HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

追憶のブートレグ61・ACT61 / THE ROLLING STONES

2009-03-30 22:14:28 | ROCK
いよいよ「追憶のブートレグ」も最終幕を迎えることとなった。
最終幕に相応しいのはやはり、ブートレグにのめり込むきっかけとなった
1枚をとりあげるべきだろう。

私が最初に買ったブートレグは以前も書いたがレッド・ツェッペリンの
日本公演を収録した1枚物のLP。音が最悪の代物で、高校の時に友人が
修学旅行で買ったレインボウのブートレグの音の酷さの記憶と相俟って
「ブートレグなんてのは買うものか」とそれ以来思っていた。

大学を卒業する年、ミック・ジャガーが来日を果たす。
「ああ、これで学生生活も終わりか。これから社会に出て働き続けるんだな。
そんな時にミックが来るなんて、いいけじめになるな。見に行こう。」
単純にストーンズは来れないなら、ミックだけでも絶対に見たいという
思いが優先したはずだが、先に書いたような気分があったのも確かだ。
しかし、先立つ物が無い。(笑)

引越ししなければいけないし、電話の権利を買わなければいけないしとか
思っていても金が無いのには変わりない。そこでレコードを売って金を
つくることにした。そうと決めたからには売るレコードを選ばなければ
ならないわけで、まずここでそれまで持っていたジャズのLPはチャーリー・
パーカーを残して全て売ることにした。大した枚数を所持していたわけでは
ないが、「所詮、俺はロック者。ジャズよさらば。」とか思ったはずだ。(笑)
あとは適当にみつくろったのだが、売った先が大学横にあったレコ屋で
店長とは懇意にしていたこともあって、思いのほか高く買ってくれた。
それで店頭にあったビートルズのホワイト・アルバムとロキシー&フェリーさんの
ベスト盤、ザ・スミスの1STのCDを買ってしまう。
初めてCDを買ったわけだが、CDプレイヤーを持って無いし金が入用だと
いうのに何やってんだか。(笑)

チケット代と引越し代を差し引いてまだ金が少し余ったので(この時点で
電話の権利代を忘れている。バカ。)、「レコードでも買うか」と街に
繰り出してしまう。全く阿呆である。
京都市役所横のその名も「HOT LINE」で見つけたのが掲載写真の2枚組LP。
「なんだ、この格好いいジャケットは。音が悪くても構わん、これは買う。」
というわけで4800円払って入手。
さて、聴いてみると・・・。ピッチの狂いが少し残念だったがそんな
ことを吹き飛ばす熱い演奏、おまけに音がいい。A面1曲目の「BROWN
SUGAR」での大きすぎる音で収録されたミック・テイラーのミス・トーンは
おろか、「HAPPY」でのキース・リチャーズさんの出鱈目な歌詞に至るまで
全てが格好良かった。FMで聴いた73年のライブとはまた違う、荒々しい
演奏にすっかりハマってしまい、未だに私がストーンズの全ツアーの中で
72年北米ツアー最強説を採るのはこのブートレグの衝撃故といっても
いいくらいだ。

あれから今にいたるまで何度も「決定版」を謳ってCDが出されてきた。
最初にCDになったのは確かTSPのもので、ジャケットを一新しての
リリースだった。しかしながらあまりに音が小さくまとまっていて
アナログで聴いた迫力にはほど遠く、人生で初めてCDを窓から文字通り
円盤のように投げてしまった。我に返ってあとから田んぼに突き刺さった
それを拾いに行きキズを気にしながら売り払ったのは言うまでも無い。(笑)
その後、またCDでも買ったが初めてこのブートレグLPを手にした時の
感動はそこには無い。

所詮はブートレグ。こんなもの何枚持っていても何の自慢にもなりはしない。
以前のように何でもかんでも買い漁ることはなくなった。
それでも、初めて掲載写真のLPを手にした時の興奮が今でも私を
ブートレグに向かわせる。
「年に数枚でいいから、お気に入りのブツに出会えたらいいな。」
今はそんな気分である。これからもずっとそうなのだろう。

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KISS / CRAZY NIGHTS

2009-03-29 15:36:46 | DAY BY DAY
掲載写真のどこがキッスの「クレイジー・ナイツ」なのかと問われても
私の所持する「クレイジー・ナイツ」はこれなのである。

88年、私がCD販売の仕事に携わっていた頃の話。
「これ、買ったんだけど中身が違うんで、交換して欲しい。」と
当時の私と同じくらいの歳の男が持ってきたのが掲載写真のCD。
ジャケットにもCDの盤面にもアーティスト名は「BANANARAMA」、タイトルは
「WOW!」と表記されている。ではナニが違うのだろうと思いCDをセットして
私ともう一人の店員と客で聴いてみると、可愛らしい女性の声とは
似ても似付かぬ男の声と、バナナラマでは聴くことのできない
メタリックなギターが飛び出してきた。
そこに収録されていたのは「KISS」の「CRAZY NIGHTS」であった。
工場でプレスする際に間違えたのであろうが、ケースにCDを入れ間違い
たのではなく、しっかり盤面に印刷した内容と収録された音が違うのは
面白いと思い、記念に(?)私が買い取り今も所持しているというわけである。
代替品がなかったので件の男性には返金してお引取り願ったが、まさか
バナナラマのCDを買ったのに、野太い男の声がするCDを聴くはめに
なるとは思わなかったろう。

