凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

フィギュア・フォー・レッグロック(4の字固め)

2005年08月09日 | プロレス技あれこれ
 プロレスファンでなくても4の字固めは誰でも知っている。僕の子供の頃はプロレスごっこでかける技としては逆エビ固めと双璧で、次にコブラツイストがくるだろうか。
 今の子供たちはさておいて、僕達の世代でなぜ4の字固めがそんなに膾炙しているのかと言えば、それはデストロイヤーの功績だろう。

 ジ・インテリジェンス・センセーショナル・ザ・デストロイヤーの初来日は昭和38年だという。生まれてないや。長じてから懐かしビデオで見たデストロイヤーはそりゃものすごい迫力で、力道山とのインター選手権で見せた凄みは怖ろしいものだった。力道山に4の字固めを仕掛け、最後に左足がかかった瞬間力道山が「あああ! !」と断末魔のような声を上げた試合を見たことがある人は多いと思う。あれを見れば誰でもデストロイヤーの悪魔のような凄さと、4の字固めの恐さを刻印されたのではないだろうか。
 残念ながらそういう世代でない僕が4の字固めに親しんだのは、和田アキ子の「うわさのチャンネル」だった。おちゃらけたデストロイヤーがせんだみつおに4の字をかけ、苦しんでいるのをゴッドねぇちゃんが笑うという仕掛け。あれを見て子供はみんな真似をした。浸透したことはしたのだが、本当のデストロイヤーの恐さはあんなものではない。

 元祖は誰か? これは残念ながら知らない。誰か教えてくれないだろうか? ただ、デストロイヤー以前に僕らの世代では伝説となっている使い手に「野生児」バディ・ロジャースがいる。かつてこの技でNWA世界王者に君臨した麗しのネイチェアボーイ、魅せるレスラーとして著名なロジャースを見ることが叶わなかったのは残念である。もっとも、ロジャースは来日していないので無理な話なのだが。
 このキザでハンサムでありながらやることは凄いというプランをそのまま継承したのが「狂乱の貴公子」リック・フレアーであり、4の字をそのままフィニッシュに使うところもコピーである。ゴージャスな雰囲気を漂わせながらNWA世界王者を永年にわたって守り通したフレアーの千両役者ぶりを見て、ロジャースを想像するのみである。

 しかしながら、実は4の字固めという技は地味である。なぜ地味かと言えば、マットに双方とも寝転んでしまうからである。かかってしまえば見栄えがしない。したがって、この技はかけるまでが魅せる勝負である。デストロイヤーのように何度もニースタンプを仕掛けて足を弱らせたり、またフレアーのようにニークラッシャーを放ったりして、どんどん相手を追い詰めていく。この4の字固めへの予兆が一種のクライマックスであって見ごたえがある。そして頃やよしと相手の足をスピニングトーホールドのように極め、自分の足を絡ませて最後に右足(デストロイヤーは左足だったと思うがそれでは4にならない)をフックする。この右足のフックまでにも一攻防あるのが常。
 かかってしまえばあとはじわじわと責めあげるのみだが、寝技なので相手の苦悶の表情も見えない。なのでデストロイヤーは両手をバンバンマットに叩きつけてアピールする。フレアーは自分の半身を起こし、片手を上げて半身になって4の字を見せようとする。なかなかに大変である。

 さて、4の字固めは裏返ると攻守逆転してかけた方が痛くなる、という話はよく言われる話。これがあるから裏返しの攻防で力が入り、観客を飽きさせないとも言えるのだが、これは難しい話だ。実際にやってみると裏返ってもやっぱりかけられた方も痛い。それにかけたほうも、確かにヒザ頭が下になるので痛いが、攻守逆転というほどではないような気がする。だがギミックと言い切ってしまうには自信がないので(僕らは遊びで本気の攻防をやっていないので)、神秘の世界と考えておくことにする。

