二銭銅貨

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サロメ/新国立劇場11-12

2011-10-30 | オペラ
サロメ/新国立劇場11-12

作曲:R.シュトラウス、演出:アウグスト・エファーディング
指揮:ラルフ・ヴァイケルト、演奏:東京フィル
出演:サロメ:エリカ・ズンネガルド
   ヘロデ:スコット・マックアリスター
   ヘロディアス:ハンナ・シュヴァルツ
   ヨハナーン:ジョン・ヴェーグナー

狂気が劇全体を支配して、様々な登場人物が舞台上をのたうち廻っている。その精神のうごめきは気持ち悪く、舞台上を揺れ動く。ただ演奏だけが正気で、美しい強い音楽が奏でられる。この狂気と美しい音とのアンサンブルにはどうしても違和感がある。狂気を演出しているその音楽に狂気が感じられず美しい。美術はワインレッドがモチーフで、それがセットや衣裳に多用されている。血の色、欲望の色、狂気の色。銀の大きな皿の血しぶきにもそれが鮮明。狂気なのは舞台だけではなく、もしかしたら観客席にもそれが満ちているのかも知れない。もしかしたら、それは劇場の外にも充満しているのかも知れない。

R.シュトラウスって、お茶目で面白い人だと思う。

舞台設定の故か舞台空間に声が反響しているように聞こえて声量がすこし小さく感じたが、その声は管楽器のような音質にも聞こえ、それはこの曲に合っていたかも知れない。特にヨハナーンの地底からの声は舞台裏からの声で無く、本当に地底からの響きのように聞こえてその低いやや小さめの声がオーケストラに良くアンサンブルして効果的だった。演奏は豪華で、打楽器の強烈な打撃や、管楽器の重低音や、弦楽器他のきらびやかな音が美しかった。

ズンネガルドは強いソプラノで、踊りも自分自身で踊り、かなり動きの多い振り付けを、最後のやや過激な部分までこなした。シュヴァルツは安定したメゾで一番声量があって、女王の怒りが良く表現されていた。マックアリスターは手堅い感じ、ヴェーグナーは迫力のある流麗な声だった。

当初予定されたいた尾高芸術監督の指揮は、健康上の理由(多分、首の故障)のため変更。ヘロデ役のクリスティアン・フランツはスコット・マックアリスターに変更。
 
11.10.22 新国立劇場
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11国立劇場10月/開幕驚奇復讐譚/歌舞伎

2011-10-24 | 歌舞伎・文楽
11国立劇場10月/開幕驚奇復讐譚/歌舞伎

開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり)

新田貞方討死の場
箱根賽の河原の場
底倉温泉藤白家浴館の場
六媛仙境の場
上多気宿街道筋の場
同、旅籠屋の場
同、店先の場
飼坂峠の場
千剣破村木綿張荷二郎内の場
北山殿金閣の場

菊五郎、時蔵、松緑、菊之助、梅枝

空中でグルグル回るのは菊之助、宙を舞って踊る。松緑は落ち着いていて、いつも通りの安定した芝居。強靭で締まっている。梅枝が若侍でういういしく新鮮、研ぎたての切れ味。時蔵は老練な芝居でしぶい。菊五郎は元気良くおもしろい。親分役が良く似合う。貫禄。

舞台の出だしは現代的な演出。六媛仙境の場では縦長な矩形の大きな箱を何本も林立させ、そこに照明と薄い煙で幽玄な雰囲気を作り出していた。デザインはあくまでも幾何学的で、その箱の上に役者が乗る。箱の表面は幾筋もの銀の紐のようなもので出来ていたが、少しムラのあるような、汚れているような作りで、もう少し金属的で無機質的な、クリーンでちり一つなような均一な作りの方が良いように思った。デザインの構想やデザインそのものは大変に印象深かった。音曲には録音かあるいはマイクが使われていた。中盤が世話物風。最後が時代風で終わる。

六媛仙境の場での菊五郎の衣裳がレディガガのイメージを転用したものだそうで、音楽もそれらしいものを用いていた。女子サッカーのユニフォームをデザインに使った衣裳で、宿屋の仲居さん達がそれらしい名前で3人出て来る趣向もあった。

元気が出る楽しい歌舞伎。

11.10.16 国立劇場
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フィガロの結婚/国立音大2011

2011-10-23 | オペラ
フィガロの結婚/国立音大2011

作曲:モーツァルト、演出:中村敬一
指揮:現田茂夫、演奏:国立音大オーケストラ
出演:伯爵:清水勇磨、ケルビーノ:箕浦綾乃
   伯爵夫人(2幕):城佑里
   伯爵夫人(3、4幕):今野絵理香
   フィガロ:吉川健一、スザンナ:金子響
   バルトロ:大川博、マルチェリーナ:藤長静佳
   バルバリーナ:古沢綾乃、バジーリオ:越智優海

スザンナの金子響のレチタティーボは抑揚が少なくて普通のセリフに近い感じだったが、重唱やアリアではキレの良い高い音が良く聞こえた。声量は若干少なめだが綺麗な強い高い音だった。手紙の2重唱はやや低い音の今野と良くアンサンブルして美しかった。芝居は元気良く溌剌として楽しそうで、ういういしい。

