1月22日午前中、台湾ローマ字協会の活動で、台南県東山郷東河村にあるシラヤ集落を見学した。今回台南行きの2つの目的の1つ。
シラヤ語自身ではKabua Swa(kabuaは綿花、swaは集落の意味、漢字では「吉貝耍」とあてる)と呼ばれる集落では、自身もシラヤである段洪坤氏の案内で、民俗品の展示をしてある吉貝耍文史工作室といくつかあるkuwa(シラヤ語),kong-kai3(ホーロー語、漢字では公廨)を見て回った。kong-kai3とは、言ってみればかつて日本でもあった「若衆宿」兼「祠」である。水を入れて青葉を挿した壺に象徴される神を祀っている。この祀り方は国分直一の「壺を祀る村」でも有名なシラヤ族の祀りの形式である。ただし、祀っている対象は壺そのものというよりも水のようだが。崇拝の対象となっているのはalip(漢字では阿立、祖先の意味、普通は接尾辞に祖をつけて、台湾語a-lip8-chou2とする)。
(写真はkong-kai3のひとつ)
シラヤで現有の集落は4大社と通称されていて、カバスワのほか、番仔田、北頭洋、六重渓がある。その中でもカバスワは漢化の汚染が比較的軽いところだという。
東河村カバスワ集落のシラヤ族による平埔族運動は、1996年に始まった。当初は「偉大な漢民族」と思い込んでいたシラヤ族も現在では同集落の7割が平埔族であることを自認するまでになった。台南県は県独自にシラヤ族を原住民と認定している(国の認定はまだ)。
シラヤ族としての祭りは、集落によって異なる期日に行われる。カバスワの場合は、農暦9月4-5日。ここで本来のマレー系種族には関係なかったはずの中国伝来の農暦を用いているところが、漢化した平埔族の「熟番」たるゆえんといえる。
祭りでは豚(babui)を祭るが、これは漢文化の影響ではなく、もともとあったようだ。さらにシャーマンであるang-i5は女性がなる。
段氏自身は母語は完全に台湾語である。シラヤ語は断片しか知らない。それも母(ina、アミス語などと同じ)は知っていても父は知らず、数詞も七しか知らない。ほかには挨拶の言葉、娘、未婚の男性、既婚の男性などの単語を知っているだけ。ただ、この保存の仕方に、何がシラヤ族にとって最も重要なことだったのかが逆に透けてみえる感じがする。父はどうでもよくて母が重要だという典型的な母系社会で、婚姻や対象を見つけることが最も重要な行いだったということでもある。
あるkong-kai3のそばの民家に88歳の老女が一人で住んでいた。学校に行ったことがなく文盲のようだった。しかし、逆にいえば、そういう人こそ日本と中国という植民地侵略者の汚染を受けていないということであり、その人の思いと台湾語自身の奥深さを次回来たときにはじっくり聞いてみたい気がした。
Kong-kai3で最も大きく中心的なものが、「大公界toa7-kong-kai3」と呼ばれている。ここは風水というか地磁気が特殊な場所なのか、野良犬やガチョウなどの動物が入り込むことがないという。なるほど。
吉貝耍文史工作室は台南県東山郷東河村133号、電話06-623-2343。HPは http://www.sinica.edu.tw/~pingpu/workroom/gebei/title-2.html
シラヤ語自身ではKabua Swa(kabuaは綿花、swaは集落の意味、漢字では「吉貝耍」とあてる)と呼ばれる集落では、自身もシラヤである段洪坤氏の案内で、民俗品の展示をしてある吉貝耍文史工作室といくつかあるkuwa(シラヤ語),kong-kai3(ホーロー語、漢字では公廨)を見て回った。kong-kai3とは、言ってみればかつて日本でもあった「若衆宿」兼「祠」である。水を入れて青葉を挿した壺に象徴される神を祀っている。この祀り方は国分直一の「壺を祀る村」でも有名なシラヤ族の祀りの形式である。ただし、祀っている対象は壺そのものというよりも水のようだが。崇拝の対象となっているのはalip(漢字では阿立、祖先の意味、普通は接尾辞に祖をつけて、台湾語a-lip8-chou2とする)。
(写真はkong-kai3のひとつ)
シラヤで現有の集落は4大社と通称されていて、カバスワのほか、番仔田、北頭洋、六重渓がある。その中でもカバスワは漢化の汚染が比較的軽いところだという。
東河村カバスワ集落のシラヤ族による平埔族運動は、1996年に始まった。当初は「偉大な漢民族」と思い込んでいたシラヤ族も現在では同集落の7割が平埔族であることを自認するまでになった。台南県は県独自にシラヤ族を原住民と認定している(国の認定はまだ)。
シラヤ族としての祭りは、集落によって異なる期日に行われる。カバスワの場合は、農暦9月4-5日。ここで本来のマレー系種族には関係なかったはずの中国伝来の農暦を用いているところが、漢化した平埔族の「熟番」たるゆえんといえる。
祭りでは豚(babui)を祭るが、これは漢文化の影響ではなく、もともとあったようだ。さらにシャーマンであるang-i5は女性がなる。
段氏自身は母語は完全に台湾語である。シラヤ語は断片しか知らない。それも母(ina、アミス語などと同じ)は知っていても父は知らず、数詞も七しか知らない。ほかには挨拶の言葉、娘、未婚の男性、既婚の男性などの単語を知っているだけ。ただ、この保存の仕方に、何がシラヤ族にとって最も重要なことだったのかが逆に透けてみえる感じがする。父はどうでもよくて母が重要だという典型的な母系社会で、婚姻や対象を見つけることが最も重要な行いだったということでもある。
あるkong-kai3のそばの民家に88歳の老女が一人で住んでいた。学校に行ったことがなく文盲のようだった。しかし、逆にいえば、そういう人こそ日本と中国という植民地侵略者の汚染を受けていないということであり、その人の思いと台湾語自身の奥深さを次回来たときにはじっくり聞いてみたい気がした。
Kong-kai3で最も大きく中心的なものが、「大公界toa7-kong-kai3」と呼ばれている。ここは風水というか地磁気が特殊な場所なのか、野良犬やガチョウなどの動物が入り込むことがないという。なるほど。
吉貝耍文史工作室は台南県東山郷東河村133号、電話06-623-2343。HPは http://www.sinica.edu.tw/~pingpu/workroom/gebei/title-2.html