いつも女房からガミガミ言われて続けていた男がついに発狂してしまった。
自分を犬だと信じ込んでしまったのだ。
ドッグフードを食べ、眠るときはベッドの足元で丸くなり、
郵便配達が来ると吠えかかるありさまであった。
女房は彼を精神科医に連れて行き、医者は精神病院に収容した。
二ヶ月たって、どうやら彼は自分を取り戻したようである。
普通のご飯を食べ、テレビを見、誰とも話すようになったのである。
そこで医者は彼を退院させることにした。男はそれを聞いて喜んだ。
「先生!」彼はうれしそうに話した。
「私は自分がよくなってくることはわかるようになったんですよ。
だって、鼻がぬれているのを感じてたんです。」