二銭銅貨

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三味線とオートバイ

2008-10-30 | 邦画
三味線とオートバイ 
1961.10.11 松竹、カラー、横長サイズ
監督:篠田正浩、脚本:柳井隆雄、原作:川口松太郎
出演:桑野みゆき、川津祐介、月丘夢路、森雅之

三味線、長唄の静的な世界を、
月丘夢路と森雅之がゆっくりとしたリズムで演じていく。

一方の桑野みゆき、川津祐介が現代的なアップテンポの
リズムで情熱をアグレッシブに表現している。

両方の波長の合わなさ加減がこの映画のテーマなんだろうか。
ちぐはぐな成り行き、ちぐはぐな組み合わせ、ちぐはぐな物語。
物語のテーマがそうである故か、
映画自体もちぐはぐな感じだった。

08.10.25 ラピュタ阿佐ヶ谷
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赤坂の姉妹・夜の肌

2008-10-29 | 邦画
赤坂の姉妹・夜の肌  ☆☆
1960.11.19 東宝、カラー、横長サイズ
監督・脚本:川島雄三、脚本:八住利雄、柳沢類寿、原作:由起しげ子
出演:淡島千景、新珠三千代、川口知子、伊藤雄之助、田崎潤、
   三橋達也、フランキー堺、山岡久乃、久慈あさみ、柳沢真一

伊藤雄之助の代議士の妖怪さは、
画面全体を覆うこと悪霊のごとしで、
淡島千景をベッドに押し倒すまでのざっくばらんさと、
押し倒したあとの横柄さのチェインジの速さが
馬鹿馬鹿しくて面白い。

三橋達也は2枚目なのに見捨てられる役。
伊藤雄之助にかなわないのだ。

田崎潤も同様。

山岡久乃がおおきな人物のおかみさん役で、そのキツさが良い。

伊藤雄之助のお小姓みたいな新聞記者の柳沢真一の
調子のいいセリフまわしや、
群がる記者群の興奮、
選挙で大混乱の議員スタッフのあわてぶり、
議員たちの横柄さの表現も風刺的でおもしろい。

淡島千景がやりての小さなバーのママさん。
男遍歴を重ねながらどんどん出世していく。
そんな身持ちの悪い姉さんに、
気色悪い感じを深く抱いている純な妹役の新珠三千代。
そんな新珠三千代のカレシ役が調子のいいフランキー堺で、
これは淡島千景の前のカレシ。
こいつも不安定で不確かだ。
3番目の妹が川口知子で、学生運動に憧れる生真面目な少女。
頭に包帯を巻いた姿が痛々しくて健気だ。

ベクトルの向きの異なる3人の姉妹の葛藤を軸に、
赤坂の夜にうごめく欲望、金、打算、思惑。
愛に恋に絶望に希望。めくるめく人間の心の変転を
自在なカットで次々と連写していく忙しい物語。

普通の映画を3分の1に圧縮したような密度の濃い映画だ。

映画の中で出てくる赤坂のTV局の名前は「テレビ東京」、またそのTV局の中には12という字が見えるので、多分12チャンネルという設定のようだ。あたかも現在の「テレビ東京」12チャンネルのような感じだが、そうではない。当時は12チャンネルは無く、実際の12チャンネルは1964年開局でこの映画の2年あと。また、その名称は当時は「東京12チャンネル」で、現在の名称の「テレビ東京」になったの1981年。映画が現実を先取りしたわけ。映画の中のTV局は赤坂なので、もちろんTBSの事なのでしょう。

3女の川口知子という人はあまり映画に出ていないようだ。ウェッブにも記録が少なく、この映画の他1962年のNHK朝ドラに出ていたらしい。1969年1月19日に亡くなったという記述のサイトもあった。

若き日の蜷川さんが出ていたらしい。

08.10.25 ラピュタ阿佐ヶ谷
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南の島に雪が降る

2008-10-28 | 邦画
南の島に雪が降る  ☆☆☆
1961.09.29 東宝、カラー、横長サイズ
監督:久松静児、脚本:笠原良三、原作:加東大介
出演:加東大介、伴淳三郎、有島一郎、西村晃、渥美清、桂小金治
   三橋達也、志村喬、森繁久彌、三木のり平、フランキー堺
   小林桂樹

