それぞれの国で空港から街へ行く時はそのほとんどがバスとなる。
そのバスの中で初めてその国の雰囲気を感じることができる。
だからファースト・バス(ここではその国で最初に乗るバス)での記憶というのは常に印象深いものが多い。
ある夏のこと。夜中の2時過ぎにシリアのダマスカス空港に着いた。
空港のベンチで居眠りを繰り返しながら、夜明けを待ってダウンタウンへ行くこととした。
早朝の冷気が漂う中、空港 . . . 本文を読む
休日に工場地帯を歩く。
平日のこの区域は一日中大型のトラックや作業者が行き交う。
ひたすら直線の道路にはほとんど信号が無く一般の歩行者もいないため、各々の車輌は轟音をあげ排気ガスを撒き散らし爆走する。
それが休日には水を打ったように静まり返り、辺り一面物の動く気配が皆無となる。
時折工場の作動音が継続的にうなってはいるものの、音も無く静かに立ち上る煙突の煙・炎以外は微動だにしない。
車 . . . 本文を読む
トルコのトラブゾンという街からサフランボルという街へ移動しようとした。
サフランボルは小さな田舎町である。従って主要な長距離バス路線からは離れた地域に位置しているため直行バスが無い。
「まずサムスンへ行け」とのサフランボルのバス案内所の言葉。
「バルチンまでとりあえず行け」と、サムスンの切符売り場にて。
「メルチフォンまで行ってミニバスを拾え」と、バルチンのバスオフィスにて。
仰せの通りメルチフォ . . . 本文を読む
「クラシックジャーナル」という雑誌を愛読している。新譜ディスクの紹介に始まり様々な音楽ネタ、ちょっとしたオーディオネタが、がなり深い内容で語られる。どちらかというとマニアによるマニアのための雑誌。でも文章とは特定分野に掘り下げたものほど面白い。
その中に写真家木之下晃による「木之下晃アーカイブス」という写真の連載があり、これが面白い。毎回30ページ前後のモノクロ写真で、回毎に1人ずつマエスト . . . 本文を読む
ある年の秋、2週間ばかりイスタンブールに滞在した。もう何度目の訪問になるか忘れたが、誰にでも何度となく訪れる場所があると思う。ある人はバンコクだし、ある人は京都、たまたま僕はイスタンブールであったに過ぎない。他の街を訪れる事無く、そのときはとにかくこの坂と海と丘の古都を散歩して周った。
毎日のほとんどをチャイハネで過ごしたといってもいい。朝はまずチャイハネへ。熱いチャイを飲みながらポケットか . . . 本文を読む
以前から欲しいと思っていた長谷川利行と松本竣介の画集を古本屋で手に入れた。きちんとした画集ではなく、所謂美術展の図録である。しかし内容や図版はいずれもなかなかのもの、しかもその2冊が隣り合って売っていた。ある時にはあるものであり何某かのめぐり合わせに感激更なりである。
2000年の長谷川利行展(鎌倉近代美術館)を観た時には図録を買わなかった。僕は美術展や映画で図録やパンフをあまり買う習慣が無 . . . 本文を読む
写真を撮る時はほぼ6割を35ミリサイズのカメラ、残り4割を6×6で撮影している。一時6×7を使いたいと思い、それなりに高いお金を払って中古の6×7を買った。見かけもカッコイイし、写りもとてもよい。でも結局はあまり使わなかった。
携帯性は悪くないのだが、1本のフィルムで撮れる撮影枚数がいけなかった。6×6では12枚、6×7では10枚。この2枚の差が実は大きかった。普通シャッターを押すうちに気分 . . . 本文を読む
ホジャとはトルコの民話上の人物「ナスレッティン・ホジャ」のことである。13~14世紀に実在した人物らしいが本当のところはどんな人物なのかよく判らない。数々の民話的なエピソードがあるがそれは実際の人物像でなく、あくまでもお話の上でのキャラクターと考えたほうがよかろう。(内容は日本でいうところの「彦一とんち話」や「吉四六さん」のような感じの話が多い)
僕はホジャの話を小学生の時に読んだ「天からふ . . . 本文を読む
ある晴れた日のこと再開中の地域を歩いていた。メインの古い商店街から通り3つほど奥を基点とし、かなりの範囲に渡って数多くの重機が工事用シートの奥に並び解体作業や土工事を行っている。その様子はある種の独特の風景を作り出していた。歩きながら写真を2,3枚撮ったところ、近くの警備員に撮影しないようにとの注意を受けた。
理由を聞こうかとも思ったが、相手は単なる警備員のようなので恐らくこちらが聞きたい答 . . . 本文を読む
そんなこともあって次の旅行には新しいカメラを持っていった。今度はハーフサイズではなくきちんとした35ミリサイズ。ズームが付いたコンパクトカメラ。さらにパノラマ機能付き。(最近のカメラにもパノラマ機能ってあるのかな)前回のカメラに比べて格段のグレードアップ。今回はもうちょっときちんと写真を撮ってみようと考えた。
実はこれまでの僕の写真はすこぶる評判が悪く、家族に見せても「つまらない」との感想し . . . 本文を読む
当時僕は旅行に行っても写真をほとんど撮らなかった。国内の旅行ではいつもカメラを持って行かなかった。海外へ行く時は一応小さな小さなカンタンカメラをリュックに入れて行った。
今では無いハーフサイズ判。(普通のフィルムで枚数が2倍撮れる)押せばカチッとシャッターがおりる。でもちょっと暗いともう撮れない。ストロボなんて付いていない。でも元々撮るつもりが無いので何の心配も無かった。僕はそれで気が向いた . . . 本文を読む