飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(明日香):飛鳥寺

2009年06月12日 | 万葉アルバム(明日香)

三諸(みもろ)の神奈備山に 五百枝(いほえ)さし繁(しじ)に生いたる 
栂の木のいや継ぎ継ぎに 玉葛絶ゆることなく
ありつつもやまず通はむ 明日香の古き都は
山高み川とほしろし 春の日は山し見が欲し 
秋の夜は川しさやけし 朝雲に鶴は乱る   
夕霧にかはずは騒ぐ 見るごとに音のみし泣かゆ
いにしへ思へば
         =巻3-324 笠金村=
明日香川川淀さらず立つ霧の
思ひ過ぐべき恋にあらなくに
         =巻3-325 笠金村=


 三諸の神奈備山に、たくさんの枝が伸びて、びっしり茂った栂の木のように、いよいよ次々に、(玉葛)絶えることなく、いつまでも通い続けるであろう明日香の旧都は、山が高く川は雄大だ。
春の日は山が見たい、 秋の夜は川音がさやかだ。 朝雲に鶴は乱れ飛び、夕霧に河鹿は鳴き騒ぐ。 見るたびに声を上げて泣けてくる、明日香時代のいにしえのことを思うと。
明日香川の川淀を去らず立ちこめる霧のように、すぐ消えてしまうような恋心ではないのだ、私の明日香への慕情は。という意味。

「三諸の」は、神の来臨して籠る所、「神奈備山」は、神のいます山で、甘橿丘を指しているという。

飛鳥寺の境内に巨大な万葉歌碑が建っている。
文学博士・佐々木信綱氏揮毫による山辺赤人の長歌とその反歌である。
碑には万葉仮名で刻まれている。

飛鳥寺は、本堂に鎮座する飛鳥大仏以外に何も見るべきものはなく、
小さなお寺の庭ほどの敷地しかない。
だが、境内の奥に、かっての塔心礎の位置を示す標識が立っていて、
往時の面影を忍ぶばかりである。