かど番からまさかの全勝で初優勝。そして九州場所は一転して綱取り。「浮き沈みの激しい人生なんで」と大関豪栄道(30)は苦笑いするが、誰も想像できなかったヒーローの誕生にホッと胸をなで下ろしたのが日本相撲協会首脳だ。
今場所も大相撲人気は天井知らず。初日の3日前には15日間の前売り券が売り切れ、オール満員札止めを記録した。しかし、その人気を支えてきた稀勢の里の綱取りに序盤で黄ランプが点滅し、関係者は大あわて。朝日山親方(元関脇琴錦)も「稀勢の里がつぶれたら、かわりがちょっと見当たらない。御嶽海、遠藤、正代ら楽しみな若手はいるけど、まだ時間がかかるし粒も小さい」とため息をついていた。
ところが、そんな心配を豪栄道が大活躍でものの見事に吹き飛ばしてしまった。まさに家貧しくして孝子出ずで、千秋楽も手綱を微塵も緩めることなく琴奨菊を一蹴。日本人力士では1996年秋場所の横綱貴乃花以来、20年ぶりの全勝という大きな花を添えた。
「最高の気分。大満足です。本当にいい場所になりました」
豪栄道は改めて初優勝の喜びをかみしめていたが、これで来場所は綱取りだ。二所ノ関審判部長(元大関若島津)は「今場所は体が大きくなり、前に出る力、残す力が出てきた。来場所が楽しみ」と13年も途絶えている和製横綱の誕生を期待する。
かど番大関の優勝は、これで8人目。その中で横綱になったのは貴乃花1人だけという気になるデータがあるが、少なくとも来場所の前売り券の売れ行きは心配なさそうだ。大相撲界は新たな目玉の出現にわいている。 (大見信昭)
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