とある牧場で、飼っているにわとりに有精卵を産ませて、それを売り出すことにした。
牧場主は、さっそく業者の所へ行き、とびきり元気で精力のあるおんどりを買ってきた。
「いいか。立派な有精卵を産ませてくれよ。それがおまえの仕事だ」
牧場主が話しかけるとおんどりは、
「がってんだ!!」
と言い、即座に "仕事" にとりかかった。牧場には百羽ものめんどりがいるのだが、
そのおんどりは、牧場主が驚くほどの早わざで休みもせずに仕事をこなした。そして、
あっという間に仕事を終えてしまった。ところが、おんどりはまだまだ物足りない様子
で、なんと豚の柵を乗り越え、豚にまで仕事をしているではないか。
「やめろ、おい! 殺されちまうぞ」
牧場主の言うことも聞かずおんどりは、次は牛、更には馬にまで、一途にせっせと
仕事を試みていた。やっとおとなしくなったのは、牧場じゅうの動物すべてに仕事を
したあとだった。
翌朝。牧場主が外に出てみると、おんどりは脚を宙に投げ出し、目を閉じて消えそう
な呼吸をしていた。つばさはだらりと広がり、動くこともできない様子だった。近くのやぶの中からはキツネがねらっていて、空にはカラスが何羽も集まっている有様だった。
「ばかやろう。昨日、あんな無茶をするから・・・。いくらなんでもあれじゃ、身体に
いいわけがない。無理にでもおれが休ませてやればよかったんだ・・・」
おんどりは目を少しだけ開けた。
「おやじさん、ちょっと黙っててくれないか。カラスとキツネがこっちに来るのを待って
んだからさ」
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