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マンツーマンと1トップシステムに関する一考察 - ギリシャ vs チェコ 【EURO’04】より

2006年10月31日 | 考察集
■ 戦術は、効果的かどうか?

いずれ「廃れた理由」に直面することもあるかもしれないが、戦術は古いか新しいかよりも、常に効果的かどうかで論じるべきものだと思う。

ワールドサッカープラスのコラム『マンツーマンは古いか?』by西部謙司
このコラムは、結構多くの方が読んだみたいですが、このコラムの中でマンツーマンを敷いたチームの例として挙がっていた、ユーロ2004でのギリシャの試合を久し振りに見てみようと思いました。そこで準決勝のギリシャvsチェコのビデオを引っ張り出して観てみました。

西部氏のおっしゃる通り、「戦術は古いか新しいかよりも、常に効果的かどうかで論じるべきもの」だと私も思います。
オシムJAPANもガーナ戦では、マンツーマンディフェンスを敷きました。そして、結果は0-1で敗れたものの闘莉王など不在もありながら、マンツーマンはある一定の効果はあったと思います。

しかし、ジェフ千葉の選手であればマンツーマンは、チームでやっていますので特に問題はないでしょうけど、普段Jリーグでやっていない選手が多いので、“慣れない事は危険”という指摘もあるかもしれません。ディフェンスの基礎と言えるマスンツーマンを敷いているチームは、現代の高校サッカーでもほとんどないようにすら思います。そういう意味で、今後、この辺の問題も出るかもしれません。

ただ、個人的には、ガーナ戦は仮にゾーンで守ったとしても、大量失点しなかったと思いますが・・・

■ マンツーマンと1トップシステムに関する一考察 - 「ギリシャvsチェコ ・EURO04」より
マンツーマンと1トップシステムに関する一考察 - 「ギリシャvsチェコ ・EURO04」より

この試合のスタメンとフォーメーションは、右記の通りです。
 ギリシャは、[3-4-3]
 チェコは、[4-1-3-2]コラーとバロシュの2トップ。
 (ちなみに、ネドベドが前半で負傷交代。スミチェル)

◆ ギリシアのマーカー
この試合、ギリシャのDFラインのマンツーマンは次の通り。
 カプシス = コラー
 セイタリディス = バロシュ
 デラスがリベロ
ギリシャのDFラインの両サイドのスペースは、カツラニス(右)、フィサス(左)が戻ってカバー。

◆チェコの中盤は脅威
まず、ギリシャは、チェコの攻撃的中盤『 ネドベド(スミチェル)、ロシツキー、ポボルスキ 』をいかにして封じるか?!です。

ネドベド、ポポルスキに関しては、マンマークというよりは、タイトなゾーンで守っていたと思いました。勿論、縦にアタックすれば、両SHはDFラインまで引くような形になります。但し、ネドベドがやや中に絞る傾向があったのでマークの受け渡しはありましたし、そのエリアでは、チェコのヤンクロフスキ(左SB)の上がりが効果的でした。

(図解参照) - ちょっとチェコの両SBが上がっているという極端な例ですが、ギリシャの守備はこんな感じでした。特にチェコの2トップへのマークは前後左右へとぴったりと付いていて徹底されていました。

◆ 封じ込まれたチェコの2トップ
チェコの攻撃の形は、“一度前線の選手に当ててから・・・”というのがあるので、その前線の起点を封じ込めようという意図がギリシャの監督(レーハーゲル)あったと思います。つまり、マンツーマンは“前線の起点と得点力を封じる”という面においては一定の効果があったと思います。
しかし、個々の選手の能力でギリシャに勝るチェコですので、2トップを封じても、他の選手の攻撃により危険なシーンがありました。その中、特にロシツキーが上手く攻撃のアクセントとなっていました。

◆ マンツーマンの特性と弱点
マンツーマンディフェンスの基本は、「Aという選手が、相手チームのBという特定の選手をマークする」というように守備におけるマークが、相手チームの選手(人)を中心に成り立っていることです。

一方、ゾーンディフェンスの場合、「Aという選手のゾーンに、相手チームの不特定の選手が入った来た場合にマークします」よって、相手チームのBという選手でもCという選手でも、Aという選手にとっては関係ないのです。また、ゾーンは、ボールを中心に組織されます。(今回は、この辺の詳細は割愛)

