ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

遠藤裕乃『ころんで学ぶ心理療法-初心者のための逆転移入門』2003・日本評論社

2024年01月31日 | 心理療法に学ぶ

 2020年6月のブログです

     *

 遠藤裕乃さんの『ころんで学ぶ心理療法-初心者のための逆転移入門』(2003・日本評論社)をかなり久しぶりに読みました。

 このおもしろい題名の本、本の帯に、失敗からはじまるセラピストの第一歩、とあります。

 ころんだり、失敗したり、とたいへんですが、著者が自身の体験から学んだことを率直に書いていて、とても勉強になります。

 こんなことあるよな、こんなことしちゃったな、こんなことで困ったよな、と思い当たることばかりです。

 みなさん、同じような経験をしているんだな、と思えることが目白押しです。

 本の題名どおり、心理療法は失敗から学ぶのでしょうし、ころんでなんぼの世界なんだな、と納得させられます。

 決して初心者だけの問題でなく、おそらく中級者以上の人にでも勉強になる本だと思います。

 例によって、今回、特に印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、逆転移を通して理解できるクライエントの世界。

 クライエントさんから理由のないような攻撃をされると辛いものがあります。 

 しかし、クライエントさんはいつもそういう世界にいるという理解、これはやはり大きいと思います。

 そう思ってもとても疲れますが、しかし、この理解は大切ですし、セラピストが生き残るために必要だろうと思います。

 二つめは、クライエントさんの言動の激しさに驚かずに、そこでのクライエントさんのおっしゃりたいことを明確にしていくことの大切さでしょうか。

 クライエントさんと一緒にクライエントさんの世界をていねいに理解することが、クライエントさんとセラピストの両方を生き残らせてくれるようです。

 他にも、初心者や中級者の勉強になることがいっぱい、いい本です。     (2020.6 記)

     *

 2024年1月の追記です

 先日の能登半島地震でじーじの本棚から崩れてきた本を整理していたら、長年、行方不明だった本を2冊も発見しました(他にもまだありそうな気もします)。

 中井久夫さんの『治療文化論』と大平健さんの『食の精神病理』。どちらもとても読みたかった本です。

 こういうのを、ころんでもただでは起きない、というのでしょうか(?)。すこし違いますかね(?)。

 これで1か月は楽しめそうです。

 そして、ころんだ藤澤五月ちゃんは今年も大活躍中(!)。

 長生きをしていると、いろんなことが起きて、面白いなあ、と思います。   (2024.1 記)

 

 

コメント

司馬遼太郎『胡蝶の夢』(1)~(4) 1983・新潮文庫-幕末・維新の「医」を描く

2024年01月31日 | 小説を読む

 2019年のブログです

     *

 司馬遼太郎さんの『胡蝶の夢』(1)~(4)(1983・新潮文庫)を再読しました。

 本棚を眺めていたら目にとまって読み始めたのですが、すごく久しぶりで、おそらく十数年ぶりです。

 いい小説なのに、じーじの怠慢で、ご無沙汰しすぎです。

 こういういい小説は、年寄りになったら、もっともっと読んで、こころを豊かにしなくてはいけません。反省です。

 さて、この小説、紹介するのはなかなかたいへんです。

 主人公は幕末の医師松本良順。

 千葉・佐倉のオランダ医学所である順天堂の出身ですが、将軍の医師にまでなります。

 その良順が自らオランダ医学を学ぶために、長崎でオランダの軍医ポンぺから西洋医学を学ぶ学校を作るのですが、この小説はそこで学んだ同僚や後輩たちとの物語ということになりそうです。

 特に、幕府一筋の良順と、佐渡出身で語学に異彩をはなち、後に政府の語学者となる島倉伊之助(司馬凌海)、さらに、阿波藩の医師になり、後に官軍の病院長にまでなるものの、戊辰戦争後にやめてしまう関寛斎の3人の生き様が中心です。

