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敏腕弁護士~古美門研介

2012年06月18日 | 気になるネタ

「リーガル・ハイ」(フジテレビ火曜21時〜)に毎週ヤラレっぱなしである。

いい意味で調子に乗り始めたこのドラマの魅力はどこにあるのか? 

不敗神話を誇る敏腕弁護士・古美門研介の活躍を描いたこのドラマは、第8話が放送された週には今期の連続ドラマの中で視聴率3位にまで上昇を見せた。

脚本×演出×俳優 三位一体、鉄壁な作りと言ってしまえばカンタンだ。だが、弁護士の象徴である天秤のようにカンペキなバランスでもって描く世界は、
むしろアンバランス。
そう、古美門のトレードマークである髪型の「8:2分け」のようにアンバランスな世界を描いているところにヤラレルのだ。

その端緒は第1話の終盤にまず現れた。
「やっていようがやっていまいがそんなのは私には関係ないし何の興味もない。検察側の証拠が不十分だった。だから彼は無罪になった」
この古美門の台詞にはドッキリ。
殺人罪にまつわる丁々発止の法廷劇を展開した後、ついに無罪を勝ち取った容疑者が実は有罪だったのではないか?という不安感を、脚本家・古沢良太はプラスした。
さらにはこうだ。
「我々は神ではない、ただの弁護士だ。真実が何かなんか分かる筈がない」
シビレル。

任務遂行と報酬へのこだわりと、早口で自論をまくしたてる様子と周囲への毒舌とわがままと、さらに髪型の自己主張がとっても暑苦しい。そんなおもしろキャラを8割として、残り2割が、実はクール&ドライというのが古美門研介だ。
この役を堺雅人が怪演している。この役は俳優・堺の特性を余すところなく発揮した、現時点での最高傑作キャラと言っていいと思う。

スーパー古美門の考え方に異を唱え、有罪無罪を明らかにする真実は必ずあると信じる新米弁護士・黛真知子と古美門とが対立しながらも毎回、いろいろな案件を解決していく。この過程が、コミカルとシリアスがマーブルもようのように乱れ溶け合いながらテンポよく描かれている。

特に、黛役の新垣結衣の素朴なピュアさが、古美門のツンデレっぷりをわかりやすく露わにさせていくのがいい。
古美門にヤラレてもヤラレても、真っすぐに向かっていく健気な黛。
巨大黛が古美門に飛び蹴りしていくタイトルバックは特撮ファンでなくても心くすぐられるし。

おたまじゃくし黛が古美門の背中を見て価値観を変化させて成長していく話がサブストーリーなのかなと、第1話を見た段階では想像したが、第2話は軽いタッチの話で、アレ? 3話も同じで、こりゃ深読みし過ぎたかな……と思いはじめた頃、4話で黛の「いつか必ず倒します」と古美門への宣戦布告がキターッ。

古美門の真意も、本気でワガママで拝金主義で真実なんかくそくらえと思っているわけでないし、ライバル法律事務所の動きによって、何やら過去にトラウマがありそう、と毎回エサをちらつかせる。う〜ん、うまい。

他にも、古美門の事務所で働く服部というキャラクターがくすぐりどころ。料理上手で家庭菜園をやっている癒しキャラと思わせて、実は・・・という美味しい役。
その服部さん役の里見浩太朗をフィーチャーして、「水戸黄門」ネタが出てきたかと思えば、大和田伸也までゲストで出して、助さん格さんを思わせる場面を作って、年配の視聴者へのアピールも忘れない。
 
6話になると、古美門の元妻登場で、ますます古美門のキャラが深まって、引きずり込まれて見ていたらーー
7話の予告編にビックリ。

なぜかどう見たって横溝正史の金田一耕助もののパロディーになっていた。
いきなり路線変更?かというようなこの予告編は見事に話題に。
ミステリーファンも取り込んだのか、古美門のライバル事務所の秘書役・小池栄子の温泉シーンのせいか、視聴率もちょっと上がった。

そして、8話の古美門パパ登場で古美門の人間形成のワケがわかって、さらに視聴率微アップ。
パパ役の中村敦夫に合わせて「木枯らし紋次郎」ネタで70年代ドラマにまでバック。これは、マニアックなドラマファンへのサービスだろうか。視聴者全方位を網羅である。
ふざけたり、目先のサービスばかりしているわけではなくて、中村敦夫対堺雅人のインテリ俳優同士の論戦劇は、芝居にうるさい人も満足。

これでもかとあらゆるおもしろさを脚本に盛り込み、笑いでこちょこちょくすぐりながら、社会風刺の利いた設定や台詞を挿入しチクチク刺してくる古沢脚本の完成度の高さは神というよりも悪魔的。
古沢と古美門の饒舌さや仕事の手際の良さが重なって見えてしまう。
健やかな黛を「朝ドラのヒロイン」と揶揄っているが、古沢の朝ドラを見ることができる日も遠くないのではないか。

古沢脚本の何がすごいって、法律を扱っている作品にも関わらず正悪の逆転劇の痛快さを求めていないところである。
古沢は連続ドラマにおける逆転劇の弱点をわかっているのだろう。引っくり返しの意外性を続けていくと、それが結局安定感となって落ち着いてしまうし、カンタンに先を読まれてしまう。
そこに8:2分けの2の割合くらいの引っかけをたくさん盛り込むことで、結果的により大きな効果を産んでいるのが「リーガル・ハイ」の巧妙なところだ。

でも、あの芸術的に整った「8:2分け」をキープし続けるためには、相当な労力が要るはずで、それと同じで「リーガル・ハイ」は精魂込めて「8:2分け」を作っているドラマなのである。
これから後半戦、古美門対黛のドラマになっていくのかな、と想像するが、ふたりの力配分は「8:2」なのか「5:5」なのか、もお、毎週火曜の夜が楽しみでたまらない。
(木俣冬)

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