前回森見の本を借りてきたときこの本も借りていた。しかし『夜は短し歩けよ乙女』は何とか読み終わったが、次に読み始めたタヌキを主人公にした『有頂天家族』が途中で挫折した。それでこれも読まずに返した。しかし、今年度の本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の著者宮島美奈があるインタビューで答えている。「小説を書き始めたのは同じ京大出身の森見登美彦の『夜行』を読んだことに触発されたから」と。そこまで影響力を持った小説なら読んでみようとまた借りてきたのだ。
大学のサークルのメンバーで鞍馬の夜祭を見に行った時、メンバーの一人長谷川さんが消えてしまった。そして十年が経ち、大島はまた鞍馬の火祭を口実に当時のメンバーに招集をかけた。集まったメンバーがこの十年の間のことを次々と物語る。この話がなぜか不思議な体験談で、どこかに失踪した長谷川さんらしき人物が登場する。
全体の構成や導き方が少し荒っぽい印象はあるが、前に読んだ二作に比べ、力を込めて書いている感じがある。伏線として全体をリードしてゆく銅版画家の岸田道生の作品群「夜行 尾道」をスタートに48の連作がある。最後に謎解きもかねて、別に「燭光 尾道」というシリーズが出てくる。大橋の十年の裏側で別の十年の時が流れていて、一時大橋がその別の十年の世界を垣間見る。青年時代の十年は目まぐるしく過ぎてしまうもので、気が付いたときに何か失ってしまったような気になるものだ。これは面白かった。森見は私の読書予定から除外されていたがもう一度復活させてみたいと考えるようになった。
フラワーパークとガーデンパークをはしごした。
フラワーパークではこれから始まるつつじのシーズンの幕を開けるミツバツツジの満開前を初めて見ることができた。
ガーデンパークの旧モネの家の前庭のフジ。