ひらつか日記

1999年に漫画家おかざき真里ホームページの連載コーナーとしてスタートした身辺雑記×音楽紹介日記です。

ペヨトル興亡史

2001年10月29日 | ジャズ
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ペヨトル興亡史(今野 裕一 著/冬弓舎)」を読む。「ペヨトル工房」という出版社を知っている、というとだいたい歳がわかる。30代中盤から40代の前半、つまりは80年代に大学時代を送った世代。「夜想」「銀星倶楽部」「WAVE」「EOS」「ur」…という雑誌名を並べただけで、わかる人にはわかるが、わかんない人には全くわかんない。おかざきの日記(2001年4月2日)を見るに、おかざき真里の本棚にもこれらの本が並んでいたことにまず間違いはない。わたしの本棚にもいまだにあるが(笑)。ものすごく乱暴にまとめると、80年代に先頭きって走ってたヒップなアングラ・サブカル出版社、ということになる。わたしの大学(文学部)時代の知人も就職しました。どんな本出してたかは、こちら、オンライン書店bk1の特設コーナーを。いやあ、こうしてみるとわたしなんかはひたすらに懐かしいが、あらためて新しい読者に薦めるようなものは正直いってそれほど多くないか(銀星倶楽部11号「テクノポップ」特集 は好きな人には大推薦)。今回の「興亡史」は、主宰者の今野氏が、ペヨトル工房を解散するにあたっての諸々を書き付けた本。これまで出してきた「奇書」の数々を懐かしむことではなくて、むしろ現在の「出版」をめぐる状況についての論考に比重が置かれていて、そこが最も興味深い。懐かしがるだけならただの80年代懐古本だが、そうではなくて、「出版」の今を語る現在の読み物になっているところがおもしろいのである。「出版」の今はあまり明るくない。というか暗い。コトは単純ではないが、誤解を恐れず単純に言えば、80年代までの「メジャー×マイナー」対向図式が崩壊、「超メジャーとそれ以外」になってごく少数の超メジャーだけが残る、という構図。音楽でいえば、500万枚以上か5000枚以下か、の択一ということになる。制作側の怠慢・流通の怠慢・買い手の怠慢が輻輳化、そこに市場競争原理を無制限に適用すれば、そりゃそうなるだろう。さて、みんなどうするんだろう、おれはもう知らないよ、と「ペヨトル興亡史」は問題をそのままボロっと投げ出してくる、そんな本になっている。今日の一枚は、こちら、 Because of You / Jos Van Beest Trio を。大阪に「澤野工房」というレーベルがあって、実はとある個人がひとりで立ち上げたもの。自分が本当に気に入った欧州ジャズの廃盤を手間ひまかけて復刻する、という地道な活動(権利関係の交渉からはじまって、CDをケースにいれたり包装したり、レコードショップに営業をかけたり…)が、いつしかジャズファンの熱烈な支持を集め、ショップによっては局地的に大手レーベルの盤を抜く売上をみせているという、なんともユニークな存在。口コミやネットを通じて評判が拡がって、従来のジャズファン以外の層にも少しづつ波及しているようで、ちょっとしたムーヴメントと言えるような動きになっている。わたしもこの盤を試しに買って、埋もれてしまった宝を掘り起こしてくるその慧眼にすっかり魅せられた。澤野さんの活動に痺れて、大企業を辞して澤野工房の営業マンに転身された方も出たときく。制作側・流通・買い手の熱意の幸福な一致、おそらく「超メジャー以外」が成立するとすれば、大変難しいがこれ以外の条件ではやはりありえないだろう。



ひとりでほうっておかれる

2001年10月24日 | ジャズ
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得意先からプロダクションへの移動の合間、いそぎで仕上げないといけない仕事があって、普段そういうこと外ではあんまりしないんだが、ノートパソコンを開いて作業をしようと、喫茶店にとびこんだ。座るなりオーダーを言い渡して、パソコンを開く。よしよしバッテリーはまだ大丈夫。ネットにつないで仕事開始。しばしの時間が経過、あれ、おかしいな、飲み物がこない。まあいいか、と水をのみのみタバコをくわえて、再度作業へ。15分経過。後から入ってきた隣のおばさんのミックスサンドがもう出ている。絶対おかしい。これは忘れられている。しかしながら閑散とした広い店内のはるか向こうでカウンターとくっちゃべりながらサボっている店員を呼ぶのもダルイ。インスタントメッセージングソフトでそのときログインしてた相手にこの状況をこぼしてみたりして。あーもういいや、仕事しちゃお。そうこうしてるうちに30分、仕事の区切りがついたところで、店員を呼んで事情を話して、そのまま外へ出る。最近、こういう気の回らない若い奴、増えてないか、と腹でもたててみようかと思ったが、もういいや。喫茶店で透明人間状態、結構仕事もはかどったし。こうしてひとりでほうっておかれるほうが、うるさい店よりは全然いい。 Guitar Solos / Fred Frith ギターマニアを、ひとりスタジオに閉じ込めてそのままほうっておいたら、出来ました、こんなアルバム、という風情。ヘンテコなコードをおさえてみたり、たたいたり、ひっかいたり、剃刀つかったり…と、ギター相手にひたすらひとり遊びが延々続く。これ聴いてて楽しいか、というとまあギリギリ当落線上というところか(笑)。でもほうっておかれてる当人は、ものすごく楽しいんだよな。


それで名前がエリってついた

2001年10月22日 | ロック・ポップス(欧米)
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以前の日記(2001/5/30)に書いたマーケティング関係の講義で、土日は受講生のみなさんと伊豆に合宿に行って来た。半年のカリキュラムの最終段階、という趣向で、夜は宴会、席上、受講生全員のメッセージが入った寄せ書きなんぞいただいて、ちょっと感激。ありがとうございました。何もいってないのに、この日記を見つけて読んでくださってる受講生の方もいらっしゃって何だか気恥ずかしいのだけれど、あらためて御礼を。宴席には、わたしの他に数名の講師がいらっしゃって、わたくしよりみなさんちょっとだけ(?笑)年長で、宴たけなわの頃、今日はおれギター持ってきた、と中のお一方がなかなか達者な年季の入った(失礼)演奏を開始。「うわ、そんな古い曲、喜んでるの講師陣だけだよ、若い受講生知らないよ」「ラルクとか弾かないとだめなんじゃないの」「知らないよそんなの」とやってるうちに落ち着いたのが、エリック・クラプトンとサザン・オールスターズだった。クラプトンは、 Layla / Derek & The Dominos から、もちろん「レイラ」ですね(笑)。これなら若い人も知ってます。サザンは「あたし『いとしのエリー』の年に産まれたんです。それで名前がエリってついた」という受講生がいて、講師陣一同絶句。いやはや歳とるはずですわ。