 いずれの人物も一筋縄ではいかない個性派ぞろいですが、それを描く司馬さんの目線は温かさにあふれています。

 松本良順は、幕府の形式主義的な官僚を徹底的に嫌い、たくさんの敵を作ってしまいますが、その正義感からか将軍の信頼は厚い人物です。

 なぜか新選組が好きで、戊辰戦争では会津にまで行って、怪我人の手当てに当たります。

 戊辰戦争では良順の長崎時代の同僚である関寛斎が官軍側の医師として参加し、二人は歴史のいたずらに翻弄されます。

 一方、伊之助は、そういう不幸な状況を手をこまねいて見守るしかありません。

 戦争というものが、大義はどうであれ、いかに残酷なものであるかが描かれますし、犠牲になるのは庶民なんだなと改めて考えさせられます。

 結局、良順は戊辰戦争後に新政府に逮捕され、しかし、後日、政府の医学総監になります。

 伊之助は新政府の外国人医師の通訳をつとめ、オランダ語、英語、ドイツ語、イタリア語などを修め、大学教授にまでなります。

 席寛斎は農民に戻り、なんと北海道の陸別に開拓に入り、日本一の寒さで有名な自然の厳しい土地で開拓の基礎を作ります。

 それぞれの生き方がそれぞれに示されます。 

 どさんこのじーじとしてはやはり北海道に渡った関寛斎の生き方に魅かれますが、しかし、お偉方と喧嘩ばかりしている良順の生き方も大好きです。

 こうしてみると、じーじはやはり昔から反体制派のところがあったんだなとつくづく思ってしまいます。

 どんなふうに生きても人生70~80年。それならば自分に正直に、後悔のないように生きたいなと改めて思います。

 じーじにも勇気をくれる、心地よい、いい小説でした。     (2019.3 記)

 

コメント (6)

そだねー、と、いーんでないかい、についてのカウンセリング的考察(?)-じーじのひとりごと

2024年01月30日 | ひとりごとを書く

 2018年のブログです。

 平昌冬季オリンピックのカーリングを見ていて、思いつきました。

 カーリングを見て、カウンセリングのことを考えるなんて、われながらただ者ではないのかもしれません(?)。

     *   

 そだねー、がすっかり有名になりました。

 どさんこのじーじは、しばらくこれが方言とは気づかずにいたのですが、そういわれてみれば、標準語と少し違うんだなということがようやくわかりました。

 でも、そうだねー、より、そだねー、のほうが、なんか温かみがありません?

 カウンセリングにも使えそうです。

 〇〇と思うのですが…、そだねー。

 ほら、いいでしょう?

 もうひとつの北海道弁、いーんでないかい、も使えそう。

 〇〇と思いますが…、いーんでないかい。

 ね、なかなかいいでしょ?

 一方、新潟弁には、そうだんがー、という言葉がありますが(主に長岡地方です)、少し強すぎますかね?

 〇〇ではないでしょうか?そうだんがー。

 カウンセリングにはちょっときついですかね?

 そういんだー、というのもあります。

 ○○ですよね?そういんだー。

 これくらいだといいですかね?

 いずれにしても、方言はいいですよね。

 歴史と人々の暮らしの営みとに育まれてきたぬくもりが伝わってきます。

 今回、北海道弁の優しさを再認識したじーじは、今後は、北海道弁と新潟弁でローカルなカウンセリングをしていきたいな、と決意を新たにしたのでした。   (2018.2 記)

     *

 2019年5月の追記です

 「なつぞら」を観ています。北海道の自然の美しさとともに北海道弁のなつかしい響きが心地よい毎日です。

 そういえば、なーんもだー、という北海道弁もいいですね。  (2019.5 記)

        *

 2020年1月の追記です  

 東直己さんの小説を読んでいます。北海道弁が満載でとても懐かしく、そして楽しいです。  (2020.1 記)

     *

 2021年9月の追記です

 週末のカーリング女子日本代表決定戦、ロコ・ソラーレ2連敗のあとの3連勝、しびれました。  (2021.9 記)

     *

 2022年2月の追記です

 北京五輪でもロコ・ソラーレはにぎやか。涙あり、笑いありで、素直な姿が魅力的です。

 フロイトさんやビオンさんは、精神分析では驚きが大切、と述べました。

 土井健郎さんは藤山直樹さんに、面接はハラハラ、ドキドキだよ、と述べたそうです。

 新鮮な驚きと素直さは、カウンセリングにとっても大切なことのようです。  (2022.2 記)

     *

 2023年2月の追記です

 カーリング女子の日本選手権で藤澤五月ちゃんがストーンを投げる時に転んでしまいました。あんな天才でも転ぶことがあるのですね。

 まして、じーじなどは転びまくりの人生です(?)。

 そういえば、以前、『ころんで学ぶ心理療法』(遠藤裕乃・2003・日本評論社)という本をご紹介したことがありました。

 転んでこそ、強くなれるんですね。  (2023.2 記)

 

