天離(あまざか)る夷(ひな)の長道(なかぢ)ゆ恋ひ来れば
明石の門(と)より大和島見ゆ
=巻3-255 柿本人麻呂=
遠く隔たった地方からの長い旅路に、ずっと故郷を恋しく思いつつ戻って来たら、明石海峡から懐かしい大和の山々が見えてきたぞ。という意味。
柿本人麻呂が旅の途上に詠んだ歌。「鄙(ひな)」は、都の外の地をいう。
ここで詠っている「大和島」とは、瀬戸内の明石海峡から難波の津(大阪)を見た時に大和の生駒・葛城連山があたかも大きな島のように見えることからきている。
万葉歌碑がある明石の柿本神社は付近が人麻呂生誕地と伝えらている。
防人として出兵した人が故郷へ帰ってくるときに、瀬戸内海を通って明石まで来て大和島が見えた時、本当に故郷へ帰ってきたという実感を抱き舟の上で小躍りしている情景が目に浮かぶようだ。