占星術思いつきメモ(天体位相研究カルデア)

占星術に関して思いついたことを書き留めるブログ。西洋占星術による地震予測、金融占星術の研究をしています。

ヘリオセントリック占星術を読む

2012-06-29 01:46:05 | 占星学
西洋占星術のホロスコープは、常に地球を中心に置き、惑星の動きを地球から観測する視点で表記するものである。それに対して、ホロスコープの中心に太陽を置き、惑星を太陽から見た位置関係で表記するのが、“ヘリオセントリック”占星術である。従来の地球中心のホロスコープを扱う占星術は、それと区別して“ジオセントリック”占星術と言う。

この方法が近年とみに注目されはじめた背景には、コンピュータプログラムでホロスコープを自動算出するのが主流になったことが理由として挙げられよう。天文学で弾き出された天体の軌道要素はまず太陽を中心にして計算されたものであり、そこから地球を中心とした地球視点の軌道要素に変換される。この変換プロセスから、自ずと占星術のホロスコープ作成プログラムが太陽中心のヘリオセントリックチャートを扱うことを可能にしたのである。

地球中心の占星術が、いわば地球ローカルな“土着”の占星術であるのに対し、ヘリオセントリック占星術は、より天体の象意が純粋で高次のものであるとも言われる。はたして本当にそうなのか。ここでは松村潔氏著「ヘリオセントリック占星術」を題材として、この新しい占星術の可能性を考えていきたい。

松村氏によると、従来の占星術は、地球環境や肉体の中に自己の可能性を閉じ込めるが、太陽中心の占星術は視点を太陽に置くことで、精神を身体から解き放ち、より高い自己を見いだすきっかけを与えるものだと考えているようだ。ジオセントリック占星術を「適応のためのライフサイクル」、ヘリオセントリック占星術を「創造のためのライフサイクル」と呼び、これら両方の視点を持つことで、ライフスタイルを調整していこうというのが、本書のねらいというところである。

従来のジオセントリック占星術による、限定された自己の意識を対象化して、そこから自由になるには、従来の太陽の位置の180度対象のサインを意識することから始まる。ヘリオセントリックで見ると、地球は従来の占星術における太陽の丁度180度反対のサインに位置することがわかる。本書は“地球サイン”の12星座を取り上げて、自意識の解釈に新しい視点を吹き込んでいる。

ヘリオセントリックで使う惑星の効力をジオセントリックのホロスコープに生かすには、各惑星のノード(上昇点、下降点)や近日点、遠日点を利用するという。というのは、ヘリオセントリックの惑星は12サインを統合したさらに一つ上の次元にあり、12サインの影響は消滅しているからだという。ここではヘリオセントリックによるそれぞれの惑星についての考え方が解説されている。この他実際のリーディングを例に挙げてジオセントリックとヘリオセントリックの読み方の違いを説明している。

◆ヘリオセントリック占星術は本当に有効か◆
本書の感想を述べる前に、そもそも根本的な議論として、ヘリオセントリック占星術とは何か、太陽を中心に据えて天体を観るということは何を意味するのかということが私の考えとしてある。この点について占星学の世界ではあまり深く考えられておらず、ホロスコープ作成ソフトで打ち出されたチャートを従来の方法でそのまま読むということもしばしば見受けられる。

占星術システムから見て、最も問題となるのは春分点と12サインである。真に太陽中心の占星学が存在するなら、地球と太陽の関係で決まる春分点は使えず、またそこから派生する12サインも使えないのである。松村氏は12サインを使うことが惑星を地球ローカルな次元に落とし込むことに気がつき、12サインに依らない惑星の使い方を模索したことについては、私は強い賛同を表明する。ところがリーディングの解説ではサインに依った惑星の解説を行ったりして、一貫性が無い。また地球サインを意識して太陽の180度対向を読むことは、意識の対象化の一ステップではあるが、これ自体はヘリオセントリック占星術と呼べるものではない。

松村氏は地球は身体だが、精神は太陽に据えるという考えを指向しているが、実際のところそれをそのまま実行すると、心ここにあらずの世捨て人になってしまう。神秘主義的オカルトの視点から考えると、中心太陽というのはハイヤーセルフ(高次元の自我)を示す。松村氏自身が喩えに大日如来を挙げたように、自我意識を昇華させて中心太陽に突入させることは、オカルト視点から言えば、悟りを開くということに等しいのである。機械的に太陽中心にチャートを観察したところで、意識が太陽次元にまで昇華していなければ何も理解したことにはならないと言ってよいだろう。

またヘリオセントリックでサビアンシンボルを扱うのも要注意だ。サビアンシンボルも地球のアカシックレコードを色濃く反映しており、これも地球ローカルの次元域を出ておらず、純粋に太陽中心の世界を描き出すには向いていない。

本書はヘリオセントリック占星術と銘打ってはいるが、実際には疑似ヘリオセントリック占星術にとどまっている。しかし現実にはそれが最も安全な利用方法であろう。松村氏は「下から見上げる視点」と「上から来る視点」のバランスを取ることに重点を置いている。これは喩えて言うなら、人類をいきなり太陽に突入させるのではなく、地球の衛星軌道上までにとどめて、太陽と地球との関係を両立させようという試みだと解釈出来る。いきなりの大海原は危険だが、宇宙の渚にとどまるなら安全なのである。

本書の惜しいところは、コンピュータの口述筆記による制作であるために、文章構造が平坦冗長すぎて、松村氏が考える所のヘリオセントリック占星術の理論体系が非常に理解しづらいのが難点だ。一般に松村氏の占星術は難しいとの評判だが、こういった本作りの負の面がそうさせているように思われる。氏の著作は猛烈なスピードで出版されるが、理論体系を正確に文章に反映させようとするなら、本の制作にはこれまでの4~5倍の時間がかかるだろう。

本書ではケプラーのプラトン立体にも触れられるなど、ヘリオセントリックの解釈の手がかりになるポイントも随所に見られたが、残念ながら理論化に至っていない。ヘリオセントリック占星術に至る考え方の一説と捉えておくのが良いというのが私の見方である。



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