マンツーマンの弱点の一つとして、「相手チームの特定の選手をマークする」という特性上、マークする相手の動きに依存されます。例えば、自分のポジションから大きく離れるケースも発生することです。例えば、右サイドから左サイド(逆サイドまで)相手選手に付いて行くような形になることです。

もう一つマンツーマンの弱点として、個々の能力差によるミスマッチが発生します。(ゾーンであれば、プレス役、カバー役と小さいエリア(ゾーン)の中で役割分担のようなことも可能です。)勿論、マンツーマンを敷くチームは、相手チーム選手の能力を考慮してマーカーを決定しますが、運動量という面では、後半になるとどうしても疲労により“マークのズレ”が発生します。そうなると、他の選手が必然的に自分のマーク(ゾーン)を捨ててカバーに回らざるを得ないケースも起こります。そうなると、守備の組織は、破錠してしまいます。

上記の事を踏まえ。例えば、図のように、攻撃側のチームがのワンサイドに起点を作るような形で選手を密集させた場合、逆サイドが、がら空きになります。そして、そのスペースにフリーランで走りこまれた場合、単純にスピードでの優劣によって突破され崩される可能性があります。ただ、これは机上の理論で、実際には危険なゾーンをカバーする選手もいると思いますし、オールコートでマンツーマンで付くのか?それともある一定のエリアに入ってきた所で捕まえるのか?(この時は、各ポジション(ゾーンの形は初期のまま))など、マンツーマンディフェンスを採用するチーム(監督)の方法論によりことなります。

この辺が、一般的なマンツーマンの弱点みたいなもので、近年マンツーマンを採用するチームが少ない理由の一つだと思います。

■ オシムJAPAN、1トップの可能性

チェコの試合を見ていたので、もう一つ思ったことを・・・
◆1トップに必要なこと
今後、オシムJAPANがチェコのような1トップ(1トップ+1シャドー)的なサッカーをやるかどうか分かりません。しかし、ダイナミックな動きと共にオフザボールの動きなどを特徴とするサッカーを掲げるのであれば、可能性はゼロではないと思います。
ジーコJAPANの時も1トップという形で試合をしたことが何度かありましたが、結局モノにならなかったと思います。理由は明確で1トップを出来るFWがいなかった。2列目からの動き出しが少なかった。(パサータイプばかりだった弊害。また、ポゼッションサッカーへの傾向が強すぎた為と思われる)
ちなみに、1トップのFWに求められるものは、単純に言えば「前線の起点」です。
くさびのボールをキープして後方の押し上げの時間を作ったり、前後の動きでスペースを作ったりと・・・さらに理想は、カウンターで個人技で仕掛けれれば最高ですが・・・(苦笑)

◆一番重要な中盤との関係
その次に大事な点は、中盤との距離です。
ユーロでのチェコは2トップ(1トップ+1シャドー)という感じでコラーの近くにバロシュがいて、落としたボールをシュートであったり繋いだりと前線での攻撃に幅がありました。
しかし、ドイツW杯のチェコは「4-1ー4-1」という形でグループリーグ第1戦では上出来だったもののコラーの欠場、さらにロクベンツも出れない(怪我?)という状況での第3戦は、バロシュが1トップで出場するものの機能せず。(1トップ系の選手でない為)結果は、チームの崩壊でした。理由は、いくつかあると思うのですが、最大の理由は、前線(1トップ)の孤立です。中盤の選手がボールを奪われたり、守備に回ることが多く、前線との距離が遠過ぎたことです。そうなると必然的に連携も悪くなり、フリーランの距離も長くなります。結果、中盤の選手は、ひたすら前後に走るだけってなり兼ねません。

◆ガーナ戦でみせた3-4-3について
ガーナ戦の日本は、純粋なウィング的3トップではないような気がします。例えば、ロッベン、メッシを配置してドリブルや攻撃的アクションを仕掛けるわけでもなく、あの時の日本は、ガーナのSBのマークの為だけに両翼を配置しただけの形になったと思うのです。

