moonpool

魂のため息

上弦の月

2012年08月25日 | 七夕諷詠
七夕ですよ

嗚呼
今宵もまた上弦の月

この月を見ると
あなたを思い出す
いえ
常にあなたを思っています
今も

隣りにあなたがいるという
この日、七月七日

それだというのに
どこかうわの空で
月を眺めている

年に一度
積もり積もった想いをよそに
無口な夜

月がいやらしく紅色に染まり
覗いている

嗚呼
今宵もまた上弦の月

毎年同じ景色ばかり見ている

あるいは
見られているのかもしれない

そう思うと
何だか少しイライラして

今宵の私は
少し淫らに・・・自分に素直に

私から、そう

あなたの上に跨って腰を・・・

こんな気分にさせたのは
月の所為かしら

と思ったけど
月はとっくに沈んでいて

「もう、どうでもいいや」
そんなゆるい吐息交じりの微笑みの

夢中になって
あなたの上に跨って腰を振る
         腰を振る



2012年8月24日(旧暦7月7日)

死体置場

2012年08月20日 | 詩・夏
粋

夏の喧騒で目を覚ました

クーラーは着けっぱなしだった

重く暗いカーテン越しでも
日差しの暑さが伝わる

ぬるいため息をつきながら
カーテンを
窓を開ける

日差しの強さの割りに
風が少し涼しい?

空がどこか秋の装いを見せ始め

ベランダには
セミの死体がひとつ

これから毎日のように
ひとつの夏の
亡骸

乾いたセミの死体が
ころがってゆくんだ



日記帳

2012年08月15日 | 詩・夏
粋

セミの声が響く
暑い日差しを浴びる
待ち合わせ

プールに行くんだ
学校のプール
友達とふたりで

そんな夏休みの一日

更衣室の喧騒
日焼け跡の見せ合い
消毒の為の冷たい水

「冷たい冷たい」とはしゃぎながら
準備運動もせず飛び込んで叱られる

そんな僕ら
それを見て笑う隣りのクラスのあの娘

泳げない僕は
ビート版とじゃれあいながら練習した

プールの時間が終わり
目を洗いながら友達に
「これからどこに行く?」

手早く着替えて
髪を濡らしたまま前店に
アイスを買って、いつもの帰り道

待ち合わせた場所で「じゃあまた明日」
の約束をして

ひとりの帰り道

帰ったらスイカを食べて
それで夜にはお腹を壊して
・・・気のない反省、おやすみなさい。

そんな些細な日常

だからこそ
日記帳には書かれないかも知れないけど

陽炎に揺らぐ
まっすぐな学校への道の
心の絵日記に

色はたくさんあるさ
明日は何色にしようかな・・・



夏、ゆうぐれ 影、きえるまで

2012年08月14日 | 詩・夏
粋

夕暮れの空に
入道雲ひとつ
浮かんでた
不思議な色をして  とてもきれいで

ひぐらしの声が好きだった
立ち止まったひとときに
目を閉じて 耳を傾けた

それもつかの間に
鬼ごっこやらかくれんぼやらで
みんなの笑い声が
僕を捕まえて

・・・いつの間にかに
地面は影だけになってた
空も小焼けの明るさだけで・・・

「もう帰ろうか?」
「ご飯食べてからまた遊ばない?」
そんな声が響く

いつも影が消えるまで遊んでた

でもそれもだんだんと
影の消えるまでの時間が短く
短くなってゆくのがわかる
わかるから悲しかった
惜しかった

夏が終ってしまうことが

来年も夏は来るだけど
きっと今年よりも早く
夏が終ってしまうだろう

体が大きくなっているから
少年のままではいられないから

帰り道
星がきれいだった
秋がほんの少し見えた八月

長くのびた影は夏を追い駆けていたのだろうか?

永遠の夏を目指して・・・



わたがし  ~Enfance finie~

2012年08月10日 | 動け!!
Enfance finie(1)


夏祭り
待ち合わせ場所

浴衣姿の君は
いつもよりも大人びて見えた

自分の顔よりも大きな
わたがしを頬張って
笑顔で手を振る姿に
いつもの君を見つけて

何だか少し、ほっとしたよ

無邪気な瞳で
「ねぇ、食べる?」

その言葉が
どんな意味を
どんな力を持っているのか
知っているのだろうか

ただ甘いだけのわたがしが
ほら、特別なものに・・・

そんな気持ちを
悟られないように

僕はガンダムのお面をかぶり

知ってか知らずか
君は悪戯なウインクをして
アンパンマンのお面をねだった

賑やかな人込みは僕に味方して
君との距離を自然と縮めてくれてさ

「はぐれないように」
そんな言い訳が出来て
手をつないだんだ

だけど

何を話せばいいのかな?
伝えたいことはあるのにな

うまくいかないんだよ

ほら、こんな僕だから
神様は意地悪をする

ぽつぽつ雨が降ってきた

急いで雨宿りして

君は濡れた髪を整えながら
花火大会の心配をしている

僕はどこかうわの空で
手にしていたわたがしを
ぼんやりと眺めている

雨に濡れたわたがしが
すっかりしぼんで
割り箸が透けて見えるよ


「ねぇ、たべないの?」
そう言いながら君は
僕の(もともとは君の)わたがしを奪い取って
舐めている

「ほらっ」と
ガンダムのお面を剥ぎ取られ

「お面なんてしてるから食べられないよ?」と
ちょと怒った風な口調で
でもやわらかな言葉で
「アンパンマンは知ってる?」

「ああ、知ってるけど?」
そんな僕の言葉をさえぎるように

にっこりと微笑みながら
「わたしがわたがし」呟くように・・・


神様は親切だから雨を降らせたのだろうか?

僕のクチビルに甘いわたがし



雨上がりの夜空、花火