翌年、また同じような事があった。
今の私と同じくらいの歳の男がCDを手にカウンターにやってきた。
「これ、長○剛じゃないんで交換してくれ。」
そこには「ライ○センス」と盤面にかかれたCDとジャケットがあった。
前回と同じくCDをセットしてみると・・・。
そこから聞こえてきたのは長○剛とは思えない縦ノリのビートに西城秀樹の
ような歌声であった。しかし私はそれが誰の演奏なのかさっぱりわからなかった。
一緒に聞いていたバイトの学生が「ハリーさん、これはボ○イですね。」
と言うではないか。ボ○イ・・・。雑誌の広告で名前くらいは見たことがある。
CD販売に携わっていて実はボ○イを初めて聴いたというのも情けない話だが
本当にそれまで聴いたことがなかったのだ。
「長○剛とボ○イじゃ音が違うし、この爺も魂消たろうな。」と心の中で
勝手な想像をしてニヤけた顔を引き締め直し、たまたま売れ残っていた代替品と
交換してお引取り願った。
両者は同じレコード会社だからこれも工場でのミスなのだろう。

今までかなりの数のCDを買って来たが、自分自身が買ったCDでこういう
経験は無い。実際に遭遇すれば腹が立つだろうな。
間違ったブツが送られてきたり、別人がオーダーしたものが送られて
きたことはあったけど。

話は戻って長○の仮面を被ったボ○イのCD。
どちらにも興味の無い私は当然ながら、「かったるいな。」と呟きながら
問屋に返品の手続きをしたのであった。(笑)
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地獄大全

2009-03-26 22:53:53 | ROCK
キッスの歴史を網羅したDVDシリーズ「KISSOLOGY」の日本版がやっと
登場した。年代順に3組のセットで輸入版はリリースされていたのだが
リージョンコードの問題で日本においては再生に一工夫が必要であった。
私は最初の「VOL.1」だけ購入して、パソコンでナニして見ていたのだが
面倒くさい作業を経なければならないのが癪に障った。まあそれはいい。
価格は安く押さえられているものの、このDVDシリーズには大きな
問題があった。それは本来のDVDにボーナス・ディスクが添付されている
のだが、購入する店によってボーナス・ディスクが違うという点であった。
ボーナス・ディスク目当てに同じDVDを3セット買った人は少なくない
と思う。私はキッス・アーミーではないが、熱心なファンの心境は
容易に察することができた。

そんなこんなを見事にクリアしたのが今回のDVDボックスである。
米国発売から遅れること2年であるが、VOL.1からVOL.3までの9枚の
ディスクに、ボーナス・ディスクが9枚の全18枚をダブって購入する
ことなく揃えられるのだ。日本独自のこの企画はDVDを全て集めただけでなく
箱を開けると武道館のステージが再現できる簡単な「飛び出す絵本」状態の
仕掛けがあるし、Tシャツやバッヂ、レプリカ・ピックにカラー・ブックレット
といった豪華なおまけが満載で、サービス精神旺盛なキッスのステージに
相応しい内容である。

掲載写真はDVDボックスが梱包された専用の「輸送用ダンボール」の
側面。総重量3.8キロという表記が笑える。このDVDを待ち望んでいた
人はきっとこのダンボールも保管するに違いない。多分私も・・・。(笑)

キッスには専門のブートレグDVDのレーベルがあってかなりの量の
映像が出回っている。それら全てを網羅しているわけではないが、一つの
バンドあるいはミュージシャンで18枚ものDVDでその歴史を追えるというのは
今までなかったことで、キッスのファンが羨ましい。
ストーンズの30枚組とかディランの50枚組とか出してもらっても
一向に構わないんだけどなあ。金も無いのに。(笑)

ステージやインタビューだけでなくVOL.2にはキッスの幻の79年の映画
「IN ATTACK OF THE PHANTOMS」も収録されている。低予算で酷い出来の
映画なのだが、単体でDVDが発売されることはまず望めないレベルなので
こうして見る事ができるのは何となく嬉しい。

学生時代にアマチュア・バンドをスタートさせた時は、バンドにギタリストが
二人いた。そのうちの一人が私にこんなことを言った。
「なあ、ブラック・サバスのパラノイドって酷い曲だな。あんな簡単な
曲、プロとして恥ずかしくないのかな。」
私はこう返した。「コピーするのは簡単かも知れないけど、あの曲を
つくるオリジナリティってのが凄いんだよ。お前、作れないだろ?。」
スティーヴ・ハウの大ファンの彼はクラシック・ギターに専念すべく
半年でバンドを去るのだが、なかなか話が噛み合わなかったことを思い出した。

MTVのアンプラグドに出演した時のキッスの演奏は曲の骨格が
浮き彫りにされた分だけ、あまりに単純でコピーが簡単そうなのが
私にも何となくわかった。しかしながら「ROCK AND ROLL ALL NITE」を
聴いたら「全てO.K.」と言わせてしまう力がバンドと曲にある。
ロックというのはそういうものだ。キッスの全てを受け入れているわけでは
ないが、彼らがファンに与えた夢というのはもっと理解されるべきだと思う。
そして、このDVDにはその夢が詰まっている。


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追憶のブートレグ61・ACT60 / ERIC CLAPTON

2009-03-23 21:45:59 | ROCK
追憶のブートレグも残り2枚となった。
今回は私がブートレグを買い漁るのを止めるきっかけになった1枚。
エリック・クラプトンのレインボー・コンサートのLPは曲数が少ないのと
当時のどんな本を見ても「クラプトンは精彩に欠ける」という旨が
書いてあったのでどうも購入意欲がわかなかった。
ところが、2回のコンサートを誤って消してしまったテイクを除く
全てのサウンドボードと、オーディエンス録音を収録したブートレグが
出た。これは是が非でも聴きたい!と思ったのだが、何故かそういう時に
限って先立つ物が無い。(笑)値段も高価だし、他にも興味があるしと
自分の意識を無理やりそらして、これをスルーした。

ブートレグCDが出始めた頃、私はこんなふうに思っていた。
「オフィシャル盤はいつでも買える。ブートレグは限定500とか
1000なので、こっちを優先すべきだ。」
そんな考えで巷に出回るブートレグの中で良さげなものは大概押さえてきた。
しかしながら今回のブートレグは高額物件でもある。おまけに私の
守備範囲も拡がり、ブートレグばかりを追いかけるわけにもいかなくなった。
そんなこんなでいくら内容が良さそうでも高額物件には手を出さないように
なった。これをスルーするのだから、何でもかんでもブートレグを
買う必要もなくなったなと思ったものだ。

