本格的に寒くなってきた。
僕は暑い夏が大好きだけれども、何故暑い夏が好きかというと「服をたくさん着なくてもいい」ということに尽きるのであって、ズボラ以外に理由がない。
寒い冬は重ね着が面倒なので困るのだが、冬のいいところは「食べ物が美味くなる」ことだろう。鍋物が恋しくなり、魚に脂が乗り、そしてなにより僕の好きな「燗酒」のシーズン到来という素晴らしい季節でもあるのだ。重ね着くらいで冬を嫌ってはいけない。
燗酒。しかし僕は冬でなくても燗酒をよく呑む。居酒屋では一年中燗酒だ。ひとつには「手酌」という行為が好きだということがある。杯、もしくはぐい呑みに徳利を傾けて注ぐ楽しさ。ままごとの世界かもしれないがこれって酒呑みの一つの愉悦ではないかと思う。僕だけかな。
尚、手酌は好きだが人から酌をされるのはさほど好きではない。ペースというものもあるし、宴席では無理に注ごうとする輩も多いので困る。「まー呑め」「ささぐーっと」みんな相手を酔わせたいと思っているのだな。酒くらい自由に呑ませなさいよ。文士の手酌という言葉を知らないな(しかし妙齢の女性に酌される場合はこれを除く)。
まあ酌をしないと「失礼なヤツ」と思うおっちゃんも多いのでしょうがないけど。酌をされることで上下関係を確認しようとするこの日本の文化はなんとかならんかな。(しかし僕も仕事で呑まねばならないときはこの日本文化に倣って酌を繰り返す。激しく自己嫌悪に陥ります)
話がそれたが、燗酒。日本の基本的アルコールである日本酒というのみものは昔から温めて供する。世界的にも珍しいのではないかな。類似のものに中国の老酒がある。あれも温めることが多いが、本場中国ではどうなんだろう? ちゃんと調べてないのでまずいのだが、老酒を燗するのは日本発祥なのだと聞いたことがある。どうなのか調べないと。さらに、氷砂糖を入れて呑む場合も多いが、あれは本場ではやらないのではないか。
日本酒を何故燗するようになったのかには諸説あるようだが、よく「酒に含まれるフーゼル油を飛ばすため」というのが定説化しているように思う。フーゼル油とは杉に含まれる油脂で、防腐効果があると言われる。なので酒は古来より杉樽に入れられた。樽酒の香り、というのはこのフーゼル油の香りであることが多い(多い、と書いたのはフーゼル油は米にも含まれ発酵段階で生じるとも言われるため、一概に杉=フーゼル油とも言えない)。これはいい香りなのだが頭痛を誘発すると言われ、それを揮発させるために温める、というのが一般的に言われている。
しかしこれは俗説であるらしい。というのは、フーゼル油の沸点は100℃を軽く超えていて、揮発させようと熱しても飛ばない。それより先にアルコールも水分も沸点を超えるので俗説だ、というわけ。冷酒より燗のほうが悪酔いしにくいと言われるのはフーゼル油のせいではなく、冷やは口当たりがよいのでつい呑み過ぎてしまう、というのが原因ではなかろうか。
じゃあ、何故日本酒は温めて呑むのだろう。
燗酒の起源は平安時代に遡るとも言われる。孫引きで申し訳ないが、ものの本によると藤原冬嗣(勧学院を建てた人ですな)が、寒い秋の行幸時に当時の嵯峨天皇に温めた酒を献上して暖をとってもらい、大いに面目を施したとか。それから始まったとされる。左大臣冬嗣がそういうアイディアを出したとは驚きだが、冬嗣は風流人であったのでこの話は面白い。しかしこれは文献上の初出で、それより以前からあったかもしれない。結局起源の決め手はないのだ。
一般的に燗酒が普及したのは江戸時代から、と言われる。そもそも酒自体が庶民に普及するのは大量生産が可能になった室町時代以降であろうし、ちょいと燗でもつけて…などと言えるようになるのはそりゃ平安時代からずいぶん時を経なければならなかっただろう。
しかし、これでは燗酒が普及した説明にはなっていない。フーゼル油が関係ないとすれば、ただ寒かったから温めた、だけが理由なのだろうか。
やっぱり僕は、「温めて呑んだら旨かった」から普及したのだろうと単純に考えたい。実際に燗酒は旨いのだ。特に寒い季節は。
呑んで暖まろう、という場合、燗酒は即効性がある。温かいと胃から早く浸透する、という説もある。冷たい酒であると吸収に時間がかかり、ようやく身体が暖まった頃には酩酊、ということもある。冷やは後から来る、冷やは悪酔いする、とはよく言ったものだ。
それに、冷やはのどごしはいいが、酒の味わいとなると温かい方が増すような気がする。香りも立つ。やはり旨いから普及したのだろう。こういう文化を持つ日本人でよかった、としみじみ思う。
ところで、困ったことに、居酒屋で燗酒を頼むと、「はーい、熱燗いっちょお♪」と注文を通されることが多い。おいおい、ワシは熱燗は頼んでないぞ、燗酒と言っておるだろうに!