ケルビーノの箕浦は美しいお嬢様な印象だったが、一所懸命にズボン役にチャレンジしていた。2幕目の伯爵夫人は城で、1個目のアリアは高い音で切々と歌われて良かった。3幕4幕目の今野はやや低い音で落ち着いた印象だった。バルバリーナの古沢は元気良く活発で、舞台のあちこちで熱心に芝居をしている姿が見られた。バルトロの大川とマルチェリーナの藤長は共に落ち着いた歌と芝居で上手な歌手だと思った。フィガロの吉川は、立ち上がりの「もう飛ぶまいぞこの蝶々」はイマイチかと思ったが、だんだん調子が出て来て終幕でのアリアには迫力があった。伯爵の清水は最初から飛ばしている感じで、ドスコイどんと来いっていう感じ。劇の重しになっていた。

終幕でのバルバリーナの24番のカヴァティーナに続いて、25番のマルチェリーナのアリアと26番のバジーリオのアリアがカットされずに上演された。マルチェリーナのアリアはしっかり安定した感じで歌われたが、最後の方の歌詞なしの「あー」だけで音程が素早く上下する部分が大変そうだった。このアリアはアジリタや広域の音程が必要となる難しい歌らしい。

伯爵夫人役だった尾形志織は体調不良で、翌日出演予定の2人に代わった。

11.10.15 国立音大講堂大ホール
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ファルスタッフ/昭和音大2011

2011-10-16 | オペラ
ファルスタッフ/昭和音大2011

作曲:モーツァルト、演出:マルコ・ガンディーニ
指揮:松下京介、演奏:昭和音楽大学管弦楽団
出演:ファルスタッフ:三浦克次、フォード:上野裕之
   アリーチェ:納富景子、クイックリー:本多直美
   ナンネッタ:伊倉睦実、フェントン:江口浩平
 カイウス:新後閑大介、メグ:田中千晶
 バルドルフォ:高嶋康晴、ピストーラ:佐々木典

上野は輝かしく良く響くバリトン。2幕目で強烈な怒りのアリアを歌って大きな拍手をもらっていた。三浦は手馴れた感じのファルスタッフで、大きな芝居と歌。芝居全体を大きく見せていた。余裕のある感じで、歌っている最中に、多分滑って転んだらしい所があったが、余裕で歌い続けて大過なかった。本多のクイックリーも余裕を感じさせる歌と芝居で、特に低い音が安定していた。頼もしい感じで印象に残るメゾだった。ほぼ、このクイックリーとファルスタッフが芝居の芯だったように思う。納富も安定したソプラノで、低い音が良く出ていた。地味だけどしっかりしている印象だった。田中のメグはメゾのはずだが、高い音の方が良く出ているように思えて、納富のソプラノと田中のメゾが逆のように感じてしまった。伊倉は繊細で軽いソプラノ。3幕目のアリアでは拍手が出ていた。新後閑は出だしを担当。快速に飛ばしてこの劇の景気付けに成功した。

演奏は締まった感じ。ヴェルディの迫力が良く出ていた。全体のバランスも良かったように思う。学部生主体のオケ。ヴェルディの故か管楽器が良いと感じた。合唱は3幕目のナンネッタのアリアの所でのコーラスが強く優しく美しく、アリアと共に拍手を受けていた。

演出はオーソドックス。大掛かりな仕掛けを使えない制約の中で工夫をし、メリハリをつけて良い舞台を作っていた。2枚のスクリーンを上げ下げすることで場面転換を早くしていた。最後の幕で、太い木を数本天井から下げて、上部をスクリーンで隠す形で森を表現していた。この木がゆらゆら微かに揺れて、それがちょっと幻想的で面白かった。衣裳ではクイックリーの紫が鮮烈で印象的だった。

ワイワイ、がやがや忙しいオペラでアンサンブルが難しそうだったけれども、みんな頑張っていた。

11.10.09 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
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イル・トロヴァトーレ/新国立劇場11-12

2011-10-15 | オペラ
イル・トロヴァトーレ/新国立劇場11-12

作曲:ヴェルディ、演出:ウルリッヒ・ペータース
指揮:ピエトロ・リッツォ、演奏:東京フィル
出演:レオノーラ:タマール・イヴェーリ
   マンリーコ:ヴァルテル・フラッカーロ
   ルーナ伯:ヴィットリオ・ヴィテッリ
   アズチェーナ:アンドレア・ウルブリッヒ
   フェルランド:妻屋秀和
   イネス:小野和歌子

イヴェーリは安定した美しい声。コーラスと一緒の時も声が良く出ていて、ベルディの曲のフォルテに負けない十分な声量があった。出だしから好調で、柔らかい布地のような優しい歌い方だった。フラッカーロは美しいテノールで力強く、ヴィテッリは迫力のあるバリトンだった。アズチェーナのウルブリッヒは素直な感じのメゾで低音が安定して強く、アズチェーナに向いた歌手だった。魔女っぽい感じはあまり出ていなかったが、歌声は美しかった。特に、最後の幕で寝入る前に歌う、レオノーラとマンリーコとの2重唱、3重唱が美しかった。妻屋は素直なバリトンなので、ちょっと将校というよりは、上級下士官の感じ。

演奏は管楽器の音が良く、ベルディらしい強さと迫力を感じた。てきぱきしてキレも良かった。鍛冶屋の合唱(アンビル・コーラス)ではかなり高音の金属音が使われた。

演出はデューラーの「騎士と死と悪魔」から想を得たという長髪の老騎士が子供を連れて各場面に表れ、様々な芝居をするというものだった。死神による現世の支配という雰囲気がモチーフのようだった。全体に古代とSFが入り混じったTVゲームRPG風の美術、衣裳だった。レオノーラの出だしの豪華なドレスが渋くて美しかった。

震災の影響での初期の段階での出演者変更があったが、それに加えて稽古開始後に体調不良となったタケシャ・メシェ・キザールがタマール・イヴェーリへ変更となった。
    
11.10.08 新国立劇場
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