 印象に残る使い手として、他にジャック・ブリスコやパット・パターソンがいる。忘れてはいけないのがジョニー・パワーズ。彼の場合は「8の字固め」と称して猪木を苦しめたが、プロレスファンの間では「なんで8の字? 」という話は呑んでるとよく出る話。4の字の倍効くから8なのだよ、とか、パワーズはかけている自分の右足を相手の足の裏側に回してロックするため、見た目が双方4の字を形作るような形態になるため、4+4で8、またはその自分の足が4のようになるため上から見ると8に見える、などと諸説紛々である。こんな話をしながら呑んでいると楽しい。
 日本では、藤波が印象に残る。名勝負は昭和60年の対猪木戦で、猪木が藤波に「折れ! この野郎! ! 」と叫んだ伝説の試合。結局猪木の卍固めでレフェリーのルーテーズが試合を止めたが、試合後の藤波のインタビュー「(長州軍やUWF勢の大量離脱の後で)今猪木さんの足を折ったら、会社は、新日本はどうなってしまうんですか」と言ったことも深く印象に残っている。
 現在の使い手として最も秀でているのはむろん武藤敬司。武藤は、デストロイヤーのニースタンプやフレアーのニークラッシャーと違い、まずヒザへの低空ドロップキック、そしてドラゴンスクリューで徐々に追い詰める。さすが天才武藤、試合の組み立てが上手い。
 しかしながら、派手な技で会場を沸かせる武藤なのに、なんで4の字をフィニッシュで使用するのか? シャイニングウィザードなどの派手な技が武藤には似合うのに。この疑問の回答の一つが95年の東京ドームIWGPヘビーvs高田伸彦戦だろう。新日本対UWFインターの図式の中で、実質的ではあるが地味な関節技を多用するUWF勢に対し、武藤は最もプロレス的な関節技である4の字固めで勝って見せた。プロレスの牙城を4の字固めで守ったところに価値がある。あれは4の字固めでなければいけなかった。このために武藤は4の字固めを…と感動したものだ。

 類似の技として、永田のナガタロックがある。安生も似たような技を使っていた記憶がある。4の字の方が効くのになぁとはいつも思っているのだが。また、天山が以前足卍固めというのをやっていた。なんだか複雑でうまく表現できない技。
 現在は武藤以外は、みんな痛め技となっている。かつての裏返して攻守逆転という攻防は影が薄くなり、みんなロープへと逃れる。どんなにマット中央でかけても向かい合って寝転んだ関節技ではどうしてもロープが近い。そのために安直にみんなエスケープする。本当に極まれば動けないだろうとは思うのだが、もはや4の字固めでギブアップすれば弱く見える、というくらいに技の価値は落ちてきている。
 4の字固めにこれ以上の発展は望めないのだが、例えば怪力レスラーである小橋や中西が意外な場面で使えば面白いのだが。タイトルマッチで、使うとは思わなかった中西がマット中央でがっちり極めればその意外性に驚くだろう。今はフォールと言えば垂直落下で脳天を狙うかラリアットでぶん殴るばかりのプロレスで、意外な古典技が復権すると面白いとは思うのだが。

 小技さんのブログに4の字固めの掲載あります。イラスト参照してみてください。ミミ萩原の4の字固めはこちら♪ また武藤敬司の4の字固めは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ




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12 コメント

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Unknown (明石屋_1955)
2005-08-09 23:06:41
やはり印象にあるのは武藤VS高田戦です。確か天井からのカメラ映像もあったような気がします。あれから武藤も4の字を使い始めた気がします。
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武藤はセンスあるね (凛太郎)
2005-08-09 23:18:39
足4の字も当然関節技だけれども、ルーテーズは「シュートではない」と言っていたよね。しかし痛いことは痛い。この技をUWFの大将にかけて勝つところが武藤のレスラーセンス抜群のところなんですよねぇ。プロレスならではの関節技を使うところが。
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名手 (今日のジョー)
2005-08-10 13:00:02
凛太郎さん、こんにちは。

四の字固めにニュアンスの近い技として

コブラツイスト、スリーパー・ホールドなどが

あると思います。決して最後の決め技ではない。

しかし、それを決め技にしたデストロイヤー

とかバーン・ガニアなどにプロ根性をみます。

誤解を恐れず言うなら、ドリーファンクJrの

スピニング・トーホールドや馬場のカワズ掛け

などもプロの決め技だと思うのです。

ジャック・ブリスコ、いやぁ参りました.