ちょうどこの頃、ネット上でブートレグやアンダーグラウンド音源の
トレード・サークルが活発になった。これを利用しない手はないと思い、
買えなかった掲載写真のレインボー・コンサートやドミノスのフィルモアとかを
コピーしてもらい、音源を聴く事ができた。
「こんなやりとりが出来るのなら、バカみたいな値段でブートレグを
買う必要もないな。」と思い、トレードに精を出した。

2004年11月のブログにこんなことを書いた。
『クラプトンやビートルズ、ストーンズやツェッペリンの
ツアーごとの日替わり音源や同日音源のソース違いを
集めることで完結できれば、どんなに楽か・・・と、
皮肉交じりに思う晩秋の夜である。』

これは実はクラプトンやツェッペリンのブートレグを集めて喜んでいる人への
皮肉を書いたのだ。俺はそんなものでは完結しない。
ジャマイカやブラジルに聴きたい音楽は山ほどあるし、ロックの深淵に
辿り着きたいという思いもあるのだ。

掲載写真のブートレグは今でも恐ろしいくらいの内容と価値を誇るし、
所持している人は自慢してもいい逸品だと思う。
私にとってはブートレグを買うという行為に対して転機となったブツと
いう意味で忘れられないものとなった1枚、いや1セットである。

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追憶のブートレグ61・ACT59 / ROGER McGUINN

2009-03-22 19:42:48 | ROCK
「楯は突きませんが、意見は申し上げます。」
人気ドラマ「相棒」で、水谷豊の新しい相棒となる及川光博が特命係に
配属された時のセリフである。こんなふうに言えれば格好いいなと
ドラマの中のみっちぃを羨ましく思ったものだ。
そんなに秀でた能力を持っているわけではないのに、私は上司とよく張り合たし
生まれながらの短気もあって仕事を3度辞めた。
そして、平成4年に今の仕事に就く。

「今度は辞めないようにつまらないことも我慢しないとな。」と
自分に言い聞かせたものの、今までの仕事で携わったどの人達よりも
人間的にダメなヤツらの集まりであることがすぐに解り、うんざりしたものだが
今回は辞めるわけにはいかない。あと5ヶ月で結婚するという事実が
目の前にあったからだ。今なら笑い話になるのだが、結婚の話がまとまった時点で
私は無職であった。まあ就職できるという目論見があったのだが、
今思えば間抜けな話だ。

就職したのが平成4年の12月。結婚するまでの5ヶ月を会社の寮で過ごした
のだが、駅から寮まで歩いて帰るその途中になんと赤黒チェーン店があった。
毎日寄ることになるのだが、毎日寄るということは商品の入れ替わりや滞留
状況に敏感になるということで、変わり栄えのしない陳列棚を見て
ため息をつく日々でもあった。そんな中で中古CD新入荷の棚に掲載写真の
CDを見つけた。

ロジャー・マッギンが91年に行なったライブを収録したもので、11曲が
良好な音質で収録されている。盤の裏を見ると知らない曲が大半を占めていて
私はロジャーが当時の最新アルバム「BACK FROM RIO」を発表していること
すら知らなかったのだ。ソロとしては77年の「THUNDERBYRD」、80年に
クリス・ヒルマンと共同でアルバムを作ってからは、あまりニュースを
聞かなかった(こちらが気に留めてなかったのもある)ので、このCDを
見つけた時は「えっ、活動しているの?」という驚きと嬉しさが同時に
こみ上げてきたものだ。瑞々しい新曲の数々がお馴染みのリッケンバッカーで
奏でられるのだが、このライブを聴いただけで新作の出来の良さを確信できる
演奏がそこには収録されていた。慌てて探した「BACK FROM RIO」は素晴らしい
出来で、後に私は90年代の25枚に選ぶことになる。

このブートレグを見つけたのは今の仕事について10日くらい経ってである。
「またつまらない仕事に就いてしまった。」と早くも思ったのだが、
先に書いた理由があって今回は投げ出すわけにはいかない。
「ロジャー・マッギンが帰ってきた。俺も今回は気合を入れ直すか。」
そんなふうに思ったことを今も覚えている。
あれから16年が経過した。仕事がつまらないのも、このCDのロジャーの
演奏が輝いているのも16年前と全く変わらない。
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どうでもいい一日の怠惰な昼さがりに聴く音

2009-03-21 17:58:19 | ROCK
雨風に晒されっぱなしの私の車は、何時見ても車体が埃まみれだ。(笑)
暖かい今日のような日は、ひとつ気合を入れて洗車でもと思い、
車のもとへ。ついでにと今年度最後になるであろう、水抜き剤をガソリン・
タンクに入れ、トランクを開けウォッシャー液をチェック、頭の中は
オールマン・ブラザーズ・バンドの「WIPE THE WINDOWS-CHECK THE OIL-
DOLLAR GAS」のジャケットを思い浮かべながら「さて、出かけよう」と
トランクを閉めると・・・。あれあれ、なんとエンブレムが剥がれたじゃないか。
平成8年車ともなると、こんなところもボロボロである。
ところで、今年は平成何年だっけ?。(笑)

いきなり出鼻を挫かれ、一気にやる気を失った私はすごすごと家に戻り
缶ビールを開けながら「今日はダラダラ過ごす。」と宣言。
宣言したからにはそれに相応しい音楽でも聴こうと思い、取り出したのが
掲載写真。マイティ・ベイビーの発掘ライブ盤で、70年のライブが3曲と
同年のスタジオ・ライブが5曲収録されている。れっきとしたオフィシャル盤で
今年リリースの発掘音源である。これがなかなか今日のような一日に
ぴったりな音なのだ。