コメント (2)

佐渡・胡蝶の夢・辺野古-じーじのじいじ日記・セレクト

2024年01月30日 | じいじ日記を書く

 2019年の日記です

     *

 自宅から北へ30分ほど歩くと日本海に出る。

 そこの海岸からは天気がいい日には佐渡が見える。

 新潟市から見る佐渡は結構大きな島だ。

 その佐渡が一つの舞台である小説が司馬遼太郎さんの『胡蝶の夢』(1983・新潮文庫)。

 久しぶりに(おそらく15年ぶり(?)くらいだ)再読をしている。

 司馬さんの日本語が端正で、読んでいて気分がいい。

 主人公の島倉伊之助、頭はいいが、不器用な人間で、今でいうとアスペルガーのようだが、この伊之助を描く司馬さんのまなざしはどこか温かい。

 昨日はデイケアでのボランティアの空き時間にもメンバーさんそっちのけで読んでしまった(メンバーさん、ごめんなさい)。

 一方、南の島の沖縄。

 沖縄の人たちは賢くも辺野古基地反対の意思表示をした。

 いろいろな苦渋の末の選択と思われるが、その勇気に敬意を表したい。

 ある新聞に、次は本土の人たちの意思表示だ、とあった。

 これから参議院選挙をはじめとして、意思表示の機会がある。

 基地の是非、負担の平等、などなど、我々が考えること、選択すべきことは多いと思う。       (2019.2 記)

 

 

コメント (2)

村上春樹『辺境・近境』2000・新潮文庫-その場に立って、触れて、はじめてわかることがある。

2024年01月29日 | 随筆を読む

 2024年1月のブログです

     *

 村上春樹さんの『辺境・近境』(2000・新潮文庫)をかなり久しぶりに再読する。

 じーじにしてはめずらしく、少し内容を覚えているような気がしていて再読が遅れたが、いざ読んでみると、やはりほとんど覚えていなくて、またまた新鮮に読んでしまった(?)。

 本の帯に、その場に立って、触れて、はじめてわかることがある。とあるが、村上さんの言いたいことは、ずばりここなのだろうと思う。

 今は、テレビやSNSなどで、なんとなくわかったような気になってしまうことが多いが、やはり本物や本当のところは、現場に行って体感しなければわからないものなのだろうと思う。

 もちろん、現場に行ったからといって、本当のところがどれだけ理解できるかは、その人のちからや知識や出会いや時期などにも左右されるのだろうが、すべてがわからないにしても、現場に立って、現場の空気を吸うことは大切なようである。

 さて、本書で、村上さんは七つの旅をする。

 メキシコやノモンハン、アメリカ、といった海外の旅や、なぜか、村上島という無人島や讃岐うどん、そして、神戸などの国内の旅。

 シリアスな旅やユーモラスな旅がいっぱいで、深刻に考えたり、笑ったり、となかなか忙しい本だ。

 個人的には、讃岐うどんの旅に出てくる雑誌「ハイファッション」の担当のマツオさんという女性が面白かった。

 すごい美人ちゃんだったら困るが(?)、どうなのだろう。

 そして、一番印象に残ったのはやはりノモンハンの旅。

 ノモンハンの事件は、日本史ではあっさりと通りすぎてしまった記憶しかないが、ご存じのように、太平洋戦争の少し前に、モンゴルのノモンハンで、満州国とモンゴルの国境争いから、日本とソ連が戦った事件というか戦争で、日本が大敗した。

 日本はこの結果を直視せず、中国侵略やアジア侵略をさらに進めて太平洋戦争に突入するが、ノモンハンの戦争は本当に悲惨で、それが刺激の一つになって、村上さんは『ねじまき鳥クロニクル』を書いたようだ。

 この旅行記も戦場の様子などが詳しく書かれていて、参考になるし、村上さんの国家の冷酷さへの糾弾と、庶民の哀しさへの共感がすごく感じられる旅行記だ。

 正月早々、いい旅行記を読めて、幸せである。   (2024.1 記)

 

コメント

小倉清『子どもの精神科症例集-予防医学と母子デイケア』2020・岩崎学術出版社

2024年01月29日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2021年2月のブログです

     *

 小倉清さんの『子どもの精神科症例集-予防医学と母子デイケア』(2020・岩崎学術出版社)を読みました。

 新刊です(小倉さんはいくつになられてもすごいですね!)。

 そして、内容もすごい本です。

 いくつかの症例とフロイトのハンスの症例の再検討、それと、鼎談からなっていますが、この症例がすごいです(さっきから、すごい!の連発ですね)。

 小倉さんは診察室に入ってきた子どもの表情を見ると、この子は家ではこんな感じではないかな?こういう親子関係なのではないかな?こういう歴史を生きてきているのではないかな?と、パッと読み取ります。