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トラバどうもです。 (小技)
2005-08-10 16:27:23
武藤選手、シャイニングウィザードもヒザ蹴りだし、ラウンディング・ボディプレスもヒザを痛めるし、ヒザの技に相当こだわっているみたいですね。
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>今日のジョーさん (凛太郎)
2005-08-10 22:11:21
コメントありがとうございます♪

スリーパーは最近総合格闘技の影響で注目が集まっているのですが、ガニアらが繰り出した技とはちょっとニュアンスが違うような気もしますね。端的に言えば「華がない(汗)」。そんなことを言うと総合ファンに怒られてしまいますが。

スピニング・トーホールドはいつか書きたいと思っています。

ジャック・ブリスコ。僕がプロレスを見始めた頃はNWAヘビーが世界最高峰のタイトルであり、そこに君臨して現役であったのはドリー、レイス、そしてブリスコでした。他にもいましたがレンタルチャンピオン。フレアーが出てくるまでは、この三人は特別な存在でしたね。今はNWAは無くなってしまいましたが、チャンピオンだったこれらの人の印象は色褪せることはありませんね。
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>小技さん (凛太郎)
2005-08-10 22:15:14
いつもお世話になっております。m(_ _;)m

武藤は、見ているとヒザの痛みで普段は満足に歩けていない様子ですね。ボディプレスに行くまでのシュミット流バックブリーカーもヒザを痛める。そこまでして何故? 武藤のプロレス美学だとしたら本当に骨身を削っていますね(汗)。
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こんばんは~ (jasmintea)
2005-08-11 23:02:02
デストロイヤーの全盛期は知らないんですよね。

やっぱり「うわさのチャンネル」で見たのしか知りません。

私はタッグでダブル四の字固めが好き!(見た目が!)

パワー殺法よりもよりプロレスらしい感じがしません?



ミミ萩原はあの長い足をからめての四の字固めが迫力ありましたよね。記憶が違ってたら申し訳ないですが確かビクトリア富士美も使ってたような‥手足が長いミミと短いビクトリア、どっちが効く??なんて思ってたような‥。そう言えばデストロイヤーも短いですよね?
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足は短いほうが効くのでしょう(笑) (凛太郎)
2005-08-11 23:14:08
こんばんわ。いつもありがとうございます♪

ビクトリア富士美については…さすがに記憶がありません(汗)。チョップはよく放っていたような気がするのですが。それに、もちろんデストロイヤーだって全盛期はレンタルビデオのお世話になっています。そんなに古い人間じゃありませんって(笑)。



