むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

中立の仮面をかなぐり捨てて、深藍=反動路線の本性を現した蘋果(リンゴ)日報

2008-11-28 02:41:22 | 台湾政治
以前にも書いたが、10月中旬以降、香港系の蘋果(リンゴ)日報が明らかにおかしい。というか、香港系国際資本の大中国、反動体質を露骨に顕しはじめた。
特に27日付け一面トップ記事が露骨で、他の親中派日刊紙の「聯合報」が「タイの黄色シャツ部隊が空港を占拠し、台北バンコック便キャンセル」、「中国時報」が「馬総統:年末までに失業救済対策出動」がそれぞれトップ見出しなのに対して、リンゴ日報は「海角7億 陳水扁家は国家への返還を了承」がトップ見出しで、陳水扁バッシングもの。

ニュースの扱い方としては、タイの事件をトップに持ってきた聯合報が最もマトモだといえるが、中国時報でも許容範囲だ。しかし、いまだに陳水扁バッシングに固執するリンゴは異常、心理的変態というしかない。

リンゴも社説などオピニオン面はわりとマトモではあるが、以前から写真を多用した扇情的な記事が多く、お世辞にもマトモだとはいえなかった。創刊当時は親民党の影がちらついていた。
ただそれでも創刊以降ずっと努めて中立を装っており、特に2年前の陳水扁打倒運動の際にも冷静な報道をしてきたのに、なぜかここに来て、聯合報もびっくりの統一派イデオロギーぎらぎらした偏向報道が目立っている。
聯合報も社説や投書欄や世論調査は深藍に偏っているが、一般記事そのものや記事のレイアウトそのものはそれほど偏っておらず、資料整理もよくやっていて、しかも扇情的でカラフルな紙面構成ではないので、私は意外に好感を持っている。
中国時報は、2年前の陳水扁打倒運動のころは、一番偏っていて扇動的だったが、最近は割合冷静で中立路線になっている。社説やオピニオン面は以前から聯合報よりはバランスが取れていた。ただ、紙面処理は毎日ぶれまくっていて、27日は馬よいっしょっぽい構成になっているが、違う日は馬に批判的な構成になっていたりする。名前が「中国」を冠しているのも胡散臭いし、中国進出している食品企業旺旺が最近買収したので、今後親中の本性をあらわにするかもしれない。
ただ、外省人資本とはいえ、それでも聯合報と中国時報は、台湾で生まれ育った新聞である。統一派イデオロギーがあったとしても、台湾に自生的なもので、まだ理解はできる。

しかし、最近のリンゴ日報は香港基点の国際資本ジョルダーノの系列で、そもそもは台湾に自生したものではない。
それでも、オーナーの黎智英はもともと右派リバタリアンで、中共に批判的で、民進党政権になって自由な台湾にあこがれて台湾に移ってきたのだが、しょせんは中国人としての大中華思想は隠しがたいということか。しかもオピニオンは独立派のも採用しているとはいえ、基本的にイスラエル万歳、米国共和党万歳、企業の最大利益を確保できる新自由主義を鼓吹する傾向が強く、はっきりいって経済右翼的体質もはっきりしていた。現在はそれが中華思想とも結びついて、醜悪なものになっている。

それならまだしも聯合報のほうがマシだ。聯合報は反動とはいえ、それでも台湾で育ったものであり、外省人の一部反動思想を代表しているものだから、否定はできない。
統一派新聞は、聯合報だけで十分だ。聯合報はまだしも基本的な品位と職業倫理はある。
リンゴ日報は最低の毒リンゴ、腐ったリンゴだ。

ただ日刊紙では唯一の本土派の自由時報も、経済・社会政策的には右派的・反動的で、台湾民主化の中で育った本土派の基本路線である中道左派とはズレがある。本土派運動の基本思想である脱原発、弱者の権利、楽生院運動などには、自由時報は冷淡かむしろ敵対的ですらあった。米国のイラク侵略も手放しで褒め称えた。ところがイラク侵略こそが、米国のアジアでの不在を生み出し、その反テロが中国に少数民族弾圧の口実を与え、結果的に台湾の外交的困窮を招いたことを考えると、自由時報もまた本当に台湾人の利益を代弁しているとはいいがたい。そういう意味では、今の台湾の主要4紙は、ドングリの背比べなんだが。
もちろん右派しか選択肢がないなら、本土派の自由時報を選ぶしかないが、自由時報を喜んで読むってこともできないんだよね。

もっとも、自由時報が経営するメディアでも英字紙のTaipei Timesのほうが、自由時報と違ってなぜかかなりリベラルなんだが(よく社会運動の記事を載せているし、配給受けている論説も英国のガーディアンとか左派系のが多い)、しょせん英字紙だと一般的な影響はない。

かつて台湾日報は大資本がバックだったといえ(それをいうなら、英仏の左派日刊紙もそう)、経営と編集が完全に分離していて、けっこうリベラルだったからよかったんだけどね。
韓国のハンギョレや京郷新聞にあたる本土派左派新聞が台湾に出てこないのは、非常に残念なことだ。


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