フォーメーション上は3トップのような形でも、両翼が攻撃的アクションを能動的にしていたか?となるとそうではなく、あくまでも巻の1トップに付随する両翼への動き出しを特徴としていたと思います。

例えば、図のようにスペースへの飛び出しであったりとか、いわゆる前線の起点を1トップの巻だけではなく、両翼にも与えた。但し、与え方がオシムJAPANの(考えて)走るサッカー的な感じだったと思うのです。勿論、ロッベンやメッシもこのような動きもしますが、もっと彼らの方が個人の能動的なアクションによって攻撃の形を作るという点で異なります。

ガーナ戦での日本の両翼は擬似ウィング的な3トップだったと思うのです。そして、この形が結構機能していたと思います。例えば、前述の1トップの問題点をクリアしていたからです。両翼の選手が前線の起点になる動きをすることによってドイツW杯でのチェコのように、前線(1トップ)の孤立が発生しませんでした。
また、両翼の動きに連動するように中盤の選手がパスを出したり動き出していた点がポイントです。若干、動き出しなどの連動性は、日程的な問題で乏しかった感じもしますが、及第点でしょう。(ガーナ戦のエントリーは、こちら 前半後半

■ 最終型を想像しながら・・・

全体的に文章が上手くまとまらなくて、何を言いたいのか良く分かりませんが・・・まぁ、適当に読んで下さっていると思いますので、それで一向に構いません。最後に、友達とのメールでのやり取りから・・・

EURO04のギリシャは、チェコの2トップへのマンツーマン、さらに3―4―3。ガーナ戦の日本代表と似ていた。このギリシャ対チェコの準決勝は、ゴールデンゴールでギリシャが勝利したもののギリシャが繰り広げたサッカーにはスペクタクルはなかった。

オシム監督も現実を考慮すれば、弱者の戦術で非スペクタクルなサッカーで勝利を狙うはず。しかし、我々は、ジーコJAPANの時のように、ある意味中盤のゲームメイカー(中村)を生かすようなサッカーを懐かしく感じる時が来るかもしれない。

オシム自身は、究極の完成型をバルサのようなサッカーと考えているようだが、現実的にはギリシャ止まりになりそうな気がする。仮にそれが4年間の集大成になった時、サポーターは「日本化する」と言ったオシムJAPANの最終型に満足出来るだろうか?仮に、ワールドカップでベスト16という結果が出れば納得するかもしれないが・・・そして、さらにその「日本化」の完成度を極める為に、次の4年後も同じようなコンセプトで進めて行くのだろうか?

もし、結果が出なかった時、サポーター及び協会は路頭に迷うような予感がする。やはり、日本のサッカーを構築するには、もっともっと時間が掛かりそうだ。そして、自分の中ではまだドイツでの結果に対するトラウマがあるんだろうと思った。

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≪追伸≫
ギリシャのGKのニコポリディスって、いつ見てもジョージ・クルーニーそっくりです。
さらに、ロシツキーがSEX PISTOLSみたいなパンクな髪型だった・・・シド・ヴィシャス?って思った。

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7 コメント

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Unknown (doroguba)
2006-10-31 21:37:05
おもしろく読ませていただきました。私はチェルシーがそうであるようにゾーンとマンマークの併用がいいと思っているのですが、その比重というかバランスをどちらに置くかがポイントなんでしょうかね? W杯のブラジル戦でジーコ日本代表は基本的に「ゾーン」でしたが、ブラジルのSBの攻撃参加をフリーにしてしまったとくろから失点したわけで。オシム日本代表でウイングがSBに付くのは、私からすれば全然ありなんですよね。ただマンマークだけですと先日のチェルシー戦でのバルサみたいにもなりうるわけで。
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こんばんは (Ryon)
2006-10-31 23:58:02
コージさん TB&コメントありがとうございます。
私は、どーもこのマンマークディフェンスには不安があります。理由はハッキリしていないので偉そうなことは言えないのですが、歴史的に廃れていったのにはそれなりの理由があると思うのです。
その理由(主に肉体的な理由だと思うが・・)を覆せるほど、(世界と比較して)日本人の能力が高いとも思えないので、やはり近いうちに壁にぶち当たるのではないかと不安になっています。

