二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり27

2016-04-24 22:57:45 | 連載中SS

アルヌスの丘 訓練地

平成の日本と昭和の日本が事態の悪化に驚愕している中、
アルヌスに駐留している自衛隊と日本軍は先のイタリカの戦いもあって合同訓練中であった。

『だ~~んちゃく、今!』

笛を吹くような飛翔音が終えた瞬間、
続々と自走砲から放たれた砲弾が着弾し爆発音を響かせる。

『命中、目標を制圧中。
 残る目標は撤退を図る模様』

『よろしい、追撃を行う。
 第1戦闘団はただちに前進せよ。
 それと島田中佐にも追撃をお願いできないか?』

「問題ありません大佐殿…失礼一佐殿。
 こちらも合わせます、連隊前進、突撃せよ」

砲撃が続く中、指揮官達の決断で74式、
三式あるいは九七式と称される鉄獅子が一斉に咆哮し前へ進む。
鉄獅子の後方には日本軍のハーフトラックに自衛隊の軽装甲機動車と装輪装甲車が続いており、
少し前に大陸で実戦を経験した島田にとっては見慣れた光景がそこにあった。

「戦車の性能差、
 無線や命令貼付の違い。
 色々あったが…何とかできそうになったな」

戦車に揺られつつ独白する島田中佐。
元々肩を並べて戦うことはアルヌスの丘を占拠し、
その後の反撃を撃退するまでの間に経験済みであったが、
双方の機動戦力、特に機甲部隊の連携には様々な問題が立ちふさがった。

まず無線はアナログとデジタルで違いがあった上に、
戦車の性能が違いすぎているため行軍速度が合わない…等々。

ハード的な問題があった上に、
命令解釈の違い、運営思想の違いとソフト面でのすり合わせが大変であった。

『第2中隊、遅れているぞ!』

『…っ申し訳ございません!履帯に不具合発生!』

無線で聞こえる自衛隊側の報告に島田は思考の海に潜る。

(練度は文句はない、だが不整地におけるノウハウが我々より不足してるな)

さらには日本軍にとっては実質中世から近世レベルのインフラしかない大陸で、
戦車の運営を経験していたので、この遅れたインフラしかない世界でも対応できたが、

自衛隊にとっては初めて経験することであり、
しかも国内では大規模かつ、思う存分戦車を動かることは稀であり、
近年の戦車削減方針と相まって実戦でしか習得できないノウハウが不足していた。

(こうした問題は訓練を重ねていけば解決するだろう。
 来る帝都攻略には問題はなくなるはずだが…兵力が足りない)

現在日本軍と自衛隊が有する機動戦力は島田中佐の戦車連隊と加茂一佐の戦闘団のみであり、
攻略こそ簡単であっても、帝国首脳部の逃走を防ぐだけの頭数は足りておらず、事態が長期化する恐れが大いにあった。

加えてピニャ殿下の証言から皇帝が焦土作戦を検討していることが判明した上に、
焦土作戦を考えている以上、自らの弱さを悟った帝国が民間人に紛れ込んでゲリラ戦を仕掛けてくる可能性が高いと判断された。

(だからこそ、連携強化のための合同訓練。
 増援としてわが軍からは空挺部隊が新たに来る。
 そして帝都に部隊を潜ませることが決まった)

ゆえにもしも帝都攻略作戦を発動した時は、
首脳部が逃げる隙を与えない速さで制圧することが求められており、
自衛隊との連携を深め、連携不足によって逃げられるという醜態を防ぐ。

さらに機甲部隊に先立って帝都制圧部隊として大戦時には間に合わなかったが、
新たに日本軍の空挺部隊、第1挺進連隊がアルヌスに派遣されることが決定した。
また、情報収集と開戦時には帝都内部から呼応するための部隊を潜ませることもすでに決まったことだ。

(まだ銀座に攻めて来た敵との戦いは始まったばかりだ。
 交渉のテーブルを繕うにもピニャ殿下との接触で帝国とのパイプがようやく出来たばかりで、
 そんな中もしも帝国の強硬派が積極的に動けば…もう一度アルヌスの丘に死体の山を築くことになるだろう)

丘の周囲に築いた死体の山を思い出し島田は顔を顰める。
軍人の仕事の内とはいえ、ああも一方的な展開は島田にとって正直気分が悪かった。

が、そうした一方的な戦争展開が、
新聞や一部声が大きい議員、野心的官僚、軍人などの煽りもあって世論が過激化しており、
先の戦争の成功体験と相まって世論は現在進行形で血に酔っていた。

曰く、無敵皇軍恐るるに足らず。
なぜ進撃しないのか?

兵力不足、地理不案内、
その他諸々の不安要素を無視して叫ぶ人間に政府と軍は頭を痛めていた。

「…真に脅威なのは無能な味方、か」

なるほど、確かにわが軍と自衛隊はこの世界では無敵だ。
しかし、それを十全に発揮できる環境を整えることなく行えば失敗する。

帝国の軍事力は脅威ではないが、
後ろの味方からの妨害がもっとも軍の最適な行動を阻害しており、
自衛隊も方向は違うがその行動を妨害しているのは後ろの味方で島田が乾いた笑いを漏らす。

(とはいえ、自分は連隊長に過ぎない。
 例え準備不足であっても行けと言われたら行くしかない)

大日本帝国の軍人として、
そう言葉に出さずに島田は呟き、訓練に意識を戻した。

















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