
テレビ放映にて、ハワード・ホークス『永遠の戦場』(1936)を初見。ウィリアム・フォークナーが共同で脚本を書き、名手グレッグ・トーランドが撮影を担当、第一次世界大戦のフランス戦線を描く戦争映画だが、発見は、ジューン・ラング(1917-2005)という女優が放つ、腺病質の美しさである。フレデリック・マーチ演じる大尉、ワーナー・バクスター演じる中尉という2人の男からの愛を受け止めつつ揺れる野戦病院のナースを演じている。私がこのコケティッシュな女優を見たのは、たぶん初めてだと思う。彼女は1930年代にフランク・ボーゼージ、ジョン・フォード、ヨーエ・マイといった著名監督の初期トーキー作品に散発的に登場するものの、『永遠の戦場』の前年には、ザナックと合併したばかりのフォックス社から専属契約を更新してもらえなかったりと、思うような活躍はできなかった。『永遠の戦場』以降は、B級映画におけるヒロインの妹や親友といった二番手での出演が、大半を占めるようになっていくようである。
『永遠の戦場』製作当時、ジューン・ラングは19歳に過ぎないが、ややファニー・フェイスながら少女の面影はすでにない。完成されたビューティ・ブロンドとして登場し、士官の部屋に夜な夜な忍び込む。ハリウッドでは、かえって容貌の完成度が仇になることもあるのだろう。第二次大戦後はさらに地位を下げ、写真モデルやテレビの端役をこなしながら、ハリウッドの片隅でひっそりと暮らし、女手ひとつで一人娘を育て上げたようである。5年前に88歳で死去。
2009年2月にスイユ社から出たばかりのロラン・バルト『喪の日記』が、早くも邦訳刊行された(みすず書房)。翻訳家たちの完璧主義とやらが災いしているのだろうか、世の中には、何年十何年と訳者の書斎で居眠りを続ける洋書が多いというのに、今回の早期刊行は非常に喜ばしいことである。
横浜・若葉町のシネマ・ジャック&ベティで、1月23日から29日まで特集上映《未来の巨匠たち》が催される。日替わりで瀬田なつき、加藤直輝、桝井孝則、唐津正樹、桃まつり、小出豊、佐藤央、三宅唄、濱口竜介の新作・旧作が上映されるばかりでなく、彼ら新進作家たちにとっての「この1本」という名目で『赤線玉の井 ぬけられます』や『ヒズ・ガール・フライデー』などが上映され、ゲストも交えたトークショーも毎日行われるようだ。








