狂の字がつくほどゴルフ好きのハリーが帰宅すると、怒れる妻が待っていた。
「あたし出て行きます。ハリー」
とげとげしい声で妻は言った。
「正午までには帰ると、あれだけ約束しておきながら、今何時だと思っているの、夜の9時よ。18ホールまわるのにそんなに長くかかるわけがないでしょ」
「おい、待ってくれよ」
ハリーは言った。
「説明するからさ。おまえに約束したことは忘れたわけじゃないけど、
俺にも言い分はあるんだ。夜明け前に俺は出発して、おまえも知ってるように、フレッドを拾ったのが6時。ところが途中でタイヤが擦り減ってしまっているのに気がついた。交換し始めたら、今度はスペアタイヤも擦り減っているのに気がついた。そこで俺は3マイル歩いてガソリンスタンドまで行き、タイヤを修理してもらって、こんどは帰り道をずっとタイヤを転がして戻って、車に取りつけた。ようやく車を走らせて、
4分の1マイルも行ったら、こんどはガス欠。俺はまたガソリンスタンドまで歩いて行き、歩いて車まで戻った。ようやくコースに着いて、プレー開始。初めの2ホールまでは快調だったんだが、第3ホールに来てティーアップしたところで、突然フレッドが発作を起こした。俺はクラブハウスに走っていったが、医者はいない。フレッドのところに戻ってみると、やつはすでに死んでいた。だから、残りの16ホールというもの、俺は、球を打っちゃ、フレッドをひきずり、球を打っちゃ、フレッドをひきずり・・」