ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 117風力発電 「大掛かりなものでは、クールスポットというのがあるよ。これはお金がかかりそうだけど、効果はあると思う」 勇気が話していると、博士が語り出した。 「でも、それでは、地球温暖化に貢献はしないと思うよ。水で冷やそうという大掛かりなだけものさ」 勇気は、それもそううだなと思った。そして、話題をかえる。 「人類って、すごいみたいに大人はいうけどさ。特にマスコミではそうだよ。でも、案外たいしたことないよね。動物の方がずっと素晴らしいよね。たとえば、深海に住む発光動物のホウライエソの発光効率は八十パーセント以上であるそうだよ。これに対し、人類がつくった蛍光灯は二十パーセント以下だってさ。無駄が多いってことでしよう」 「そうだね。動物が食物からエネルギーを摂取して運動エネルギーに変換する効率は六○パーセントを超えると言われるのに対し、自動車の効率は二十五パーセント以下だそうだよ。まだまだ改善できるとしかいえないよね」 「あっ、まだヒートアイランドを改善する方法があったよ。それは風力発電や太陽光発電だよ」 「東京でも風力発電をしようという人たちが生まれているよ」 「風力発電の発想が生まれたのも興味深いよ。風力の恩恵を一番に受けていた国はオランダだった。国土の四分の一が干拓で造成され、三分の二が海抜0以下の土地で、十五世紀に風車が排水に用いられたのさ。十九世紀中ごろには、約九千台が全土で使用されていたという」 「今でも古い風車は大切に保存され、観光資源になっているよね」 「でも、動力革命、石炭にとってかわられたよ。環境問題も含めれば、風力のほうが優れた資源だと思うけどもね」 「だけど、風力を見直す人たちがいた。航空機などで進んだ学問を応用したのさ。流体力学とか空気力学をボストンの技術者パルマー・パトナムが利用して風力発電を考えようとした。一九三九年、流体力学の世界的権威、カリフォルニア工科大学のテオドール・フォン・カルマンや、マサチューセッツ工科大学の学者たちの協力を得たのさ」 「いろんな学問がそれぞれに分かれてあるとは限られていないってことだね。博士は物知りだなあー」 「そのとき風車の発電出力は千二百五十キロワットであるそうだよ」 「そういえば、この宇宙船「地球」号がはじまる前に、風力発電に追い風だって新聞に書いてあったわよ」とミス・ホームズ。 「原子力発電所から出る使用済み燃料の置き場に困った電力会社が置き場の増設を認めてもらおうとしたのさ。そうしたら、アメリカのミネソタ州政府が風力発電を勧めるのを条件に置き場の増設を認め、世界最大級の風車群が動き始めているってさ」 「使用済み燃料の置き場は日本でも問題になっているよ」と勉。 「アメリカのエネルギー省は、二十年後に風力を発電の五%にするとしている。勢いづく風力と廃棄物に悩む原子力。米国の新旧エネルギー事情って感じだなあー。アメリカでも風力を増やしていこうとしているのだろうなあー」 「日本はどうなの、偉大なるアメリカのことを模倣したがるけどさ」 とマイクが質問してくる。 「日本でも、北海道苫前で今秋、二万キロワット発電予定だそうだよ」 「へえー、日本でも、風力発電のことが計画されているのか」 「ちょっと前までは、風力なんて役立たないと非難されていたのにねえー」 「そんなわけがないだろう。成功している国があるのだから」 「ところが、日本の風土にはあわないとか、無理矢理、原発をすすめたい人たちが多かったのだろう。今では、多くの企業も着目しているらしいよ。国内初の本格的ウインドファームつまり、大型集中風力発電所とあって、全国各地から視察団が訪れているそうだよ」 「海からの強風を生かし、北海道で風力発電施設の建設が続いているのよ。どれだけ発電できるかは風まかせ。電気の買い手の北海道電力は「すべて引き受けると安定供給に支障が出る」と話しているそうよ」と輝代。 「北海道で稼働中の風力発電施設は十三市町村の二十五基。その大半がこの二年ほどの間にできたそうだよ」 勇気は、成功したことにより、大型の風力発電所も計画されているのだろうと思った。
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