4の字固めは足は短いほうが密着度が増して効くのだ、と「プロレススーパースター列伝」に書いてありました。フレアーもゴージャスなわりには足が短いので4の字を必殺技にした、と解説がされています。馬場さんには4の字固めはかけにくかったでしょうねぇ…。(笑)
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4の字固め (バディーロジャース)
2007-04-22 06:21:10
 4字固めの発明者はバディ・ロジャースです。練習中に生み出したとかいいます。デストロイヤーの自伝を読むと、当時ハワイにいたディック・ベイヤーはヒールとなり米本土に逆殴り込みをする際、4字固めをロードブレアース相手に練習したそうです。
 この技はロジャースの専売特許であり、プロレス界には他人のフィニッシュホールドを使っちゃいけないとの不文律がありました。しかし、ロジャースもキャリアの終りに近づき、ベイヤーの行く先はロスであり、ロジャースのいるのは東部だということで、この技をベイヤーの新たな決め技にしたそうです。
 4字固めが日本に紹介されたのはデストロイヤーによるためあのかけ方が正当のように思いがち(私も長くそう思っていました)ですが、あのスピニングしながらかけるのはむしろ例外です。今ユーチューブでロジャースの4字固めが見られます。彼の全盛時代のUSタイトルマッチです。アベ・ヤコブに4字をかけます。他にもう1本、かませ犬のガルシアという選手相手に4字をかける映像を見ることができます。
 どちらもかけるときはさえない。かけた後がかっこいいのです。体をひねって大きく客にアピールします。フレアーはこれをまねているのです。
 反転しての攻防、これも力道山がつくった4字固めへの新たなる伝説です。アメリカじゃあんなのありません。かけられた方はみんなギッブアップです。ロジャースははずすときいつも体を反転させています。自分からですよ。実に憎々しげにかけていたぶるのです。デストロイヤーのように手をバンバンさせるのもありません。
 ですからわたしたち日本のプロレスファンはデストロイヤーの非常に彼だけの特殊な4字を見てあれが4字の全てだと思ってしまったのです。
 足が短い方が密着するもデストロイヤーの個人的なことです。かれは背が低くて足が太いですから。力道山の足としっかり密着していました。ほかの使い手であるロジャース、ブリスコ、フレアー、パワーズだれを見たってデストロイヤーのようなずんぐりではありません。
 他にもユーチューブではブリスコ、フレアー、パワーズ、エディ・グラハム(これは親子でメディコにかけます)が見られます。みんなロジャースのように相手の足を簡単に足をたたんでかけています。
 ひとつ言い忘れましたが、デストロイヤーは相手の左足をテイクダウンするので4字が逆文字になります。
 ユーチューブを見るときは、buddy rogers,jack brisco,johny powers,eddie grahamと入力してください。スペルが違うと出てこないです。
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>バディーロジャースさん (凛太郎)
2007-04-22 18:44:36
やっぱり元祖はバディ・ロジャースなんですか。いやありがとうございます。バディロジャースより古い使い手は見当たらなかったのでもしかしたらそうかとは思っていましたが…。

このお話をお伺いすると、ディック・ベイヤーにバディロジャースは許可したのかどうなのか、ということが気になりますが実際はどうなんでしょうね。黙認と言う形だったのでしょうか。
本文中にも、デストロイヤーの4の字が逆文字であったとは触れていますが、もしかしたらこれはバディの4の字をいただいたことに関わりがあるのかもしれないなと想像したりして。少しオリジナルと変えることで言い訳になる(もしかしたらリスペクトで同じ入り方にしなかったとも思えますが)ということかもしれないなと。スピニングして入るやり方も、多少のオリジナリティを出そうと考えたのかもしれません。あくまで想像。
もしかしたら利き足の問題だったのかも、とも思いますが、それにもちょっと疑問もあるのです。プロレスの技というのは入り方が決まっている、という話を読んだのは森達也氏の著作でだったと思いますが…ヘッドロックは必ず左腕でかける、とかね。それで初めて対戦するレスラーとも受身のタイミングなどを量ることが出来るのだという話でした。そうなると逆文字ではいけないことになる。逆文字にするからには相応の理由がないといけないことにも繋がります。それがリスペクトなのかオリジナリティなのか、推測して楽しむこともまた面白い。

僕はバディの4の字は初見なんですが、やはりひねりを加えていますね。これは見栄えの問題もあるのでしょうが、その方が効果的であるという考えもありますね。力が入りやすい。実際試せば分かるのですが、背中がついた状態ですと脚に力が入れにくいのです。なるほどなぁ。

さて、4の字裏返しはギミックとしてよく言われていることなのですが、ここでは僕は「神秘の世界」と書いて逃げました(笑)。まあそうはっきり書くのもアレかと思いましてね。プロレスが好きなものですから(笑)。

この記事を書いたのはもう2年近く前なのですが、今はyoutubeという便利なものがあって、実に有難いです。ご指摘の動画、楽しませていただきました。ご紹介いただきましてありがとうございました。
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