ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 067暑い夏 子どもたちは船室に戻って来た。 「どうだった」 夏八木は皆の顔を見て話しかけてきた。 「暑かった!」 みんなは口にした。 涼しい顔の夏八木は、皆を食堂に集めた。 ディレクターがかき氷をつくっていた。 「みんなの放送がされているわよ」 「えっ!」 「僕たち、意外に神妙にしているね」 「当たり前でしょう。平和式典だもの……」 ナンシーは不思議に思えた。 なぜなら、ナンシーの横の席は空席になっていた。 たしか、輝代がいたはずなのに……。 ナンシーも、豆粒ほどにしか見えなかったけど……。 「でも、式典よりも毎日が平和であることが大切よね」 輝代は熱心に述べた。 「そうだわね」 夏八木は同意した。 輝代ばかりなら、あのα作戦はしなくっていいのにと思った。 「しかし、平和であると、かき氷も食べられて幸せだね」 勇気はみんなの笑いを誘う。 「そうだわね、食いしん坊は、食べることで平和のありがたさを知るってわけね」 夏八木は笑った。 「そうだよ、おかわりがあったら、なんとシャロームなことでしょうか」 「シャロームか、平和ってことね」 「そうだよ。おかわり!」 「でも、お腹をこわしたら、駄目なので、次回に乞うご期待!」 「また、明日ってこと……、がっかり」 全員、エアコンがきいた船室でリラックスしていた。 「あの日に、平和公園の辺りはどうなっていたのかしらと想うだけで寒けがするわ」 「あの川の辺りにも、被災者は大勢やってきただろうなー。もうもうと炎が煙をあげていたことだろう。火災が続き、人々は川に飛びこんだ。火から身を守るために、川に飛びこんだ。その川には、水を下さい、水を下さいと言って、死の行進をした人たちが、水を得て安心して、そして力がつきて、土左衛門になって、水に流されている人たちもいたことだろう。その水の中を生きた人たちが、泳ぎ、海まで行こうとした。生き残った兵隊が、船でそういう人たちを救ったという記録も残っている。そして、船に乗っていると、黒い雨が降ってきた。だいたいそんなところだと想う」 「黒い雨……それは、放射能を帯びた雨だった。おおぜいの人がこの恐怖の雨を浴びたのよ。そして、二次被曝したのよ」 悲しい声の主は輝代。 「放射能……」 ナンシーは目を細くした、目も悪くないのに、近眼の人が遠くを見つめるような目をしていた。 「あいつ、レイデを苦しめ殺した。あいつが、ここでも、人をその毒牙で惨殺しているのよ……」 と心の中で思い、拳をにぎりしめていた。
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