総理がコジキでコジキがソーリィー![]() 105 勇気をだして手をあげる…… 「そうですね、永嶋先生、何かご意見はおありですか? 生徒の心をどれだけ傷つけられたか、こんなもんじゃないこと、おかわりにはまだなってないと思いますけど」 美智子は永嶋をにらみつけた。 「永嶋くん、生徒に何かいいたまえ」 教頭が、永嶋の手をとった。 壇上につれられていく永嶋。あんなに小さなやつだったんだ。 三沢少年は巨大な存在だったと思っていたのに、あんなに小さなやつだったんだ。いや、ぼくと変わらない人間だったんだと思えたが、憎しみはつのるばかりであった。 永嶋はマイクの前に立たされると、 「うそだー」 と、絶叫した。 みんなは驚いた。講堂は静かになった。 「どうして、そんな嘘をつくんだ。青少年という時代には、いろいろなことを思う。いいか、きみたちは、公立学校ではない、この名門校に育つ喜びがわからないのか。わたしも、この学校のOBだ。この学校の素晴らしさを知っている。きみたちは、なにか間違った考えに動かされているのではないか」 などと、せつせつと訴える。 「そうでしょうなあー。まだ生徒たちは子どもですからあー。教育というのは、時には生徒にとっては辛いものかもしれない」 と、理事長は意見した。 「先生、では“いじめ”もなく……。あなたは、自殺者が出ても、口をそろえて、そんなことはなかったと言えば、それで終わるといったのも嘘だというのですか?」 「そのとおり! 嘘に決まっている。わがクラスの生徒で、そんなことをわたしがいったという者がいたら、会ってみたいものだ。内申書にもきっちり書かせてもらいます。虚言癖がありますとね!」 美智子はうなだれた。負けるかもしれない。冷や汗が出てきた。 でも今を逃したら、話はややこしくなる。仕方なく、美智子は、 「今のことを言ったことを聞いたことがある人」 と質問した。 三沢少年は心臓の音が耳元まで聞こえてきた感じがした。もし言ったら、どうなるんだろう、さらにいじめられるのだろうか? ぼくが言ったとしても、あいつは嘘つきで、クラスで問題のやつだとか何とか、平気で嘘をつけるやつだ。それが永嶋だ。 --いや、そういう教育を受けた者こそがエリートだと、永嶋は教えつづけてきたし、教えられても来たのだ。 「いませんか?」 三沢は美智子の顔を見た。 --ここまで、やってくれた美智子のために、手を上げないでおくことはできなかった。
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