守備の不安を上回るほどの攻撃力があれば、笑って済ませられる問題かも知れませんが、それも現実的ではないですよね・・・。
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コメントのお返事 (コージ)
2006-11-01 19:03:50
drogubaさん
>>こんばんは。
私も併用が良いと思います。ガーナ戦のような形は、効果的ではあったものの、いつか破錠しよそうな気もしています。サイドの相手の選手に関してはマンツーマンでも中盤に関しては、コンパクトなゾーンからの速攻みたいなのがいいかもしれません。ギリシャと比較すると日本の方がもっとアクティブな攻撃が出来るのでね。
チェルシーは、ドローでしたね。なんかそんな感じもしていたんですけどね。
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コメントのお返事 (コージ)
2006-11-01 19:08:14
Ryonさん

>>こんばんは。
私もどっかのタイミングでマンツーマンがやられるような感じはします。実際問題として、フィジカルの面での負担はゾーンに比べて大きいと思いますし、ボールホルダーでない選手を追い続けるってのは、メンタル的にも疲労があるでしょうしね。まぁ、徐々に併用する感じにシフトすると思いますけど、こればかりは、オシム監督次第なのでね(苦笑)
現在は、守備面の基盤を構築している時だと思います。勿論、攻守の連動性というのはどのチームでも大事なのですが、まだまだ、日本代表に関しては攻撃の幅は狭いのでね。
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Unknown (CSKA352)
2006-11-08 00:00:31
マンマークは確実な守備を第一に考えているので攻撃力は落ちるとおもいます。
リベロをおいて、前線からマークをつけ、どこかでオフサイドトラップを使ったり、ポジションチェンジを取り入れることで欠点を補正し、
逆にポジションに縛られないという特徴を生かすこともできると思います。

マンマークが時々試みられるのはゾーンDFの弱点も明らかになってきたということでしょう。
数的優位を作られると苦しいとか、マークの受け渡しの瞬間を突かれるとか。
ゾーンDFが発展してラインDFが発達したおかげでサッカーはより攻撃的になりましたが、ラインの裏を付く技術も発達したのでトルシェみたいな監督も少なくなりました。

まあ、ボールを取られなければいいという考え方もありますけどね。
お邪魔しました。

返信する
コメントのお返事 (コージ)
2006-11-08 00:56:41
CSKA352さん

>>お久し振りです。
ご指摘の通りギリシャは、マンマークと引き換えに得点力を捨てたのかもしれません。実際、全ての試合を1点差ゲームでしたのでね。

多分、チェルシーのブラルーズをロナウジーニョに付けているような感じの相手チームのスペシャルを封じ込める為のマンマークは今後も増えるかもしれませんね。
返信する
チェコもマンマーク(的)だった (CSKA352)
2010-11-21 22:51:45
懐かしいですね。

こういうスタイルのチームは減ったように見えますがそんなことはないと思います。

オランダだって、アルゼンチンだって、マンUだって、ピクシーグランパスだって、関塚フロンターレだって、バルサだって(リベロがブスケツ)、CSKAだって守るときはマンマークです。
3-4-3系と4―2―4系があって(他にも考えればあるとおもいますが)オシムも変えました。

ギリシャが守備的だったのは個々の能力とポゼッションを放棄してリスクの少ないカウンターに特化した戦術の問題だと思います。

マンマークの方がピッチを広くカヴァーできるので、個々がしっかりしていればゆっくりポゼッションするのに向いています。
組織つまりシステムに頼るにはコンパクトにしなければならないので、強迫的にプレスを掛けるか、自陣に引きこもって鉄壁を築くかになります。
スペインはポゼッションを高めることでこのシステムをものにしました。
「世界」はこの方向に向かうでしょうし、ニホンもこっちの傾向が強まるんでしょうね。

私はオシムの一対一を基本にした守備を評価していました。
組織で守って組織で攻めるは日本的だけれど個の強化や質の向上になるかは疑問です。
人をケアするより、ボール狩り、引きこもり。
個々がリスクを判断するより、チームとして守るか攻めるかに従わざるを得なくなるからです。

効率と機能美を求めるならゾーンプレス&ラインDFでいいとおもいます。
アーセナルのようなサッカーが究極のお手本です。
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