ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 086病と死の星、地球 「それは、アメリカとの安全保障において、アメリカの軍隊が駐留していたところです。つまり、アメリカの他にも標的をつくっておくことが、アメリカにとっての策略だったのです。軍事拠点をやはり、ロシアは狙ってきたわけです。田圃に爆弾を落としても、仕方ないですからな……」 「ヨーロッパからの情報です。スイスのジュネーブからです」 「はい、こちらスイス特派員のジョンソンです。ヨーロッパの被害はずっと少なかったです。それは壊滅状態に近いアメリカやロシアに比べてです。しかし、まだ戦争は終わっていません。これから、また戦後のことを考えて、イギリスやフランスに爆弾を落とす国もあるかもしれません。軍事評論家のフランクさんに、うかがいます」 「それによって生じる死者は一千万人以上、重傷者五百万人、放射能患者一億五千万人、それらの診療に必要とする医師と看護婦は全人口よりもはるかに多く、輸血用血液とリンゲルの合計が五百億リットル。酸素ボンベ六十三億本でした。ヨーロッパの有する全人口の五分の一が確実に死ぬことを意味しています」 「何よ、そんなの勝手に想像しないでよ!」 ミス・ホームズは怒っていた。 また日本の大阪のスタジオである。 「アメリカもロシアももはや、文明国とはいえない惨状であると、無線による報告がなされてきました。見える地形は、まるで、他の惑星のように、人間のつくった文明の痕跡はないそうです。残った地点では商店の略奪が始まったそうです」 「そうでしょう。そうなるでしょう」 軍事アナリストは呑気にうなずいている。 ほかのチャンネルをかけてみた。 テレビ画面には、別の軍事アナリストが出ていた。 「核攻撃の三大原則というものがあります。核攻撃力の時間的集中、組織的集中、地域的集中です。これが実戦されたのです。つまり核の時代には勝利国というのは存在しないということが、これで証明されました」 マイクは壁を蹴った。 「そんなこと証明して、どうするのだ。栄光あるアメリカ合衆国が……」 そして、元のチャンネルに戻す。 またアナウンサーが話す。 「今、情報が入りました。ワシントンに落とされた爆弾の大きさは十メガトンだそうです、どうですか。鬼頭先生」 「そうですね。広島型は二十キロトン。十メガトンというとその五百倍です。その熱で、直径三十八キロの円内が火炎の渦にのみこまれます。それは爆発の瞬間です。日本でいうと、千葉県の市川から東京の立川まで、つまり東京都の全部が燃えあがったのです。ガンマー線は骨の中までつきとおしますし、残留放射能で直径三百キロ以内が汚染されます。爆心から百六十キロ以内で三十六時間屋外にいた人は、八百レントゲンの放射能を受け、百パーセントが死亡します……ということは、東京近郊から避難する人が徒歩で逃げていた日には、全員が死んでしまうということです。……といっても自動車で逃げてもだめです。おそらく大変な混雑で動けないだろうし、空気を吸わないでいられるはずはないのですからね……」 軍事アナリストは東京近辺の結果を計算していたのだろう。 が、今落とされたのはワシントンだった。 しかしアメリカ軍の基地がある横須賀にも何かしらの爆弾は落とされた。 勇気は情報を欲しがった。 しかし、ニュースはなかった……。 翌日の朝になっていた。 スタジオにいるみんなは一睡もできなかった。
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