この昨今の燗酒=熱燗、という図式には本当に困る。日本には「人肌」と言ういかにも艶めかしい表現もあるのに。なんでもかんでも熱燗では困るのだ。
この話をすると長くなるので、また次の機会にしたい。うーん。
ついでに過去記事の日本酒についての話。
吟醸酒の味わい
日本酒あれこれ
普通酒そして三増酒について
特定名称酒について
僕は暑い夏が大好きだけれども、何故暑い夏が好きかというと「服をたくさん着なくてもいい」ということに尽きるのであって、ズボラ以外に理由がない。
寒い冬は重ね着が面倒なので困るのだが、冬のいいところは「食べ物が美味くなる」ことだろう。鍋物が恋しくなり、魚に脂が乗り、そしてなにより僕の好きな「燗酒」のシーズン到来という素晴らしい季節でもあるのだ。重ね着くらいで冬を嫌ってはいけない。
燗酒。しかし僕は冬でなくても燗酒をよく呑む。居酒屋では一年中燗酒だ。ひとつには「手酌」という行為が好きだということがある。杯、もしくはぐい呑みに徳利を傾けて注ぐ楽しさ。ままごとの世界かもしれないがこれって酒呑みの一つの愉悦ではないかと思う。僕だけかな。
尚、手酌は好きだが人から酌をされるのはさほど好きではない。ペースというものもあるし、宴席では無理に注ごうとする輩も多いので困る。「まー呑め」「ささぐーっと」みんな相手を酔わせたいと思っているのだな。酒くらい自由に呑ませなさいよ。文士の手酌という言葉を知らないな(しかし妙齢の女性に酌される場合はこれを除く)。
まあ酌をしないと「失礼なヤツ」と思うおっちゃんも多いのでしょうがないけど。酌をされることで上下関係を確認しようとするこの日本の文化はなんとかならんかな。(しかし僕も仕事で呑まねばならないときはこの日本文化に倣って酌を繰り返す。激しく自己嫌悪に陥ります)
話がそれたが、燗酒。日本の基本的アルコールである日本酒というのみものは昔から温めて供する。世界的にも珍しいのではないかな。類似のものに中国の老酒がある。あれも温めることが多いが、本場中国ではどうなんだろう? ちゃんと調べてないのでまずいのだが、老酒を燗するのは日本発祥なのだと聞いたことがある。どうなのか調べないと。さらに、氷砂糖を入れて呑む場合も多いが、あれは本場ではやらないのではないか。
日本酒を何故燗するようになったのかには諸説あるようだが、よく「酒に含まれるフーゼル油を飛ばすため」というのが定説化しているように思う。フーゼル油とは杉に含まれる油脂で、防腐効果があると言われる。なので酒は古来より杉樽に入れられた。樽酒の香り、というのはこのフーゼル油の香りであることが多い(多い、と書いたのはフーゼル油は米にも含まれ発酵段階で生じるとも言われるため、一概に杉=フーゼル油とも言えない)。これはいい香りなのだが頭痛を誘発すると言われ、それを揮発させるために温める、というのが一般的に言われている。
しかしこれは俗説であるらしい。というのは、フーゼル油の沸点は100℃を軽く超えていて、揮発させようと熱しても飛ばない。それより先にアルコールも水分も沸点を超えるので俗説だ、というわけ。冷酒より燗のほうが悪酔いしにくいと言われるのはフーゼル油のせいではなく、冷やは口当たりがよいのでつい呑み過ぎてしまう、というのが原因ではなかろうか。
