飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(関東):茨城、筑波山神社 衣手常陸の国

2011年11月21日 | 万葉アルバム(関東)

衣手(ころもで) 常陸の国の 二(ふた)並ぶ 筑波の山を
見まく欲(ほ)り 君来ませりと 暑けくに 汗かきなけ
木の根取り うそぶき登り 峰(を)の上を 君に見すれば
男神も 許したまひ 女神も ちはひたまひて
時となく 雲居(くもゐ)雨降る 筑波嶺を さやに照らして
いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば
嬉しみと 紐の緒(を)解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ
うち靡く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日の楽しさ 
   =巻9-1753 高橋虫麻呂=

今日の日に いかにかしかむ 筑波嶺に
昔の人の 来けむその日も
   =巻9-1754 高橋虫麻呂=


(長歌)常陸の国の、二つの峰が並んでいる筑波の山を、見たいと思ってあなたがやって来たので、暑い日なので汗をかきながら嘆き、木の根に取り付きながら息が上がり、頂上をあなたにお見せすると、男神もお許しになり、女神もお恵みになられて、
いつも雲がかかり雨が降っている、筑波の山をはっきり照らして、知りたいと思っていた、国の優れた所を、こまごまとお示し下されたので、嬉しくて、衣の紐を解き、家にいるようにくつろいで遊んだ。(うちなびく)春ご覧になるよりは、夏草が茂ってはいるけれど、今日の楽しさが一番だ。

(反歌)今日の日の楽しさに、どうして及ぶことがあろうか?筑波の山に昔の人が登ったであろうその日よりも。

検(けん)税使(せいし)大伴の卿(まへつきみ)、筑波山に登れる時の歌一首并びに短歌で、高橋虫麻呂の作といわれている。

この歌碑は、筑波山神社に並ぶ4基の万葉歌碑の中の左端の歌碑である。
明治10年の建立という古色を帯びた歌碑で、万葉仮名で刻んだ文字の判読が難しく、注意しないと見過ごしてしまいそうな歌碑である。菅原道真の筆跡から文字を拾って刻んだとされている。