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地図を描く

2009年08月01日 | iran


旅に出るときは一応何らかのガイドブックや地図を持って行き安心したいもの。
かつては「地球の迷い方」と言われた某ガイドブックも、最近の版を手にとって眺めたところ、なかなかどうして、割合に正確そうな地図でいっぱいではないか。

地図は正確であるに越したことは無いのだが、一昔前の「地球の歩き方」は旅行者の投稿情報誌的な要素が強かった。
そういう目で見れば、地図や情報が確かでは無いといって目くじらを立てるほどのことではない。
基本的には現地で情報を仕入れて自分で確認することになる。
でも旅行の楽しみなんてものは自分で探すことにあるから、地図やガイドなんてものはまあ大体のことが大まかに書かれていればそれでよい。

初めて旅行に持って行った「歩き方」。
それに記された地図は小学生が描いたまんがのような絵で、「このあたりに安宿多い」とか、「バザール(食料品)」といった言葉が実にアバウトな範囲線でもって記されているだけの図。
「地図」と言うよりも「概念図」と言ったほうが適切かもしれない。
けれどもその曖昧さが、かえってファンタジーの宝探し的な雰囲気を醸し出している。
別段急ぐ旅ではない。宝探しをゆっくりと楽しめば良いのだ。

そう言ってもやはり地図を持っていたい時がある。
パキスタンから列車かバスでイランに行く予定であった。
93年ごろ、イランについては「歩き方」が出ておらず、旅行のための情報はとても少ないものであった。
おまけに英語がほとんど通じないという。これは心細い。
パキスタンのクエッタという街で偶然出会った日本人と食事をしながらそんな話をしていたら、彼はイランのガイドブックを持っているという。
いわゆる「ロンリー・プラネット」という洋書である。

僕は早速彼の部屋にお邪魔して、イランで最初に訪れる予定の街「シラーズ」のページを見せてもらった。
「すいませんが、これちょっと写させてもらっていいですか。」
彼は快く了解してくれた。
僕はその本をしばし借り受け、自室にてチャイを飲みながらゆっくりと模写していった。

結論から言うと、シラーズの街はこの模写地図が無くても全く差し支え無かった。
長距離バス停から中心街にも迷わず行けたし、宿も楽に確保出来た。
両替にも何ら困ることは無く、観光も十分に味わった。
今にして見るとこの模写地図、いまひとつ判りにくい。
おそらく現地でこの図を参照したところで、何ら役には立たなかったであろう。


地図といえば学生時代のこと、アルバイト先で幾つかの地図を描いたことがある。
バイト先の会社は多角経営ということで数種類の事業を行っており、このたび飲食店を何箇所かオープンすることになった。
その宣伝広告に載せる地図を描いたのである。

我ながら良く描けたと思って担当者に見せたところ、何箇所も赤チェックが入って描き直しになってしまった。
「駅はもっと大きく描くこと。それにより店の場所がぐんと駅に近く見えてくる。」
彼が入れた赤チェックは僕の絵の3倍程の大きさで駅が描かれていた。
その他幾つも「宣伝のための地図」の注意を受けた。

地図は正確であれば良いというものでは無いらしい。
それぞれに沿った目的があり、時には正確さなどというものは余計な要素となる。

地図にはご用心。


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