二銭銅貨

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よさこい節/新国立劇場(日本オペラ振興会)2017

2017-03-25 | オペラ
よさこい節/新国立劇場(日本オペラ振興会)2017

作曲:原嘉壽子、指揮:田中祐子、演出:岩田達宗
美術:二村周作、衣裳:半田悦子
演奏:東京ニューシティ管弦楽団
出演:お馬:佐藤美枝子、純信:泉良平、慶全:所谷直生

有名な「土佐の高知のはりやま橋で、坊さん簪、買うを見た...」は実際にあった純信とお馬の恋愛スキャンダルを、よさこいの替歌の1つにしたもので、このオペラはこの話をもとにして作られた土佐文雄の小説「純信お馬」が原作である。

舞台中央に五角形の大きな台を配置してその周りを色々と変化させて各場面を作り出していた。塔婆を2、3本立てかけられる柵が4~5台あって、これを自在に動かしていた。

男声2人は一音一音区切るように歯切れよく発生して聞き取り易かったが、その分歌がレティタティーボのようになってしまう。一方でソプラノは流れるように歌うメロディーで、これを強烈に発声する西洋式なので歌詞がいまいち聞き取りにくいし、やや日本語っぽくない感じもする。よさこい関連のメロディーはあちこちで聞かれるが、こちらは日本語として違和感は無いし、また滑らかに歌われる。

佐藤は前半は大人しくしていたものの、後半は「お馬」の声が天にも届けと強烈にさく裂していた。泉は堂々として地面に響くような声。所谷は声量豊かで地面に突き刺さるような強い声。

演奏は元気がよくてドラマティックまたはダイナミック。

17.03.04 新国立劇場、中劇場
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コジ・ファン・トゥッテ/新国立劇場オペラ研修所公演2017

2017-03-19 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ/新国立劇場オペラ研修所公演2017

作曲:モーツァルト
指揮:高関健、演出:粟國淳
装置:横田あつみ、衣裳(コーディネーター):加藤寿子
演奏:芸大フィル
出演:フィオルディリージ:宮地江奈、フェルランド:水野優
   ドラベッラ:小林紗季子、グリエルモ:大野浩司
   デスピーナ:竹村真実、アルフォンソ:氷見健一郎

モーツァルト直筆の楽譜を思わせる手書きの楽譜の上に題名と人物の絵を重ねた薄茶のスクリーンを全面に配した箱型の舞台装置を使っていた。この楽譜のスクリーンが上に上がって箱の中が見られるようになっている。そこにはさらに透過型のスクリーンが配されていて、照明により自在に中の光景を遮断できるようになっていた。箱の外の舞台前面も、庭などの場面用に使われていた。

宮地と竹村は強いソプラノ。小林は9期修了生だが、終了生の高橋が体調不良で出演できなかったために賛助出演したメゾで、低い声が安定している強い声。芝居はゆったりおっとりした感じ。大野は迫力ある強いバリトン。氷見は堂々としたバスで、芝居と声に余裕があって良かった。芝居全体の押さえになっていた。水野は端正な感じのテノール。男性2重唱、3重唱が良く、最初の出だしがこの重唱で構成されていることが良く分かったし、この部分はいつもより時間が短く感じられた。大野と水野の2重唱は、芝居全体でも、声の質と強さが良く揃って美しく展開された。

演奏はしっかりとして歌手とのアンサンブルが安定していた。チェンバロは河原で、何かコミカルな音、デスピーナがホットチョコをかき混ぜる音などが良く聞こえて面白かった。

合唱は芸大他の学生。

17.02.26 新国立劇場、中劇場
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17六本木歌舞伎/座頭市/歌舞伎

2017-03-18 | 歌舞伎・文楽
17六本木歌舞伎/座頭市/歌舞伎

座頭市

脚本:リリー・フランキー、演出:三池崇史
出演:座頭市:海老蔵、薄霧、おすず:寺島しのぶ、
   右團次:風賀清志郎

見た目には歌舞伎っぽくはないものの、随所に歌舞伎の荒事のような演出があって、伝統的な歌舞伎の現代版とも思えた。ストーリーはほとんど無く、様々なものを混ぜこぜにしたちらし寿司のような造り。座頭市の映画からの引用、剣劇、ぬえと戦うケレン、時事ネタや楽屋オチ、休憩時間にはロビーに俳優が現れたり客席と海老蔵が会話したりなどの観客との交流、にらみ、見得、花魁道中、舞踊、大向、しのぶのカラオケなどなど。

