士は話す。 「日本でコジェネをすすめている人たちもいるけど、まだ普及したとはいえないと思う。日本では、排熱利用が積極的に行われていない。工場排熱の利用についても規模が小さく、総利用量は少ないという。その理由は種々あるそうだよ」 「排熱利用を行うことによって、先行投資が増大する。排熱源が負荷密度の高い地域にある場合を除けば、燃料燃焼による熱利用に比べて排熱利用が高価となる場合が多い。発電所やゴミ焼却プラント、工場などの排熱を利用する場合の事業・運営管理の主体、およびその方法についての問題があるとかの企業の論理だろう」 「そりゃ、企業だって、儲けを出さないと生活やっていけないからなあー」 閑話休題 風の通しの悪い社会は、 街まで風通しが悪く、 熱がたまるようになっている ようですね。 風の通り道をつくるなどすれば、 ヒートアイランド化はましになるという。 さわやかな風が吹く街であって欲しいですね。 ↓１日１回クリックお願いいたします。 ありがとうございます。 Index［Ra.］