英国のパブ・ロックという言葉で括られるジャンルは、面白いことに
そこにジャンル分けされる個々のバンドを満遍なく好きになれる人を
見つけるのが難しい。パンクに直接繋がるような連中がいれば、そうでない
連中もいる。そうでない連中の大多数はアメリカのカントリー・ロックや
英国フォークの影響を受けていて、特にグレイトフル・デッドの影響は
大である。マイティ・ベイビーはパブ・ロックの範疇で語られることは
ほとんど無いが、同時期のブリンズレー・シュウォーツ同様デッドの影響を
大なり小なり受けている。今回発掘された音源の中でもスタジオ・ライブで
繰り広げられる「NOW YOU DON'T(PART1~4)」と題された曲での即興セッションは
デッドを彷彿させるもので面白い。これで構成が練れていればプログレさんに
なれたかもしれないが、締まっているのかダラけているのか紙一重の
演奏はもちろんそんなことを要求しない。2台のギターの絡みだけでなく
時折目立つように入ってくるサックスやフルートの微妙な位置加減も楽しい。

ジャケットがいまひとつ意味不明なのだが、これに購買意欲を削がれることなく
好事家の皆さんは早めに入手しておくのがいい。発売元の「SUNBEAM」は
入手困難になるのが早いので。
この後私がグレイトフル・デッドのライブ盤を聴くことになったのは
言うまでも無い。
さて、夜が来た・・・・。


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小坂 忠 /  どろんこまつり

2009-03-19 23:18:38 | THIS SONG
小坂忠のボックス・セット「CHU'S GARDEN」が発売された。CD8枚DVD2枚で
構成される大箱で、70年代のアルバムを揃えている者にはダブりになる枚数が
多くなるのだが、それらは当時のアルバムを再現した紙ジャケ仕様であるのと
何より未発表ライブ音源を収録したCDや、公式に商品化されるのが初めての
映像を収録したDVDの魅力が、この箱を手元に置く価値があるものにしている。
私自身も「この箱を買ったら、過去版CDは処分してもいいな。」と思っていた
のだが、どうも掲載写真の2枚に関してはそうもいかない。
今回の箱にもこの2枚は含まれているのだが、掲載写真右のスタジオ盤と左の
ライブ盤にそれぞれ収録されている「どろんこまつり」がカットされている
ためである。

小坂と作者の細野晴臣の了解を得てカットしたとのことだが、なんだか
私には納得できない。歌詞中の「つんぼ桟敷」「つんぼ」という言葉が
差別用語であるということが、カットの理由のようだ。
私が学生の頃使っていた旺文社の国語辞典(昭和40年初版、昭和53年
重版)には「つんぼ桟敷」という言葉はしっかり収録されている。
意味はこうだ。
「つんぼ桟敷」・・・①劇場で舞台に遠く、役者のせりふがよく聞こえない
観客席②事情を知らされない重要でない位置

曲というものは、一度リリースされるとそれは文字通りアーティストの
手を離れ、解釈は聴き手に委ねられる。それは時に作者の意図を遠く離れて
曲解されることもあり、それが原因で悲劇が起こることもある。
「どろんこまつり」は私のとても好きな曲であり、以下は私の勝手な解釈で
ある。

祭りの後の寂しさというのは、よしだたくろうに歌われるまでも無く
誰もが体感したことがあると思う。後から襲ってくる虚無感が大きいほど
祭りの持つ意味が大きかった証明でもあるのだが、実際の私はその虚無感が
嫌で、さまざまな祭りを意図的に避けてきた。
「どろんこまつり」の登場人物は耳を塞いで通り過ぎようとする。
そこに私は自分を重ねてしまう。

歌詞中の「どしゃぶりの雨」「キノコがしげる」という部分はCCRの歌では
ないけれど勝手にベトナム戦争を想起してしまった。それはともかく
もっと深読みすると、生活の中で次から次へと面倒なことを問われる場面を
想定する。どしゃぶりの雨のようになげかけられる言葉や問いは、その後に
それに無闇に賛同する気持ちの悪い奴らをどんどん増やしていく。
「お前は誰だ、所属は何だ、何を考えている、何をするのだ、
何でしないのだ、何を・・・。」正しかろうと間違っていようと数が多い方が
体制であり、そこに属していることを確認されるようなやりとりの数々は
うんざりだ。足をとられそうなぬかるみを曲中の登場人物は耳を塞いで
通り過ぎようとし、再び私はそこに自分を重ねる。

そんな喧騒から離れようとすると、それは自分のせいであるのだが耳に入って
くる情報というものは少なくなる。「あいつには教えなくてもいいよ。
あいつは数には入れなくていいよ。」体制側はつんぼ桟敷に追いやったつもりで
いるのかもしれないが、こっちは自ら耳を塞いで要らない情報を遮断して
いるのだ。体制側がつんぼ桟敷に置いて意味があるのは、耳をすまして
聞こうとする人間であって、こちらは元々聞こうとしないのだから、
思惑違いなのだ。

「どろんこまつり」を聴くたびに私は、そんな勝手な解釈を繰り返す。
収録されたDVDの中で、もともと音の無い72年の映像に「どろんこまつり」
のエディット・バージョンと称するものが被されたものがある。
そこでは削除の対象となる一節がカットされているのだが、その一節が
無いとこの曲の持つ意味合いはおそろしく魅力の無いものに思える。
例えその一節が差別用語を含むものだとしてもだ。

小坂の1ST「ありがとう」に細野が提供したタイトル曲と
「どろんこまつり」は歌詞も曲も絶品だと思う。それにしても歌詞に漂う
虚無感は一体何なのだろう。

つんぼ桟敷につんぼが一人・・・・。
私もだんだんバカになって行くのだろうか。
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追憶のブートレグ61・ACT58 / BONZO DOG BAND

