ひらつか日記

1999年に漫画家おかざき真里ホームページの連載コーナーとしてスタートした身辺雑記×音楽紹介日記です。

欲しい…

2004年12月09日 | クラシック
wand_brahms

最近、肌身離さず持ち歩いている「iPod」。もう、5,500曲くらいいれちゃったもんね。まだまだ10GB以上余ってる。これ、すごいよねえ。iTripも買ったので、FM波でとばして、ステレオセットで受ける環境も整備、そしたらCDの山に全く手を触れなくなってしまった。そんな話をしたら、「移動中はともかくとして、あんな音の悪いものでよく我慢できるねえ」と笑われた。正直に言うが、わたし、耳はあんまりよくない。自分では自覚がないが、人に言わせると、とにかく耳がお粗末らしい。そのせいか、オーディオ趣味も全く無いので、あんなに盛り上がって買ったヘッドホン(2000.06.19の日記)も、今では全く使ってない。iPodのデフォルトのエンコーディングレート&付属のイヤホンで全く不満がない、という幸せの沸点の低い男なんである(笑)。ところが先日、いつもお世話になっているとびちゃんが、こんなの買ったと「SHUREのヘッドホン」をきかせてくれた。耳の悪いわたしにわかるかなあ…と半ば心配しながら一聴、これは即座にのけぞった。ソースが自分のiPodなので、エンコードのレートは高くない、つまり元音はそんなによくない(らしい)のだが、このヘッドホンを差し込んだ瞬間、今まで聴いてた音が一変、ちょっと相当びっくりした。あれこれ試してみると、ロックやポップスではあんまりその差が引き立たないが、生楽器になるととたんに印象がかわる。あ、そうだ、こんなに変わるなら、あれを聴いてみよう…と、Brahms: Symphony No.3 / Gunter Wand, NDR-Symphony Orchestra の第三楽章をセレクト。ギュンター・ヴァントについては、以前書いたが(2002.02.15の日記)、この指揮者、演奏が並外れて精緻精巧、それは耳の悪いわたしが普通のオーディオで聴いてもわかるレベルだから相当なものだが、とはいえ、世のクラシック・オタクたちが半ば神格化するかのような大絶賛の大合唱状態なのには、ほんとにそこまですごいのかしらん…とちょっと眉唾でいたんであった。もしかして…と思いあたったのは、このヘッドホンで聴けば、ほんとにそこまですごいのかどうか、わたしにもわかるんじゃないかということ。有名な第三楽章の冒頭数十秒が流れてきて…えーと、すみません、ほんとにごめんなさい、降参です。ほんとにすごいです。世界遺産でした、すみません。数十秒で涙出てきました。あんまり長く試聴させてもらってるのもなんなので(構造上耳垢もついちゃうかもしれないしね)、そのまま数十秒で聴くのを中断、でも、これでヴァントのCDを全部聴きなおしてみたい…。うーん、高いけど、これはいい買い物になるな…欲しい…。


ホテルの部屋で

2004年12月01日 | ロック・ポップス(欧米)
boomers

今日は、先日の日記で書いたメディア環境研究所の合宿ということで、ホテルに宿泊中。合宿…といっても、打合せのために缶詰になる…ということなので、場所は都内のビジネスホテル(笑)。オフィスから徒歩数分の場所で、一見あんまり意味がなさそうだが、ずっとホテルの中にいると、そのうち都内にいる感覚が消えてきて、何とはなしに旅情のようなものが沸いてくるから不思議なもの。朝も早いし、こんなときくらい早く眠ればよさそうなもんだが、ホテルでついつい夜更かし。はしゃぎすぎか(笑)。旅情…なんて書いてるが、わたし、旅が好きなわけではない。っていうか、むしろ旅は苦手、もっというとキライである。旅でなくても、ちょっとしたお出かけというのでもぐずぐず気がすすまない。どこにもいかずに部屋でごろごろしてるのが好き。土日なんか、早く起きられたためしがない。だいたい夕方まで布団の中。仕事以外の私生活、人からみたら、何が楽しくて生きてるんだろう…というくらい怠惰なんである。そういうことでいうと、旅のパーツの中で、唯一好きだといえるのはホテルの部屋の中。ひたすら怠惰にすごせるのがいい。持ってきた「iPod」を耳につっこんで、ずっと音楽を聴く。Boomer's Story / Ry Cooder。うーん。しびれる。邦題は「流れ者の物語」。アメリカ大陸をさすらう放浪者のイメージを唄ったアルバム。ひたすらに自由だが、軋むギターの旋律で奏でられる孤独と郷愁、独特の乾いた抒情にしびれる。男の旅、ここに極まれりである。海水浴もしたことないのにビーチ・ボーイズ聴いて夏を思ったり(2004/7/24の日記)、旅もしないのにこんなの聴いてしびれたり、とんだバーチャル野郎だな、オレ(笑)。60年代生まれじゃなくて、最近の生まれだったら、もしかするとひきこもりの流行に便乗してたかもしれないな、と思うことがないでもない。眠くなってきた。この盤の、白眉はLP時代のB面冒頭、CDだと6曲目の「Dark End of The Street」。アメリカの広大な大地にどこまでも続く道、空にはコンドルが飛んでいく。そんなところに行く気もないくせに(笑)、仮想イメージの中で、わたしは目を細めて遠く地平線を見やるのであった。

推薦blog:ポールトーマスアンダーソン的CD