じゃあ、何故日本酒は温めて呑むのだろう。
燗酒の起源は平安時代に遡るとも言われる。孫引きで申し訳ないが、ものの本によると藤原冬嗣(勧学院を建てた人ですな)が、寒い秋の行幸時に当時の嵯峨天皇に温めた酒を献上して暖をとってもらい、大いに面目を施したとか。それから始まったとされる。左大臣冬嗣がそういうアイディアを出したとは驚きだが、冬嗣は風流人であったのでこの話は面白い。しかしこれは文献上の初出で、それより以前からあったかもしれない。結局起源の決め手はないのだ。
一般的に燗酒が普及したのは江戸時代から、と言われる。そもそも酒自体が庶民に普及するのは大量生産が可能になった室町時代以降であろうし、ちょいと燗でもつけて…などと言えるようになるのはそりゃ平安時代からずいぶん時を経なければならなかっただろう。
しかし、これでは燗酒が普及した説明にはなっていない。フーゼル油が関係ないとすれば、ただ寒かったから温めた、だけが理由なのだろうか。
やっぱり僕は、「温めて呑んだら旨かった」から普及したのだろうと単純に考えたい。実際に燗酒は旨いのだ。特に寒い季節は。
呑んで暖まろう、という場合、燗酒は即効性がある。温かいと胃から早く浸透する、という説もある。冷たい酒であると吸収に時間がかかり、ようやく身体が暖まった頃には酩酊、ということもある。冷やは後から来る、冷やは悪酔いする、とはよく言ったものだ。
それに、冷やはのどごしはいいが、酒の味わいとなると温かい方が増すような気がする。香りも立つ。やはり旨いから普及したのだろう。こういう文化を持つ日本人でよかった、としみじみ思う。
ところで、困ったことに、居酒屋で燗酒を頼むと、「はーい、熱燗いっちょお♪」と注文を通されることが多い。おいおい、ワシは熱燗は頼んでないぞ、燗酒と言っておるだろうに!
この昨今の燗酒=熱燗、という図式には本当に困る。日本には「人肌」と言ういかにも艶めかしい表現もあるのに。なんでもかんでも熱燗では困るのだ。
この話をすると長くなるので、また次の機会にしたい。うーん。
ついでに過去記事の日本酒についての話。
吟醸酒の味わい
日本酒あれこれ
普通酒そして三増酒について
特定名称酒について
美味しい梅干しがあったので…
でも、やっぱりダメでした。
鼻から来る香りに…ぐすん。
身体から暖まるつもりだったのですが
冷めてから氷を入れて飲みました。
やっぱりお子ちゃま?(猛爆)
あたたかいお酒は飲めないですが
人肌は好きです(笑)
いつか、一杯目だけお酌させて下さい。
あの頃の懐かしい話を
美味しいお酒を飲みながら話したいですね。
好きなんですよ。この仕事
仕事が嫌なんじゃないんです。
でも、寒い日は出かけたくなくなる。
おこたに入ってまったりしてたくなります。
暑いよりは寒い方が好きだし
脳みそも活発に動くのですが…
思いっきり愚痴ってしまいました。
ごめんなさい。
行ってきますm(_ _)m
しかし夜のお仕事はこの季節大変ですね(汗)。雪でももし降った日には車だと…。暖かくして出かけられていると思いますが、気をつけて下さいね。冷え切った身体にはホット・ウイスキーなんかが最適なのですが(お前は身体暖めるものはアルコールしか思い浮かばないのか? という声が聞こえて来そうな 笑)。