ひらつか日記

1999年に漫画家おかざき真里ホームページの連載コーナーとしてスタートした身辺雑記×音楽紹介日記です。

シベリウス/宮沢賢治

2000年03月20日 | クラシック
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日曜の明け方、突然の嘔吐で大変苦しい思いをした。同じ物を食したうちの奥さんは全く平気だったから、たぶん、わたしの体力の問題だと思う。ちょっと無理が続いていたから、おそらく身体が参っていたのだろう。養生しなければ…といってる端から、今日も休日出勤である。こわれないようにしないとね。そうそう、こわれたといえば、先週の金曜の朝、自宅に帰ってみたら、居間のステレオがとうとうこわれていた。縦置きの、CDを正面からはめ込むタイプのものなのだが、激しい機械的擦過音を出してCD盤が逆回転(笑)、完全にお釈迦だ。といっても突然壊れたわけではない。7年前に買って、すぐに調子がおかしくなり、その後、だましだまし使ってきたのだけれど、次第次第に段階的に壊れてきていたのだった。CDを入れたあと、押さえ蓋が閉まらない、再生中に突然蓋があいて止まる、微妙なタイミングをあわせないとリモコンが効かない、等など、ここ数年はうちの奥さんでは音を出せないという状況にまできていた。ぼくが操作しないと鳴らないところまできていたそいつは、その朝、とうとう、ぼくがやっても鳴らなくなってしまった。どうせ朝まで仕事して朝に帰って寝るだけなんでしょ、いつ聴くの、というのもあるのだが、暖房をつけて、部屋があたたまるのを待って、着替えて、コンビニのおにぎりを食べて、と早朝のほんの少しの時間、ごくごく絞った音量で、静かに音楽を鳴らしてくれるそいつは、ぼくにとってはとても大切な存在だったのである。段階的な壊れかたも、今にして思えばチャーミングだった。車(ぼくは乗らないが)でいうと、国産車の壊れかたじゃなくて、手間のかかる欧州車といったところか。そうそう、そいつは北欧の出だったのだ。敬意を表して、今日は北欧の作曲家の盤をご紹介。Sibelius: Symphonies 4 & 6 / Paavo Berglund, CO of Europe 。20世紀を代表する交響曲作家ジャン・シベリウスの音楽は、彼の国、フィンランドの自然が色濃く影を落としているように聴こえる。ぼくはフィンランドに行ったことがないので、ただただ、彼の音楽から受けるイメージでしかないのだが。憂鬱な白夜、奥深い森、暗く澄んで流れる河。しかし、不思議なことに、かくもローカルなイメージを基盤においているのにもかかわらず、その響きは同時にコスモポリタンでもある。このシベリウスという作家、「人間は森の中か、さもなくば大都会にすむべきである」と言っていて、その真意のほどはよくわからないけれど、そのあたりの感覚に秘密がありそうだ。最近、薦めてくれる人があって、宮沢賢治を読んだのだけれど、あの人もとても不思議なものを書いていて、その感じは、このシベリウスに近いものだと思った。