戦地に集まる芸達者を集めて作られた演芸分隊の、
活躍する場所は立派に建てられた戦地の劇場、
マノクワリ歌舞伎座。

舞台の上、
幕間、
幕の内側、
演劇を見ながら無くなった最前列の兵隊を舞台の上に引き上げて、
演芸分隊の兵隊たちは舞台の上に衣裳そにままに立ちつくす。
天井からはハラハラと紙の雪。
亡くなった兵隊の上に落ちかかる。
この演芸分隊の隊長は加藤大介。
1人、その反対の方向を向いて、
じっと、こらえている。

若干の静寂。

加藤大介の手記に基づく映画で、
数多くの仲間が出演している。
演劇大好きの仲間たちが、
加藤大介のために集まって出来た映画だ。
その楽しさ。

戦争に行っても演劇をする。
演劇命の男たち。
南の島だろうと、戦場だろと、
あるいは、また宇宙の果てだろうと、
どこだろうと雪を降らして見せるという、
演劇人の気概。

最後の場面の劇中劇は瞼の母、忠太郎を加藤大介、母を西村晃がやる。ある兵隊がこれを見て、見ながら亡くなるという、その話は、まさに観客の鑑ともいうべき最後である。こういう重要な部分を観客にやらせるという脚本に、演劇人がどれだけ観客を大事に思っているかというメッセージを伺い知る事ができる。

もちろん反戦のメッセージも潜在的には色濃くあって、たとえば最後の兵隊の死は戦争のむごさを表現するものでもあるけれど、映画全体としては、あまり強い表現にはなっていない。それよりもやっぱり、芝居がしたいっていう気持ちのほうが強い。

登場した演劇人はみんな大暴れ、やりたいようにやっていた。1人、加藤大介だけは神妙にまじめにやっていて、とても印象的だった。自分の話に皆が協力してくれて恐縮しているというようにも、また緊張しているようにも見えた。幸せそうだった。

08.10.19 神保町シアター、昔TVで
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神阪四郎の犯罪

2008-10-26 | 邦画
神阪四郎の犯罪 ☆☆
1956.02.25 日活、白黒、普通サイズ
監督:久松静児、脚本:高岩肇、原作:石川達三
出演:森繁久弥、新珠三千代、左幸子、轟夕起子、高田敏江
   滝沢修、清水将夫

からみつくような鋭い視線の、
しぶとくて強い芯のある、
狂気の娘に左幸子。
ぱっと大きく咲いた、
向日葵のような明るさは轟夕起子で、
ねばりけの多い中年女性。
貞淑そうな妻は新珠三千代で、
しおれかかったようでも、
しっかりとした眼の光が強い。
女事務員は高田敏江で、
実直そうでいて、
したたかな面を出す。
四者四様、
対照的な女性たちのキャラクタの交差、
つばぜりあい。

対する男性は、
七色の性格を演じ分けるがごとき主人公に森繁久弥。
権威をひけらかす老人作家に滝沢修、
商売人のやらしさが滲みこぼれ出ている出版社の社長に清水将夫。

日本にはめずらしい法廷劇。

08.10.19 神保町シアター
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ロメオとジュリエット/MET07-08舞台撮影

2008-10-25 | オペラ
ロメオとジュリエット/MET07-08舞台撮影

作曲:グノー、演出:ギイ・ヨーステン
指揮:プラシド・ドミンゴ
出演:アンナ・ネトレプコ、ロベルト・アラーニャ

 諧謔に富んだシェイクスピアが愚劣な人間世界に対して突き刺した、鋭い短剣の切っ先のごとき恋愛のロマンス。悲劇。
悲しいお別れだ。

2人の主役の自信に満ちた歌は、そんな悲しい悲劇を吹き飛ばすほど、この物語の情熱を表現していたように思う。

紺や青を基調にした天の色合いと、濃い茶を基調にした地の色合いの対照、天体をモチーフにした宇宙を感じる美術が印象に残った。

08.10.11 東劇
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