2009-03-17 20:55:03 | ROCK
ボンゾ・ドッグ・バンドを初めて知ったのは、ビートルズの「マジカル・
ミステリー・ツアー」のビデオである。そこに収録された曲(DEATH-CAB
FOR CUTIE)は、なんだかふざけた曲調で最初は印象が悪かったし架空のバンド
だと思っていたのが、ある日それがボンゾ・ドッグ・ドゥー・ダー・バンドと
いうこれまたふざけた名前の実在のバンドであると知って興味が湧いてきた。
試しに1984年に出たベスト盤を買って、それを気に入り今に至る。
LPを間違ってB面からかけてしまい、冒頭の「THE INTRO AND OUTRO」の
ふざけ具合が、先のマジカル・ミステリー・ツアーとバッチリ結びついたのも
今思えば良かったのかも知れない。メンバー紹介を兼ねているかと思えば
ジョン・ウェインが木琴を、アドルフ・ヒトラーはヴィブラホン、
おまけにエリック・クラプトンはウクレレを担当、なんて出鱈目を並べ立てる
洒落は強烈に笑いを誘ったわけである。

そんなボンゾズのブートレグCDは私が知る限りは2枚しかない。
1枚はメンバーのソロなどのオフィシャルとして発売された音源の
カウンターフィットが内容の大半を占めるもので、それほど有り難味は
感じなかったが、掲載写真のブートレグCDRは興味深かった。
クレジットをどこまで信用していいのかわからないが、68年12月の
「COLOR ME POP」から14曲、69年8月のアムステルダムでのライブが
7曲収録されている。前者はテレビ番組なので「絵があるだろう。」という
思いもあるが、そんなものは見たことが無いし音が聴けるだけでありがたい。
昔はビートルズやストーンズもテレビ番組から落としたブートレグが
重宝されたものだ。後者は途中ではいる喋りがライブ感を削ぐ編集で
どこまでが本物のライブかすら怪しいが名曲「URBAN SPACEMAN」は
紛れも無くライブのアレンジで聴くことが出来、これが聴けるだけでも嬉しい。
実際、音質は誉められた物ではない。しかしながらそれを上回る価値が
ここにはあると思うし、何度も書いているがこれこそがブートレグの
醍醐味である。

音質が今ひとつということを書いたのだが最近気になることがある。
音楽CDの新素材開発もそうなのだが、今や映像ソフトはDVDから
ブルーレイに移行しつつあるの。これは画質音質重視の側面が強くなっている
ことを意味している。そうすると何が気になるかと言うと、以前ビデオで
発売されて今や廃盤になった製品の中でも、画質を差し置いて貴重さ優先で
ソフト化されたブツはこの先ブルーレイでは再発の対象にすらならない
可能性があるということだ。
それは画質が優れているほうが良いに決まっているが、画質は良くても
内容がゴミなら本末転倒である。

ボンゾズのブートレグを聴きながら、音質や画質を云々する前に、
音楽の本質的な良し悪しを惑わされないようにしたいと思うのであった。
というわけで、ボンゾズの演奏シーンを数多く見る事が出来る「ドゥ・ノット・
アジャスト・ユア・セット」はDVDで手に入るうちに買っておきましょう。
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追憶のブートレグ61・ACT57 / CHRIS SPEDDING

2009-03-15 21:28:24 | ROCK
これこそ個人的な一大トピックスである。なんと、クリス・スペディングの
初ブートレグCD(正確にはCDR)が市場に出たのだから。
ニュークリアスや、ディス・ヒートなんてバンドのブートレグまであるというのに
なんで今までクリス・スペディングのブートレグが無かったのか?。
需要が無いから、と言われればそれまでなのだが、何でもかんでも
誰でもかれでもブートレグになるご時勢なのに、クリスの音源はなんで
世に出ないの?と思っていた人は少なからずいるだろう。
CDからCDRへと形態を変えつつあるブートレグだが、とにかく私にとっては
待ち焦がれたブートレグである。

掲載写真は1982年4月のとある日のライブのアーリー・ショウと
レイト・ショウを2枚のCDRに収録した物。オーディエンス録音だが
無理なく聴くことが出来るレベルを保っている。「ギター・ジャンボリー」が
目当てなら、「残念だったな」としか言いようがないが、キーボードが
時代がかっていることさえ楽しくなってしまうロックンロールがここにある。

ジャケットに小さく使われている写真は時代を全く反映していない。
おまけにジャケットはエプソンの光沢紙、CDRはマクセルと日本製丸出し
なのだが、そんなことはどうでもいいよ。ある日のライブ音源が
マスター違い(録音者違い)で何種もリリースされ、その都度「これが
決定版」とか言われるあんなバンドやこんな人のブートレグとは違うのだから。
「追憶のブートレグ」も終盤に差し掛かかったところで、本当に感慨深い
ブートレグに出会えた。

このブートレグCDRはそこそこ売れてくれることを願っている。
そうすると、次があるかもしれないし。(笑)

コメント (10)
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NICK LOWE / QUIET PLEASE...

2009-03-12 21:44:57 | ROCK
ニック・ロウの編集盤はLPの時代を含めて何種もリリースされている。
大多数の方がそうだと思うのだが、私は「16 ALL TIME LOWES」というLPに
お世話になった。その名の通り16もの曲がぎっちり収録され、音圧が
低いこと甚だしかったのだが、90分カセットの片面に納まりきれないほどの
ボリュームという魅力には抗えなかったし、何より良い曲が多かった。

CDの時代になったからは4枚組の「THE DOINGS」が秀逸で、これで
「CRUEL TO BE KIND」のオリジナル・バージョンが手軽に聴けるようになったし
ディスク4に収録された20曲のライブ・テイクも嬉しかった。
ただ、ソロ・キャリアを満遍なく収録しているわけでなく、この時点での
近作に焦点が合わせられていたきらいはあった。

