筑波嶺(つくはね)に雪かも降らる否(いな)をかも
かなしき児(こ)ろが布(にの)乾さるかも
=巻14-3351 東歌=
白く見えるのは筑波山の峰に雪が降っているのかな、いや違うのかな。私の愛しいあの娘が布を乾しているのかな。という意味。
当時の常陸の国は、布生産が東国一だったようだ。
布が山に干されている風景は雪が降ったように見えたのである。雪の降る季節ではないのに、雪に布を掛けて、歌うことで、若者の幸福感が伝わる。
「かなしい」は愛しいということ。
万葉学者中西進さんは、本来、悲しいという感情は何かに対して愛があるから起こる。例えば、「どうでもいい」と思っている人に対しては悲しいという感情は生まれないはず。愛しているから「愛しい」、といっている。
この歌碑は、筑波山麓の「つくばテクノパーク大穂」に建っている万葉集20基のうちのひとつである。