二銭銅貨

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歌行燈

2008-12-15 | 成瀬映画
歌行燈  ☆☆
1943.02.11 東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:久保田万太郎、原作:泉鏡花
出演:山田五十鈴、花柳章太郎、柳永二郎、大矢市次郎、伊志井寛

能の舞を踊る山田五十鈴の気迫。
幾分のぎこちなさを含めて、
芯の強さをすっきり見せて美しい。

戦争中の映画なので、
甘いところの無い厳しい物語ではあるけれど、
芸の道の過酷さをモチーフにしたおとぎ話でもあり、
ファンタジーでもある。

花柳章太郎の生真面目な様子、
親分肌の柳永二郎の気風の良さ、
絵の美しさ。

日本画のような山田五十鈴のたたずまい。

08.12.06 神保町シアター
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夜の流れ

2008-12-14 | 成瀬映画
夜の流れ  ☆☆
1960.07.12 東宝、カラー、横長サイズ
監督:川島雄三、成瀬巳喜男、脚本:井手俊郎、松山善三
出演:山田五十鈴、司葉子、三橋達也、宝田明、草笛光子、北村和夫
   三益愛子、白川由美、水谷良重、市原悦子

山田五十鈴の落ち着いた表情と大人の目線、
身のこなし。
ずーっと抑えた芝居。
それが突然、
三橋達也の前で、
燃え上がるような情念の炎が
瞳の中に現われ、
みずみずしい若い気持ちが、
表情からしたたり落ちる。
変化する。
恋が、
いきなり燃焼するのだ。

いつまでも若い力を維持していることは凄いことだと思う。

草笛光子にからむ元夫の北村和夫、
ねちねちしてすきま風が吹く。
哀れな侘しさ、淋しさ。
タバコを切らせて、もらいタバコをする。
そのタバコが涙に濡れている。
遠くに東京タワーがぼやけて見える。
東京の何も無い埋立地の殺伐。
北村和夫のそんな気持ち。
草笛光子演ずる芸者に対する、
切っても切っても切れないその気持ち。

物語は、花柳界の様々な女性が男で苦労するエピソードを重ね合わせたもの。演出は川島雄三と成瀬巳喜男の2人。それぞれの組が担当のシーンを決めて撮影したようで、おもに山田五十鈴が出るシーンは成瀬組、若者たちのシーンは川島組が撮影したようだ。三益愛子のところは成瀬組で、北村和夫のところは川島組だろうか?

まるでテンポや雰囲気の違う演出の組み合わせだが、あまり違和感はなくて、むしろ良いアンサンブルのようにも思えた。1つの物語でなく複数のエピソードのまぜ合わせなので、意識して見なければ良くも悪くもその事に気がつかないかも知れない。

08.12.06 神保町シアター
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狂熱の季節

2008-12-13 | 邦画
狂熱の季節 ☆☆
1960.09.03 日活、白黒、横長サイズ
監督:蔵原惟繕、脚本:山田信夫、原作:河野典生
出演:川地民夫、松本典子、長門裕之、千代侑子(チシロユウコ)
   郷治

ギラギラした太陽。
夏の暑い1日。
空にそびえる木も、ビルも、
みんながみんな熱そうだが、
元気良く、
身をよじりながら、
情熱に身をまかせているかのよう。

空中に向かって口をパクパクしている若い男は川地民夫と郷治だ。
出所したばかり、シャバの空気を胸いっぱい吸っている。
夏の暑い空気だ。
街のチンピラだ。

最初から最後までアップテンポなジャズのスイング。
スイングしっぱなし、
リズムにのりっぱなしの川地民夫はただのチンピラっていう
わけではなく、ちょっと違う、
ジャズに魅入られたいわばジャズっ子。

品行方正風の長門裕之、
真面目一直線風の松本典子、
この2人のいわば常識的若者を対照に、
八方やぶれ、やぶれかぶれの自由奔放、
なんでもありのワイルド小僧の川地民夫と、
おなじく開放路線、あけっぴろげな千代侑子。

ジャズのスイングの爆発だ。

川地民夫のよれよれクネクネしたチンピラの芝居は、この1年後に作られた長門裕之の「豚と軍艦」のチンピラの芝居に似たところがある。川地民夫のはシャープで切れが良くパワーを感じるが、長門裕之のはフラフラよれよれとたより無い感じ。それぞれ個性が出ていておもしろい。その長門裕之がこの映画にも出ているところが興味深い。

激しいカメラの動き(手持ちカメラをつかったらしい)、
アップテンポなリズムとカット、
白と黒のタイトな情熱、
破天荒な川地民夫、強烈にハイ、芝居、動き、
個性的な松本典子、長門裕之、やんちゃな千代侑子、
全体をカバーするジャズの熱いスイング、
わけのわからない物語の展開。

ジャズが分かる人じゃないと分かんない映画かも知れない。

08.11.23 NFC
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ある脅迫

2008-12-12 | 邦画
ある脅迫  ☆☆
1960.03.23 日活、白黒、横長サイズ
監督:蔵原惟繕、脚本:川瀬治、原作:多岐川恭
出演:金子信雄、西村晃、白木マリ

西村晃のヒリヒリする笑い。
金子信雄のビビリ。
白と黒の緊迫のサスペンス。
田舎のたいしたことの無い古ぼけた銀行でのお話。
場内がしいいんとするような、タイトな緊張と集中。
コンパクトでおもしろく、
2人の俳優のつばぜり合い。

脚本を担当した川瀬治監督のトークショウあり。ご自身のことや蔵原惟繕のことを含め様々なエピソードを紹介した。この映画のラストの警官が逮捕しに来るところは原作になく、映画の当初の予定にも無かったとのこと。映画会社のほうから、そうしてくれという要請があったようだ。悪人を放置したまま終わるのはまずいから。それにしても全編コンパクトで緊張感が持続するこの映画に、この最後の場面はもったいないと思っていたら、そういうことだった。観客としては、これを無いものとして見れば良いのかと納得した。

08.11.23 NFC
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地獄の曲り角

2008-12-11 | 邦画
地獄の曲り角  ☆☆
1959.10.06 日活、白黒、横長サイズ
監督:蔵原惟繕、脚本:山田信夫、今村昌平、原作:藤原審爾
出演:葉山良二、南田洋子、稲垣美穂子、大泉滉

ちょっと見た目が善良そうな葉山良二、
お坊ちゃまな感じで、おとなしそう。
なんだけれども、
何かギラギラした野心が眼から、顔から
こぼれんばかりの勢いで吹き出ている。
脂ぎった欲望。

ドライでクールなテンポにカット。
熱くタイトな演出の硬いサスペンスの緊張。

08.11.22 NFC
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