掲載写真はニック・ロウの最新ベスト盤。今までとの違いはソロ・キャリア
だけでなく、曲数は少ないもののブリンズレー・シュウォーツ、ロック・パイル、
リトル・ヴィレッジ時代を含む幅広い選曲となっている点だ。
ソロ・キャリアは最新作の「AT MY AGE」までフォローしている。
これから何か1枚という人には便利なベスト盤であると同時に、全ての
アルバムを揃えている人にもお楽しみはある。それがボーナス扱いのDVDだ。

ニック・ロウのキャリアの中で初の映像作品でもある。
DVDの前半は2007年のライブを収録してある。すっかり年老いた風貌だが
声の張りはまだまだ衰えず、現役感溢れるライブを聞かせる。
最初はアコースティック・ソロで数曲演奏し、続いてバンドが登場する。
ニックは終始アコースティック・ギターを弾き、バックのウッド・ベースと
エレキ・ギターの絡みはカントリー・ロックの様相を呈し、特にテレキャスターを
使用する時はそのトーンが気分を高める。満遍なく各時代の曲を演奏する
楽しいライブだ。

そして本当の目当ては70年代から80年代に作られた9曲のプロモ・ビデオだ。
「CRUEL TO BE KIND」だけはMTVで放送された物をたまたま録画していて
何度も何度も見たものだが、それ以外は見たことがないものばかりで楽しめた。
意外とビデオをつくっていたのだなぁというのと、ところで放送されたの?と
いう疑問が頭をもたげ、どこまでプロモーションになったのかが解らない
ところがニック・ロウらしくて実に良い。
「RAGIN' EYES」の中で女性の目から放たれるビームの馬鹿馬鹿しさに
のけぞるもよし、「I KNEW THE BRIDE」で「ニック、プロモ・ビデオで結婚するの
2回目だよ。」とつっこむもよし。
実に楽しいDVDなのだが、CDでロックパイル時代を収録したのなら
DVDでも「TEACHER TEACHER」を収録して欲しかったという欲も出る。
デイヴ・エドモンズが自動車修理工の役で車の下から顔を覗かすのが楽しい
ビデオなんだけど。

私はUK盤を買ったのだが、価格は安いしDVDはNTSCでリージョン・フリー
なので、迷っているなら安心して購入していただきたい。
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ROD STEWART / UNPLUGGED...AND SEATED

2009-03-10 12:35:59 | ROCK
「UNPLUGGED」と言う言葉が嫌いである。初めて耳にした時から今に至るまで
その思いは変わらない。アコースティック主体の演奏に妙なネーミングを
施し登録商標までしてMTVが金を稼ぐのは構わないのだけど、何だか
釈然としない。アコースティックと言いながらギターもベースもアンプリファイド
されているし。結局、邪魔なのはエレキ・ギターということなのか。
大物アーティスト達が番組の企画に乗って、自分たちと同じように歳をとった
ファンのために耳に優しいアレンジをしただけの話で、いくら小奇麗に演奏しても
原曲の出来を超えるものはほとんど無い。

91年にポール・マッカートニーが番組の録音をアルバム化したら、これが
売れてしまい、決定的だったのは翌92年のエリック・クラプトンの
それであった。今から15歳以上若いのに絵的に最もダメな時期だと個人的には
思うし、何より曲のアレンジが私には相容れなかった。初めて聴いた時に
「アコースティック縛りだったら、戦前ブルーズのカバーでもやったら
余程格好いいし、さすがクラプトンと言われるのに。」と思ったものだ。
しかしながらこのアルバムは大いに売れ、グラミーまで獲得してしまう。
これでやりたいことが出来やすい環境が出来たのか、本当にブルーズの
カバー・アルバムを出してしまうし、ブルーズ・メインのコンサートでも
多くの観客を動員したのだから、物事には段取りというか順番が大事なのだと
いうことを私は学んだ。(笑)

追い討ちをかけるように93年のニール・ヤング、94年のボブ・ディランの
アルバムが発表された。少なくともディランさんは「UNPLUGGED」
なんて言ったらダメでしょうと苦笑いしたものだ。ディランのアルバムの
初回出荷分はエラー・ディスクだったし。(笑)

ほとんど唯一の例外で私が気に入っていたのがロッド・スチュワートの
アルバムである。これは彼が類稀な素晴らしいボーカリストであるのが
最大の要因である。どんなアレンジを施されようが天才的なバラディアーで、
ロックンローラーなのだから一度歌い出せば、大概の問題は吹き飛ぶ。
エレキを使わないと言っても、初期のロッドやフェイセスのアルバムの
魅力の大きな部分は、アコースティック・ギターとオルガンに大きくロールする
ドラムの絡みだったので、「UNPLUGGED」なんて大きなお世話である。
オーケストラを配した数曲が大仰に感じる向きもあろうが、ロッドのバラッドは
元々大仰である、もといスケールが大きいので違和感はない。

今回の再発はCDにDVDが添付されてのもので、映像がオフィシャルで
登場するのは初めてだ。ブートレグを探せばあったろうが、私は初見であり
映像を楽しんだ。70年代中盤以降のロッドのバックはトリプル・ギター
だったが、ロン・ウッドを加えるとギタリストがしっかり3人いる。(笑)
映像ならではの面白いシーンもあって、ロッドもロンもしっかり老眼鏡を
持参しているのが微笑ましいし、ロッドがバンジョーを弾くシーンを
見る事ができるのは貴重だと思う。CDも2曲増えていてしかもその中の
1曲が「GASOLINE ALLEY」なのだから堪らない。

マイク・スタンドを蹴り上げることもなければ、サッカー・ボールも無い。
「プラグを抜かれちまった上に、座って演れとさ・・・。」
そんなロッドの呟きがあったかどうかはさておき、私に言わせれば
「UNPLUGGED」なんてつまらない足枷にすぎない。
そんな足枷があっても、素晴らしい演奏をするこの日のロッドとバンドの姿を
是非とも見聴きしてほしい。
コメント (2)
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追憶のブートレグ61・ACT56 / SOFT MACHINE