 それはエヴィデンスというよりは、小倉さんのこころにわいた物語のようなもののように読めるのですが、しかし、それが当たっていると、子どもは自分を理解をされたという様子を示します。

 そして、治療的な関わり合いが始まります。

 ここの場面が感動的ですし、それを言葉にできる小倉さんは本当にすごいと思います。

 子どもへの愛情がとてつもなく深く、それが臨床的な確かな技術にきちんと支えられている印象を受けます。

 こういうお医者さんに診てもらえる子どもは幸せだなと思います。

 もう一つは、鼎談に出てくる母子デイケアのお話。

 子どもだけでなく、お母さんも治療的に抱えられるような場になっているようで、興味深いです。

 いくつになってもお元気な小倉さんの様子に接して、じーじももう少しだけ頑張ろうと思います。  (2021.2 記)

 

コメント

下坂幸三『フロイト再読』2007・金剛出版-丁寧でこまやかな精神分析的面接に学ぶ

2024年01月28日 | 心理療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 下坂幸三さんの『フロイト再読』(2007・金剛出版)を再読しました。

 もう何回目になるでしょうか。

 本の中は何種類かの付箋とアンダーラインで大変なことになっています。

 下坂さんの晩年の論文が載っていますが、学ぶことばかりです。

 今回、印象に残ったことを二つ、三つ。

 一つめは、理論は繰り返し脇のほうに押しやることが大切で、それでも押し戻してくるものが重要、との指摘。 

 初心者のうちは、じーじもそうですが、つい理論に左右されがちですが、理論を忘れたくらいのところで勝負をすることがいいようです。

 たしか、ビオンさんも同じようなことを言っていたように思うのですが…。

 二つめは、言葉に安易に納得しないことの大切さ。

 同じ言葉でも、人によっては込められた意味がまったく違うので、徹底的にその意味するところをきいていくことが重要になります。

 それが即心理療法になるといえそうです。

 本書ではその具体例がたくさん示されていて、勉強になります。

 三つめは、心的現実の扱い方について。

 心的現実を尊重することは重要だが、全面的に肯定をすることの危険性も指摘されます。

 よくきくが、大きく頷くことはしない、という冷静な対応が、クライエントの歪んだ考えを少しずつでも訂正していく、との指摘は卓見です。

 統合失調症の患者さんの妄想のきき方にも通じそうです。

 最後、症例論文のクライエントさんの許可の問題。

 世の中、許可を得ることが流行となっていますが、その弊害を指摘します。

 まったく同感です。

 たしか、藤山直樹さんも同じようなお考えだったと思います。

 プライバシーの保護というのなら、許可を求める行為自体がプライバシーの保護を侵害することになりえる可能性も考慮しなければならないだろうと思います。

 難しい問題ですが、クライエントさんの本当の意味での保護と尊重ということをもっともっと深く考え、議論していかなければならないと思います。

 いずれにしても、まだまだ力不足であることを痛感します。

 さらに勉強を深めたいと思います。      (2019. 2 記)

 

コメント (2)

皆川明『ミナを着て旅に出よう』2014・文春文庫-ナチュラルを大切にするテキスタイル・ファッションデザイナーに学ぶ

2024年01月28日 | 随筆を読む

 今日のEテレ日曜美術館を見ていたら、皆川明さんが出てきました。

 たぶん2016年にもテレビで拝見をして感動し、さっそく本を読み、書いたと思われるブログがありますので、再録します。  (2020 . 1 記)

     *

 ファッションブランド・ミナペルホネンの皆川明さんが書いた『ミナを着て旅に出よう』(2014・文春文庫)を読みました。

 実は先日、テレビを見ていたら、皆川さんの仕事ぶりを特集している番組をやっていて、皆川さんのことはその時初めて知ったのですが、最初はなにげなく見ているうちにどんどんひき込まれてしまいました。

 皆川さんのデザインやファッションについて話す内容がとても自然体で、ファッションのことにうといじーじにもいちいちうなずけることが多く、じーじにとってはそれにとどまらずに、カウンセリングや人間の生き方などにも参考になるような話が多くありました。

