さあ~てと 帯しめましょか。

人生、山あり谷あり
向かうはわが身の置き場所よ。
帯締め、気を染め、往きましょか・・・  ~part 2~   

御所ことばの「さま」

2009年05月26日 20時10分00秒 | 本・言葉・古文書/草書 

井之口有一・堀井令以知著 『御所ことば』のなかの

「御所ことば語彙(ごい)集」に、「さま」のつくことばが四つだけ

記載されているらしいです。

この語彙集は、宮中女官や尼門跡で現用されている御所ことば、

ならびに従来の御所ことば文献に出ているものを合わせて、

1394語を集成したものだそうです。

 

 おしもさま

     御下様。

     命婦(みょうぶ)・女蔵人(にょくろうど)・御差(おさし)などの

      下級女官の総称。

     話しことば。

 

 おそもうじさま

     「あなた」の敬称。

     「おまえさん」「そなたさん」より身分の低い人にいう。

     話しことば。

 

 さま

     陛下には「様」(たてざま)、上達部以上には「丸さま」

     (様のくずし字)、それ以下にはかな書きの「さま」と、

     身分による区別が行われていた時代もあるが、万治ごろ

     には草体をよしとする風があり、そのころの大聖寺日記

     にも丸様を専用した。

     書きことば(手紙・日記などの文書を書くとき)

 

 おさわりさま

     お障り、支障の尊敬語。

     例)折からお障りさまもおはしまさで(明治時代の大聖寺お文)。

     陛下に対しては、「おささわりさま」「おもうしぶんさま」を使う。

     書きことば。

 

 

 

宮中女官の話しことばとしては、天皇を「禁中さん」、皇后を「皇后さん」

と呼びながら、普通、書きことばでは丁寧になることは今も昔も同じ

ようで、相手によって書きわけてはいるものの「さま」が使われていた。

 

では、なぜ奇妙な逆転現象が起こったのでしょう。

庶民からみれば、禁中や公家の人々は、すべて雲の上の人であり、

すべて「さま」を付けて敬意を表すべきなのだが、同じ雲の上で暮らす

人々の仲間うちでは、身内意識や仲間意識があり、天皇といえども

仲間うちの長老ぐらいの意識だったのではないでしょうか。

仲間・身内としての親しみを込めた「さん」で呼ぶことにより、自らも

雲上人であるという特権意識を強めていたと考えられます。

 

また、御所ことばで、下級女官が「さま」つけで呼ばれたのは、

一種の蔑称として差別的に使っていたものと理解すれば納得がいく

と著者は言っています。

そういえば、京ことばにははんなりと優しい中にちょっと“イケズ”

(皮肉った言い方?)を、楽しんで言うような言葉回しがあると

『イケズの構造』という本でちらっと見た気がします。

 

上方に於いては、御所ことばのような逆転する言い方はしません

でしたが、「さま」「さん」の下層に、「はん」「やん」「つあん」を

継ぎ足していったようです。

大地主は「さま」、自作兼 小作農は「さん」、小作農は「つあん」、

外から移住してきた日雇農は「やん」というようにです。

 

 

 

 

 『ごきげんよう 挨拶ことばの起源と変遷』:参照

 小林多計士:著

 

- 御所ことば(2)-

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