2009-03-08 18:02:20 | ROCK
自分と同じバンドやアーティストを好きな人と話をしたり、情報交換をする
ネットワークに参加すれば楽しいだろう。有意義な情報も得られるだろう。
しかし私はなるべくそういった所に参加したり、書き込んだりしないように
している。冷静な判断が出来なかったり、客観的な見方が出来ないことを
恐れるからだ。自分が好きなバンドを理解してくれなかったり、全否定する
人と過ごす時間ほど無駄なものはない。それでも、自分がそのバンドに対する
思いを理解してもらえなくても、理解の余地を残してくれている人なら
どちらかというと違った趣味の人が提示する音楽のほうに学ぶことが多い。
これは各人の許容量の違いによって変わると思う。

学生時代は参加していたサークルの性質上、暇があればロック談義を
していた。そういった場で私が最も嫌ったのが、絶対論でなく比較論で
自分のフェイバリット・バンドの優位性を主張する話であった。
何故他者否定で、自己肯定でないのかという疑問があったのだけど、
貶められる対象がストーンズであった(笑)という単にそれだけの話
だったのかもしれない。それでも、私と趣味趣向が違っても彼らの
提示するロックの中には面白いものはあった。論陣を張った立場上、
それらを諸手を挙げて受け入れるわけにはいかなかったが。

卒業して仕事を始めると、学生時代のように頻繁に連絡を取るわけにも
いかなくなり、彼らを懐かしく思う時もあったのと、ストーンズ・バカに
成りきれなかったというのもあって、学生時代は積極的に聴くことが
なかったバンドのCDを買うようになった。「ああ、あの時は突っ張っていた
けれど、なかなかいいよな。ヤツら元気かな。」なんてことも思ったものだ。
その数年後、掲載写真のブートレグを店頭で見つけた時もまず最初に頭に
浮かんだのは学生時代の政敵達(笑)の顔だった。「このCDの存在を
知っているかな。知らなかったら教えてやらないとなぁ。」

LPやCDを単に所持するだけだと即物的にしか捉えられないだろうが
1枚のCDに付随する様々な思いというのは、誰にもあるだろう。
例えこのブートレグの音質が向上したブツが出たとしても、あの時私が
抱いた思いはここにしかない。

音楽は時に無力だ。気分がいい時はそれを更に高揚させる力はある。
少しぐらいのダメージなら回復の足しになるかもしれない。しかし、私は
音楽には一切の癒しを求めない。本当に決定的なダメージを受けた時に
聴きたい音楽なんてないのだ。それでも、昔の仲間にはロックを聴き続けて
欲しいと今でも願っている。かつて愛した音が単なるノスタルジーに
変わったとしても。

音楽は素晴らしい。
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漫画ジャケ

2009-03-07 17:37:51 | DAY BY DAY
掲載写真右はサイエンティストが78年にリリースした「SCIENTIFIC DUB」。
キング・タビーの機材の修理係として雇われたものの、虎視眈々とミキサー卓での
仕事を狙っていたサイエンティストは、タビーの弟子ということになろうが
様々なテクニックは、伝授されたというよりは自身の独学(勿論人の仕事を
横目で見ながら)と、天性によるところが大きいように思う。
たまたまタビーのところに依頼にきた仕事が、タビーが多忙なために
サイエンティストがこなしたらヒットした、という話があるくらいだから
もともとの才能もあったのだろう。

78年リリースということは、60年生まれのサイエンティストはわずか
18歳ということになる。80年代の活動の方に有名な作品が多いが
ファースト・ステップにして既に天才であったことを証明するこのアルバムを
私は大好きだ。プロデューサーよりもミキサーの名前が大きく印刷されている
アルバムを初めて見たのもコレだった。
だいたいジャケットからして格好いい。サイエンティストのアルバムには
この手の漫画ジャケがかなりあるのだが、素早くフェーダーを動かす様子が
描かれているこの絵は群を抜いて格好いいのだ。

サイエンティストのジャケットをしばらく見ていたらファンカデリックの
ジャケットを見たくなって、何枚かアルバムを引っ張り出しては聴いてみた。
あまり好きなジャケットではないが、サイエンティストのジャケットに
一番近い色合いなのが掲載写真左の「COSMIC SLOP」。73年作で個人的には
正直なところ、数あるファンカデリックのアルバムの中では低い位置付けに
ある。宇宙のぬかるみに足を取られたわけではないだろうが。
タイトル曲にしても76年の「HARDCORE JOLLIES」に収録された
ライブ・テイクの迫力に軍配があがるだろう。もっとも「HARDOCORE・・・」は
マイケル・ハンプトンとエディ・ヘイゼルという二人のギタリストを前面に
出したので、私のようなロック者に解りやすかったというのもある。

当初は契約の都合でパーラメントという名前が使えない時期に、
ファンカデリックを名乗ったという経緯があったのだが、その後は明確に
音作りに差が出てくる。複雑にメンバーが絡み合うものの、基本的に
パーラとファンカのファン層は違う。日本ではそれほどでもないが、米国では
顕著だ。それはソウル寄りかロック寄りかの違いと言えばわかりやすい。
御大ジョージ・クリントンはそれを意識したかどうかわからないが、
パーラはわかりやすい(時には馬鹿げている)メッセージで黒人の意識を
高揚させ、ファンカは激烈なギターを中心にしたロックで主に白人を
ターゲットにしたのではないだろうか。そして、コンサートはパーラメントと
ファンカデリックを合体させ(Pファンク・アース・ツアー!)人種の
垣根を越えようとしたのでは、と思えないこともない。

この手のジャケットには抵抗がある人もいるだろうが、ギアをニュートラルに
入れて接すればまた違った世界が拡がる。宇宙旅行が出来るかも。(笑)


