気分を晴らそうとして、道々ヘッドホンを耳につっこんでボリュームをあげてイキのいいギターロックを聴いてみるが、どうもしっくりこない。あれでもないこれでもないと選曲してるのもダルくなってヘッドホンを外したら、静かな住宅街の生活音と、鳥が方々から鳴く声が耳に入ってきた。東京の真ん中でも鳥の声って結構聴こえるんだな。そのまま耳を澄まして歩いていたら少しずつ平和な気持ちになってきた。わたしたちが感覚するのは「意味」である。環境音は、わたしたちの感覚器には入力されているはずだが、普段はそれに意味が付与されないために、ほとんど全く聴こえていない。ふと鳥の声が聴こえてくる、というのは、ヘッドホンを外すという物理的行為の結果ではなくて、わたしがそれに「意味」を付与した、ということの結果だ。世界が変わった、瞬間的に異なる世界が立ち現れたのだ。そりゃあんたの気のせいだ、世界は何も変わってないよ。どちらでもいい、今日の鳥の声はわたしにそんな世界のありようを感触させてくれたのだととりあえず書いておく。Perfect Angel / Minnie Riperton が今日の推薦盤。ミニー・リパートンといえば、本作に収録された「Lovin' You」。言わずと知れた大名曲だが、スタジオでのレコーディングはかなり難航したらしい。何度歌っても出来上がりがどうもしっくりこない。自宅で録音したデモテープのような雰囲気にならないのだ。なぜだろう、と考えるうちに、彼女が思い当たったのが、自宅でデモテープを再生している時にいつも聴こえていた鳥の声。スタジオで録音したものになかったのはそれだった。現在わたしたちが聴くことができる完成テイクに、ずっと鳥の声が入っているのは、そんな理由によるものなんだとか。この録音から5年後の1979年、彼女は癌のため31歳の若さで還らぬ人になったが、ここに聴かれる平和な「世界」の確かなプレゼンスは時代を超えて聴き継がれていくだろう。「Lovin' You」は、いろんな歌手がカヴァーしているけれど、そこにある「世界」までカヴァーできているものは私の知る限りでは存在しない。DJアレックス・パターソンがこのレコードをサンプリングして制作したアンビエント・ハウスのトラック「Huge Ever Growing Pulsating Brain That Rules From The Center Of The Ultraworld」(1999.9.22 日記参照)には、そのエッセンスが極大に拡大された形で聴こえてくるように思うので、もし興味があれば一聴を。
気分を晴らそうとして、道々ヘッドホンを耳につっこんでボリュームをあげてイキのいいギターロックを聴いてみるが、どうもしっくりこない。あれでもないこれでもないと選曲してるのもダルくなってヘッドホンを外したら、静かな住宅街の生活音と、鳥が方々から鳴く声が耳に入ってきた。東京の真ん中でも鳥の声って結構聴こえるんだな。そのまま耳を澄まして歩いていたら少しずつ平和な気持ちになってきた。わたしたちが感覚するのは「意味」である。環境音は、わたしたちの感覚器には入力されているはずだが、普段はそれに意味が付与されないために、ほとんど全く聴こえていない。ふと鳥の声が聴こえてくる、というのは、ヘッドホンを外すという物理的行為の結果ではなくて、わたしがそれに「意味」を付与した、ということの結果だ。世界が変わった、瞬間的に異なる世界が立ち現れたのだ。そりゃあんたの気のせいだ、世界は何も変わってないよ。どちらでもいい、今日の鳥の声はわたしにそんな世界のありようを感触させてくれたのだととりあえず書いておく。Perfect Angel / Minnie Riperton が今日の推薦盤。ミニー・リパートンといえば、本作に収録された「Lovin' You」。言わずと知れた大名曲だが、スタジオでのレコーディングはかなり難航したらしい。何度歌っても出来上がりがどうもしっくりこない。自宅で録音したデモテープのような雰囲気にならないのだ。なぜだろう、と考えるうちに、彼女が思い当たったのが、自宅でデモテープを再生している時にいつも聴こえていた鳥の声。スタジオで録音したものになかったのはそれだった。現在わたしたちが聴くことができる完成テイクに、ずっと鳥の声が入っているのは、そんな理由によるものなんだとか。この録音から5年後の1979年、彼女は癌のため31歳の若さで還らぬ人になったが、ここに聴かれる平和な「世界」の確かなプレゼンスは時代を超えて聴き継がれていくだろう。「Lovin' You」は、いろんな歌手がカヴァーしているけれど、そこにある「世界」までカヴァーできているものは私の知る限りでは存在しない。DJアレックス・パターソンがこのレコードをサンプリングして制作したアンビエント・ハウスのトラック「Huge Ever Growing Pulsating Brain That Rules From The Center Of The Ultraworld」(1999.9.22 日記参照)には、そのエッセンスが極大に拡大された形で聴こえてくるように思うので、もし興味があれば一聴を。