 じーじはファッションのことはまったくわからないのですが、たぶん女性のかたがたは知っておられるかたも多いのでしょうね。 

 本書と一緒に読んでいた皆川さんの『皆川明の旅のかけら』(2003・文化出版局)の写真を見ますと、素敵なデザインの生地や洋服がいっぱいで、思わず娘や孫娘たちにプレゼントしてあげたいな、と思うようなものも多くありました。

 皆川さんの魅力は、じーじのような人間がいうのもなんですが、ナチュラル、シンプル、やさしさ、あったかさ、などなどでしょうか。

 もちろん、デザインの美しさ、素敵さはもちろんなのですが、その底流にここち良さややわらかさみたいなものをすごく感じます。 

 努力の上でのナチュラルやシンプルが大切なのは、カウンセリングにも共通だと思います。

 いい仕事人に会えて幸せです。   (2016?記)

     *

 2022年夏の追記です

 今日、ある方のブログを見ていたら、ミナ・ぺルホネンの新作を紹介しておられました。

 洋服にはうといジージですが、あいかわらず素敵だなと思いました。   (2022.8 記)

 

コメント

本多勝一『北海道探検記』1985・集英社文庫-人のいない北海道を歩く

2024年01月27日 | 北海道を読む

 2020年2月のブログです

     *

 本多勝一さんの『北海道探検記』(改訂版・1985・集英社文庫)を再読しました。

 この本もかなりひさしぶり。

 本棚の隅っこに隠れていたのを(?)見つけて読みました。

 探検記、ということで、観光地ではなく、人のいないところを訪ねる旅です。

 人混みが嫌いらしい(?)本多さんと意見が一致してしまい、思わず引き込まれてしまいました。

 知床の山奥、離島、根釧原野、天北の開拓地などを巡りますが、今回、わたしが印象に残ったのが、日高の奥高見部落。

 当時の5級僻地校という少人数の学校が紹介されていますが、ここがすばらしい。

 子どもたちの夢が、海を見ること、という山奥の素朴な子どもたち。

 授業は複数の学年が一緒の複式学級ですが、地元出身の先生が中心となって音楽教育に力を入れていて、日高地区のコンクールで優勝をしたりしています。

 本多さんにもすばらしい演奏を披露して、本多さんは本気で感動をされます。

 成績よりも大切なものを大事にしている先生方の努力に脱帽をされます。

 しかし、数年後に再訪をしようとしますが、部落は全員引き揚げで消滅、学校も廃校となってしまいます。

 北海道の厳しい現実と直面をする旅でもあります。

 根釧原野や天北でも同じようなケースに遭遇。

 敗戦直前の拓北農兵隊を思い出させるような、無謀な開拓の姿を見せつけられます。

 もっとも、その自然の厳しさが北海道の魅力でもあります。

 今年の夏は、本多さんの『北海道探検記』を片手に、あちこちを回ってみたいと思いました。   (2020.2 記)

 

コメント

新野剛志『戦うハニー』2019・角川文庫-本の帯に、保育園には、日本のリアルが詰まっている。とあります

2024年01月26日 | 小説を読む

 2021年1月のブログです

     *

 新野剛志さんの『戦うハニー』(2019・角川文庫)を読みました。

 ちょっと変わった題の本ですが、本の帯には、保育園には、日本のリアルが詰まっている。とあります。

 面白かったです。すごく面白かったです。 

 先日の大雪の雪かきで腰を痛めて、笑うと痛いのですが、ずいぶん、いたたたー、といいながら、笑ってしまいました。

 主人公はある認可外保育園で働くことになった男子保育士。

 保育園の現場には、日本のリアルである、虐待や放任など、問題のあるモンスターな保護者が登場し、そこであたふたしながらも、少しずつ成長をしていきます。

 園長先生のふところの広さに支えられ、同僚の女子保育士らにからかわれながらも、子どもたちと真摯に向き合っていく姿はなかなかいいです。

 子どもたちの切なさや哀しみ、こころの痛みなどは辛いものがありますが、園長先生や保育士たちの頑張りで、少しは元気になります。

 そして、保護者は、こちらはなかなか変われませんが、それがリアルなのでしょう。それでも、保護者の哀しみは伝わるようにはなります。

 決して明るい小説ではありませんが、いろいろと考えさせられます。

 正解はありませんが、悩んで、考えていける気がしてきます。

 いい小説に出会えました。   (2021.1 記)

 

コメント