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30にして立たず40にして惑う

2009-03-03 20:07:10 | DAY BY DAY
DVDの時代になってからレンタル屋を利用したことが無いのだが、
ビデオの時代はたまに利用した。
酒の席で「アダルト・ビデオって借りたことありますか?」と聞かれたので
「あるよ。」と答えると、「え~、どうやって借りるんですか?。別の物も
一緒に借りて下の方に置いてレジに出すんですか?」とつっこまれる。
「いや、別の映画とかと一緒に借りたことは無いなあ。普通にそのまま
持っていった。」と答えると「女の子がレジにいてもできますか。」と
聞いてくるので「何か不都合でもあるのか?」と返すと「い、いいえ。」と
答えながらも羞恥心の欠片も無い爺とでも言わんばかりに、哀れみの目で
私を見るんじゃないよ。
「でもね。返す時はまだ店が開いてない時間に、投げ込みで返すんだ。
返す時の方が恥ずかしいよ。」というと、「意外と深いですね。」と
間の抜けたことを言うではないか。だいたい俺はもともと深いのだ。
何がと言われると困るのだけれど。それに今の時代みたいにネットで
なんでもかんでも見られる時代じゃなかったことを考慮して欲しいのだ、
若者たちよ。

通販というのは便利である。恥ずかしい物も誰と顔を会わせることなく
購入できるのだ。15歳くらいからロックを聴き始め今に至るのだが
いくら人やガイド本が名盤だと言っても縁が無いアルバムというのがある。
大してファンでもないがジェームス・テイラーのアルバムは6枚、
ジャクスン・ブラウンのアルバムは10枚所持している。しかし、掲載写真の
2枚を購入したのは去年のこと・・・。学生時分にLPをカセットに
ダビングしてもらったヤツを聴きこんだとかいうのではなく、それまで
全く未聴だったのだ。「まさかこれを聴いたことが無いとは人前で
言うわけにはいくまい。いつか買わなければ。」という焦り(笑)はあった
ものの、ズルズルと十数年が過ぎ「もうこんなものレコード屋の店頭で
買うわけにはいかない。今まで何をやってたんだと店員に思われないだろうか。
いやいや、爺が買うものが無くてLP時代に親しんだものをCDで買いなおして
いるぜ、なんて思われないだろうか。」という被害妄想が頭の中で充満した
ところでネットの時代がきたのだ。
と、大袈裟に書いたものの「去年買ったんだろ。ネットの時代になって何年
経ってるんや?。」と突っ込まれるのは目に見えている。(笑)

それにしても「SWEET BABY JAMES」や「RUNNIG ON EMPTY」「THE PRETENDER」
とかは割りと早い時期に聴いていたのだが、掲載写真の2枚のアルバムの
購入が40歳を過ぎてからになったのかは、何でだろう?。
でも、本当は答えも知っているのだ。
もっと面白い音楽があったのかもしれないし、そこに留まることを良しと
しなかったのかもしれない。
遠回りして出会った名盤は確かに名盤であった。

そしてまた、歩みを進める。
たまに振り返りながら。
コメント (4)
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BEATBALL A GO ! GO !

2009-03-01 20:20:26 | ROCK
韓国の再発レーベルといえば「BELLA TERRA」がすぐに思い浮かぶのだが
ここのところ「BELLA TERRA」よりも目立っているのが「BEATBALL」である。
何しろ、SSWやサイケ系のレアな盤をことごとくCD化しているのだから。

『BIG PINK』と銘打たれたシリーズの第一弾はジョン・ヴィレモンテと
マイケル・スパイロだったのだが、いずれも素晴らしいアルバムで
アナログなんざ見かける機会も無い私にとっては嬉しい再発だった。
それからほとんど間を置かずにまたまたグレイトな再発である。
掲載写真の左はケヴィン・オデガードが自身の名を冠した71年のアルバム。
ディランの「血の轍」の録音に参加したことで知られてもいるが、
実はディランの数ある作品群の中で「血の轍」が愛聴盤でない私にとっては
そんなキャッチ・コピーはマイナス要素にしかならないのだが、
意を決して聴いてみるとこれが聴きやすい。

声量・音域はともに特筆すべき点ではないだろうが、声質の濡れた感じと
AOR一歩手前の洒落たアレンジ故に、何度もこのアルバムを聴くことになる。
アルバムの後半は長尺の曲があり、意地悪に言えば「ニール・ヤング・
ごっこ」ともとれなくもないが、それはその筋の音楽しか聴けない人への
宛てつけとしてこんなふうに書くのであって、爽やかなだけでない熱い
演奏もあると解釈していただければいい。

掲載写真右は、サイケ者には有名なポール・レヴィントンが72年に
発表した「TWICE UPON A RHYME」。ジャケットをみただけで「買い」確定
なのだが、内容もすこぶるいい。レココレのサイケ特集でとりあげられたために
サイケ者のターゲットになっているが、実のところはアメリカのSSWや
フォーク・ロックのファンにぴったりの曲とアレンジである。
同時にそれは比較対象としてラヴィン・スプーンフルを容易に想起させ、
いかにラヴィン・スプーンフルの最初の2枚(いや、3枚)のアルバムが
グレイトなものかを私に何度目かの確認をさせるのである。
彼のHPではこのアルバムの曲を2曲聴くことが出来るので、まずは
聴いてみてから購入するのもいいだろう。そのHPにはレココレに
取り上げられたこともしっかり書いてあり(勿論英語で)驚かされた。

今回の再発群には入って無いが、MICHAEL ANGELOのCD(これも嬉しい
初CD化)の帯に「BLUE」の名前を見る事ができる。
ブルーの「LIFE IN THE WAY」は過去にCD化されたはずだが買い逃して
いるので、市場に出回るのが待ち遠しい。
「BEATBALL」にはこの調子でどんどん快進撃を続けて欲しいものだ。
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