草枕 旅の宿りに 誰(た)が夫(つま)か
国忘れたる 家待たまくに
=巻3-426 柿本人麻呂=
草を枕の旅の宿りに、あわれ誰の夫なのか、国を忘れて。 ・・・家族が待っているだろうに。という意味。
万葉集のこの歌の詞書きに、 人麻呂が、香具山の路傍の屍(かばね)を見て慟哭して詠んだと、ある。
当時の風習では、行き倒れた人が、そのまま放置されていたということもあったようだ。
巻3-415に、聖徳太子「家ならば妹が手まかむ草枕旅に臥やせるこの旅人あはれ」の歌があり、この歌に影響されて人麻呂が詠んだと思われる。
夫(つま)は「妻」だけの意味だけでなく「配偶、偶(つま)」の意味であり、妻から見た夫も指した。
膳夫(かしわで)古池は香久山の東尾根にあるため池。古代に天皇の食事を用意した専属料理人、膳夫(かしわで)氏の一族がこの一帯に住んでいたことで、膳夫古池ともいわれている。
万葉歌碑はこの池の畔に建っている。香久山は標高は152.4メートルの低い山。ここから眺める香久山は丘といったほうが良いくらいの低山を実感する。
万葉集では天の香久山と形容されて高山のイメージがあるが、神が宿る山としてあがめられたのであろう。