君を待つ 松浦(まつら)の浦の 娘子(をとめ)らは
常世(とこよ)の国の 海人娘子(あまをとめ)かも
=巻5-865 山上憶良=
あなたを待つという松浦川の浦の少女たちは、神仙の国の天女たちですね、という意味。
常世の国(とこよのくに)とは、古代人が海の向こうの遠いところにあると考えていた想像上の理想の国。
神亀元年(724年)に「太宰帥」となって、北九州に赴任した大伴旅人は、鮎捕りの神事を見て、松浦の鮎捕る乙女に一目ぼれした男の恋心と乙女とのやりとりを記録した。
同時期、筑前守であった、山上憶良は旅人の邸宅の宴にまねかれるなどして交流もあった。彼が、この松浦鮎乙女の一件を手紙で知って、歌ったのがこの歌である。
松浦といえば、もうひとつ「松浦佐用姫」のヒレ振り伝説があり、憶良も歌を残しているようだ。
この歌碑は明日香の万葉文化館庭園に建っている。万葉文化館は飛鳥池工房遺跡に建てられており、地下1階の特別展示で飛鳥池工房跡の発掘品の展示(富本銭・ガラス玉)工房跡の復元展示を観ることができる。