星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

浪花花形歌舞伎  観劇メモ(2)

2007-04-10 | 観劇メモ(伝統芸能系)

 公演名 第四回 浪花花形歌舞伎
 劇場 大阪松竹座
 観劇日 2007年4月8日(日) 
 第一部 11:00開演 14:00終演
 第二部 14:45開演 18:00終演


第一部
「敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがちゃやむら)」

序 幕 四天王寺の場
二幕目 東寺貸座敷の場
大 詰 福島天神の森の場
    天神の森川下の場
    天下茶屋村松並木の場
    同 敵討本懐の場

安達元右衛門:片岡造酒頭:翫雀  人形屋幸右衛門:進之介
東間三郎右衛門:愛之助  安達弥助:薪車  早瀬源次郎:亀鶴
染の井:孝太郎  早瀬伊織:扇雀


早瀬伊織・源次郎兄弟の敵討の話だけれど、全編を通じて重苦しい感じはなく、
話が変化に富んでいて楽しめた。
なんといっても、翫雀さん演じる安達元右衛門のキャラの面白さ、表情の豊かさ。
敵を討つ側の従者から討たれる側の従者へと寝返ったことを、善人から悪人への
露骨な変化で観客にわからせるシーンが見せ場だった。大金を盗む前に弟がくれ
た小金を放り投げ、花道で目をパッと見開き、見得を切る顔の憎々しさ。
話の流れから、騙されて泣く泣く裏切らされたのかと思ったのに、そうじゃない
のね(笑)。悪人になった途端、実の弟は殺すわ、元の主人に斬りつけるわ。
そうそう。現主人の三郎右衛門を手引きして、足の悪い伊織を殺させるその横で
自分は知らん顔してキセルをふかすふてぶてしさにビックリ。伊織カワイソー、
正義はないのか!と思いつつ、内心私はこの時の翫雀さんにホレボレ~♪
(あれ? 愛之助さんじゃなく?)

愛之助さんの三郎右衛門は、手段を選ばず一国を手に入れようとするような実悪。
編笠をかぶっていても存在感のある佇まいで、騒がず、動じず、凄みをきかせた
ゆったりとした台詞回しで貫禄を見せていた。(こういう役もやるんやね~♪)
薪車さん、兄思いの優しい表情をたっぷり見せて、直後の悲劇を際立たせていた。
前髪の亀鶴さん、盲目になったり、いたぶられたりする悲運の美少年を好演。
その源次郎が投げ入れられたのは、イヤホンガイドによれば、現在の堂島川にあ
たるらしい。へぇ~! さすが上方歌舞伎。関西人にはリアリティありすぎ(笑)。



第二部

一、雨の五郎(あめのごろう)
曽我五郎時致:進之介


あれは郭の楼門だろうか? 舞台背景に描かれていた青系のグラデーションの絵
が美しかった。その淡い色彩に、五郎の目の覚めるような原色の衣装と恋する若
者らしい元気な振り付けが好対照の演目だった。



二、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)
  かさね
かさね:孝太郎  与右衛門:愛之助


自分の母親と通じていた男と自分も関係を結んでしまう、かさね。そのうえ男は
父親殺しの犯人でもあるという。男女の愛欲の本質を語る、ものすご~く濃厚で
因果なお話。ほとんど踊りだけなのに引き込まれて観てしまった。
孝太郎さんと愛之助さん、二人のバランスも息もピッタリ。

孝太郎さんのかさねがかわいらしくもあり、とても恐ろしい。あなたの子供を身
籠ったと与右衛門に嬉しそうに語るクドキの場面が、逆に哀れで不憫だった。
川に流れついた髑髏を与右衛門が拾うと、かさねの顔と足が一変。与右衛門、こ
こでかさねを捨てる決心がついたのか? 
悋気を起こしたかさねに顔の事を告げ、隙をみて斬り掛かろうとする与右衛門に、
醜い顔と不自由な足で見せる、かさねの立ち回りがすごい迫力だった。

やがて、残酷にも女に手鏡を渡し、ついに殺してしまう与右衛門。
(どうせ殺すつもりなら、なぜ手鏡を見せたのだろう。それが男の冷酷さか?
性根を見極めてやろうと、じっと与右衛門の顔を見つめているうちに、もしや、
この世や自分への未練を断ちやすくするために、あえて引導を渡してやったんだ
ろうか? などと思えてきた。アカン、アカン。あの顔に騙されたらアカン!
色男はそれだけで罪。色悪ってそういうコト、と勝手にナットク。)
最後、走り去る与右衛門が何度も引き戻される場面も怖かった。逃げる意志と引
き戻す力を、花道で独りで見せる与右衛門の体の動きに見とれた。かさねはその
間、幽霊になってダラリ~とその場にぶら下がるように立っていた。怖~っ!
こんな凄絶な場面の連続なのに、冒頭と最後に、与右衛門が髪にかかった雨を振
り払う仕草が色っぽくて、そこがなんとも小憎らしいというか、粋というか・・・♪



三、曽根崎心中(そねざきしんじゅう)
  第一場 生玉神社境内の場
  第二場 北新地天満屋の場
  第三場 曽根崎の森の場


天満屋お初:扇雀  平野屋徳兵衛:翫雀
油屋九平次:亀鶴  平野屋久右衛門:竹三郎


第一場、第二場はお初と徳兵衛の二人が道行きにいたるまでのいきさつ。
第三場はたっぷりと心中のシーン。
翫雀さんの徳兵衛は、昨年の歌舞伎座の舞台映像を観たばかりだったので、いま
舞台で見られるのは嬉しかった。
徳兵衛は二十五歳、お初は十九歳。この年齢が違和感がないように務めたいとい
う言葉通り、扇雀さんのお初はかわいらしく健気な感じが出ていた。あの天満屋
の場面では、自分の裲襠の裾に隠しながら縁の下にかくまった徳兵衛と、足の先
だけで心中を約束する時の吐息が聞こえてきそうな、お初のなんともいえない表
情が印象的だった。
道行きに向かうのに、思いがけず自分の方から徳兵衛の手を引いてしまうという
のは、二世鴈治郎さんと藤十郎さん譲りのものだそうで、二人の切羽詰まった素
振りを義太夫とのからみでハラハラさせながら見せる、素敵な演出だなあと思う。
亀鶴さん演じる油屋九平次は、ぼんぼん育ちの風情で、ちょっと軽いいたずら心
で徳兵衛に意地悪をしてみました、という感じ。取り返しのつかない事をしたと
はきっと思っていないんだろうな(笑)。
久右衛門が甥の徳兵衛の無実を知り、死ぬなよーと名前を呼ぶ場面。本当に徳兵
衛の事を心からかわいがっていたんだとわかり、胸が熱くなった。


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