海老蔵は声にすこし貫禄が出た。軽く飛び回るような芝居だ。3回ほどある剣劇が良い。日本映画の伝統に歌舞伎の舞踏が添加されて、本作で唯一緊張感のある清々しい舞台となった。

しのぶには要所要所で音羽屋の声。二階で海老蔵に襲いかかるアドリブのシーン以外はわき役に徹しているように見えた。盲目の少女と花魁の数回にわたる早替わりが見せ場。

右團次はやや気持ちの悪い片腕の風来坊役。ちょっと難しいところを頑張っていた。

文菊堂とかいうジャーナリストが出て来て、裏で悪事を働きながら正義ずらしてスキャンダルをものにしている。市がこれをたたっ切って「正義面するんじゃあねえよ」とかいう。

17.2.19 EXシアター六本木
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トスカ/東京文化会館(二期会)2017

2017-03-11 | オペラ
トスカ/東京文化会館(二期会)2017

作曲:プッチーニ、指揮: ダニエーレ・ルスティオーニ
演出:アレッサンドロ・タレヴィ
美術・衣裳:アドルフ・ホーエンシュタイン
演奏:東京都交響楽団
出演:トスカ:木下美穂子、カヴァラドッシ:樋口達哉
   スカルピア:今井俊輔

Va, Tosca.... Va, Tosca....
ゆっくりうねるように、
スカルピアの声に合わせて
テデウムが始まる。
ゆっくりうねるように、
重層する声の中に、
陰惨な思想がはびこり、増殖し、拡散していく。
宗教的なきらびやかな色彩の中に
冷酷さが姿を現し、また隠れる。
スカルピアの声、スカルピアの声、スカルピアの声。

トスカはテーブルにあるナイフを目にする。
一瞬、目が輝き、顔色が変化。
首を振って、スカルピアをチェック。
ほんの一瞬の出来事だった。
顔が青白く光った。
スカルピアの冷酷の反射か?
神の啓示か、
悪魔のささやきか。
一瞬の出来事は数学的に証明可能な必然だったのかも知れない。

舞台天井近くの聖ミカエラ、
剣を手に舞台を厳しい目で見下ろしている。
舞台奥、遠くにぼんやりと浮かぶサンピエトロ大聖堂。
たどたどしい羊飼いの歌、
少年少女合唱団のメンバーの声に指揮者の目がしばしなごむ。
暫くは未明の緩やかな時間。

カヴァラドッシ亡き跡、
サンタンジェロの屋上。
知盛のように身を投げて終わるトスカ。

O Scarpia, avanti a Dio!

vissi darte vissi damoreは気迫に満ちていた。最後は本当に怒りが爆発するような雰囲気で、この歌の時点でスカルピアを刺し殺すような殺気があった。星は光りぬは暗い雰囲気ではなく詩的な雰囲気で始まった。死を前にしても詩的なカヴァラドッシは芸術家だ。今井は紳士然としたスカルピアで声が美しく良く通り、それ故にスカルピアの本質的な陰険さが際立った。芝居も歌も良かった。

演出と美術は徹底してクラシック。わかりやすいし本当にトスカの世界に入り込める。美術はだまし絵だらけの本格的なもので各サイトの内部を本物っぽく再現したものだった。うねるような演奏は元気良く、トスカの身をよじるような気持ち、カヴァラドッシの燃え上がる情熱、スカルピアの重厚な冷酷を表現していた。プッチーニだ。

スカルピアは本当に悪い奴だ。登場の時の悪党気分満載の音楽、王党派がナポレオン軍に負けた知らせを聞いた時のカヴァラドッシの叫び"Vittoria Vittoria"、2幕目最後のトスカのセリフ「この男のために、ローマ中が震え上がっていた」など、スカルピアの独裁に対する怒りが炸裂するオペラだった。

ただの恋愛悲劇じゃない。

ローマ歌劇場のプロダクション
17.02.18 東京文化会館
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