『ユキとニナ』は、自主映画時代をのぞけば諏訪敦彦作品史上もっとも開放的な作品で、これは、『2/デュオ』(1997)以来のあの独特なこわばりが孕む何かが、断念されてしまった結果なのではないかと、思わず心配になってしまうほどだ。
物語は、相米慎二の『お引越し』(1993)とそっくりで、幼い少女の両親が、離婚を前提に別居を決意する。少女は両親の仲を取り持とうとするも、ことごとく失敗に終わり、やがて彼女自身のなかの孤独な魂が彷徨をはじめる、といった展開である。
諏訪敦彦とフランスの俳優イポリット・ジラルドの共同監督作品ということで、複数の目線が、重ね折に導入され、作品全体の風通しが非常によい。パリ市内のアパルトマン、舗道、そして薄暮の森へと、小さな世界だけにカメラは向けられているが、それを映し出そうとする2人の監督の心の広がりは、時空間をまたぐスケールを持っている。だから、不幸な物語であるかも知れないのに、それを見つめる私たち観客の心は、どんどん澄み渡っていく。ただし、フランス・ロケ部分の充実にくらべて、日本ロケ部分の力がやや弱い。
ジャック・リヴェットの常連スタッフだったマニュ・ド・ショヴィニが、美術を担当している。あの可愛らしいちゃぶ台も、ド・ショヴィニの見立てなのだろうか。
恵比寿ガーデンシネマ他にて、全国順次公開
http://www.bitters.co.jp/yukinina/
物語は、相米慎二の『お引越し』(1993)とそっくりで、幼い少女の両親が、離婚を前提に別居を決意する。少女は両親の仲を取り持とうとするも、ことごとく失敗に終わり、やがて彼女自身のなかの孤独な魂が彷徨をはじめる、といった展開である。
諏訪敦彦とフランスの俳優イポリット・ジラルドの共同監督作品ということで、複数の目線が、重ね折に導入され、作品全体の風通しが非常によい。パリ市内のアパルトマン、舗道、そして薄暮の森へと、小さな世界だけにカメラは向けられているが、それを映し出そうとする2人の監督の心の広がりは、時空間をまたぐスケールを持っている。だから、不幸な物語であるかも知れないのに、それを見つめる私たち観客の心は、どんどん澄み渡っていく。ただし、フランス・ロケ部分の充実にくらべて、日本ロケ部分の力がやや弱い。
ジャック・リヴェットの常連スタッフだったマニュ・ド・ショヴィニが、美術を担当している。あの可愛らしいちゃぶ台も、ド・ショヴィニの見立てなのだろうか。
恵比寿ガーデンシネマ他にて、全国順次公開
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