ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 077バーバラが“原爆乙女”…… しかし、マイクはまだ“原爆乙女”なら、生きていてくれるのだから、幸せな方ではないだろうかー。 いや、多くの苦しみを背負って生きているより、むしろ一瞬にして死亡した方が幸せなのだろうか……。 マイクの心は混乱を究めた。 椅子をふりあげた。 勇気は後ろから、マイクの腕をとって、 「冷静になれよ!」 と説得した。 「うっうっうっ」 マイクは真っ赤な顔をして、ブルブルと震えている。 「椅子を投げたって、どうにもならないぜ。クールになれよ」 と睨みつけた。 「わかったよ……」 その声は高音で弱々しく、ついにマイクは泣きだした。 “原爆乙女”をアメリカ人は、アメリカの世界最高の技術で、そのケロイドをとる形成外科をした。 そうボランティアで、何と慈悲深いアメリカだと思った。 しかし、もしロシアがそんな行為をしたって……。 おわびなんかになるものか……。俺のバーバラだぞ! 「ぜったいにロシアを許さない」 マイクは唇をかみしめた。 原爆乙女に援助の手をアメリカは与えたと威張っていたマイク。 そんなことを、すっかり忘れている。 「ロスに原爆が落ちました。軍事アナリストの鬼頭先生に来てもらいました」 「えー、ついに来たのですね。こうなることは、わかっていたのです」 「わかっていたのなら、なぜ、早く言わない!」 マイクはテレビに向かって、強い口調で訴えた。 しかし耳をかさなかったのは、マイクの方である。 ロスアンジェルスの地図が出され、コンピューターで死亡者を予測している。 「ロスの中心部は、もはや壊滅です。人間のすべては分子に変えられました。この人たちは、幸福といえます。その回りの人たちには、生き地獄が待っています。つまり、片足がなくなったり、失明したりするのです。いいえ、失明しているでしょう。そして、すぐにも急性症状があらわれます。この辺りの人たちは、二十四時間のうちに死亡します。断末魔は激しいものがあるでしょう。その回りの人たちの命は助かるでしょうが、火事などから逃れるために、パニックになるでしょう。銃器の自由なアメリカでは、略奪なども起こるでしょう」 「天気予報じゃないぞ!」 勇気は怒った。何十万という人たちが死んでいくのに……。 「助かる道はあるのでしょうか?」 「いいえ、ないでしょう。日本もどうなるかわかったものではありません」
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