荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ミッシングID』 ジョン・シングルトン

2012-07-01 06:49:07 | 映画
 自分の現在生きつつある生が、いつかは醒める陳腐な白日夢であるという実感を、『ボーイズ'ン・ザ・フッド』『ワイルド・スピードX2』の黒人監督ジョン・シングルトンがその新作『ミッシングID』で改めてはっきりと示した。本作は、「『ボーン・アイデンティティ』シリーズの製作陣が放つサスペンス・アクション」という売り文句で公開中であるが、主演は『トワイライト』シリーズのテイラー・ロートナーであり、『ボーン』と『トワイライト』を合併させたらさぞかし受けるだろうという、随分と簡単なレシピではある。
 本作のロケ隊は一時的に郊外に遠征するものの、基本的に米中西部の工業都市ピッツバーグのご当地映画となっている。MLBパイレーツの本拠地球場で大団円を迎えるが、『知りすぎていた男』(1956)の例を待つまでもなく、衆人環視の中でこそ完全犯罪が成り立つというコノテーションに、主人公も敵方スパイも重々承知の上でゲームの俎上に載っている。
 主人公の幼なじみを演じるイギリスの新進女優リリー・コリンズは、9月公開の『白雪姫と鏡の女王』の予告編でも再び見ることができるが、あの極太の眉毛は誰もが一度見たら忘れられない強烈な印象をもたらす。映画そのものが彼女の太眉に吸い込まれそうだ。本人曰く「チャームポイントだから絶対に剃らない」とのこと。これには異存なし。しかも、なんと彼女はフィル・コリンズの娘なのである。幸い父にはそれほど似てはいないものの、その強力な事実を前にするとやはり、あの丸顔薄毛の元ジェネシスのドラマー兼ボーカリスト(昨年に引退したらしい)の顔がちらついてしかたがないのは人情だ。


丸の内ピカデリー(東京・有楽町マリオン)ほか、全国で上映中
http://missing-id.gaga.ne.jp/


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