星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

ニ月花形歌舞伎「鳴神」 観劇メモ

2008-02-23 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    二月花形歌舞伎 夜の部
劇場     博多座
観劇日    2008年2月17日(日)
座席     1階F列



二、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)

鳴神上人:愛之助  雲の絶間姫:七之助

約束を守らない朝廷に怒った鳴神上人は、龍神を滝壺に閉じ込める秘法を行い、
国中に雨を降らなくしてしまう。困った朝廷は雲の絶間姫を差し向ける。姫の
色香に迷った上人、ついに秘法の破り方を明かしてしまう。


浅草での与三郎・お富カップルが見せる、鳴神上人と雲の絶間姫。
所化さん二人がおトボケな会話をして居眠りを始めると、御簾があがって後ろ
姿の鳴神上人が登場。前を向いた愛之助さんの上人、堂々として品もある。
そこへ鐘を鳴らしながら花道から現れた七之助さんの雲の絶間姫、あの特徴的
な眉。だけどとってもきれい。いよいよ二人のやりとりが♪

個人的にもう一つの見どころは本役としてこの役を演じる愛之助さん。
昨夏の鳴神上人の代役初日。御簾が上がってゆく時は「生きた心地がしなかっ
た」と、その時の心情を語る言葉が筋書・番付、新聞等にも載っていた。
代役と本役、それがこうまで違うものなのかということを客席から実感したの
が今回の舞台だった。もちろん、台詞や動きに大きな違いがあるわけではない
のだけれど。両方をナマで見た者の感覚として・・・。

博多での愛之助鳴神上人、なんだか自由だぞと思った。
借り着ではないという安心感からか、本役というリキミが一切感じられず、役
に対して自由で、いい意味で軽みさえ感じられるほど。
そのうえ二度目の役を一歩踏み込んだ気持ちで演じているようだった。
特に上人が雲の絶間姫の体に触れる場面。大真面目にやりとりしながらも軽さ
の案配が絶妙。最初は知らずに胸を触ってしまったけれど、2回目は確信犯な
の? どっちなの? と思わせる煩悩と品格の間の演技にドキドキ(笑)。
一方、だんだん自分の仕掛けにノッてくる上人の大胆な変化に驚きながらも、
冷静に舵を取る雲の絶間姫。
テンポのいい二人の掛け合いがホントに可笑しくて、心の底から笑える。
それだけじゃない。絵になる二人が並ぶと妙にリアルでスリリングなのがいい。
また、昨夏の舞台では本役の雲の絶間姫(孝太郎さん)にリードされがちだっ
た愛之助さん。今回は上人からも仕掛けているんだろうかと思わさせるフシが
ある。雲の絶間姫の手に落ちた後「堕落した」「破戒した」と姫に迫る時の上
人の表情には凄みがあり、恐ろしいくらい。その瞬間にフッと男の色気が漂う。
これなら朝廷に抗う反骨精神を持ち合わせていても不思議ではないと思えた。
愛之助さんの変化、というか進化。感じることができてうれしかった。
これでますます歌舞伎にのめりそうだ。

自由な愛之助鳴神上人を受けての、七之助さんの姫もなかなか挑発的。
夫婦になろうという性急な上人に、妻になってもいいけどお坊さんのままでは
イヤよと還俗させちゃうし、酒はダメだという上人に固めの盃と言いくるめて
飲ませてしまうし。盃を戻す、返すは縁起がわるいからと、ひたすら上人だけ
にお酒をすすめて、ついには酔いつぶしてしまう。
酔いつぶれる前に、盃に映った注連縄が蛇に見えたと怯えてみせ、ちゃっかり
雨を降らす秘法を聞き出しているわけで。
上人が眠ってしまっている間に、注連縄を切る雲の絶間姫、スーパーウーマン。
閉じ込められていた龍神が逃げ出して、雨ザアザア、雷ゴロゴロ。
ミッション完了!
体を張った命がけの任務を終え、姫が花道を逃げ帰るときのすばやさ(笑)。
これで民衆は救われたわけだけど、あまりの見事さに姫には上人を想う気持ち
など雨粒一滴もなかったことが明白すぎて、上人がなんだかかわいそうになっ
てしまう・・・。

目が覚めて、すべてを知った上人の怒り狂う様子が見せ場。
怒髪天をつき、ぶっ返りで白装束から炎の装束に。
昨夏も思ったけれど、荒事の愛之助さん、やっぱり似合うわ。
切られ与三も素敵だけど、荒々しい隈取りで目をカッと開けた顔もいい!
上人、柱巻きで悔しがるわ、所化たちを投げ飛ばすわ、の大騒ぎ。
見得も決まって拍手、拍手。
前回は代役なのでガッカリされないように頑張ったところ「松竹座の所作板を
2枚踏み抜いた」(ご本人の証言)らしい。
ここからですよ。花道の引っ込み。
歌舞伎十八番らしい手で拍子をとるあの動きをした後、今回も力が入る入る。
いいねえ、いいねえ! 
観客の注目を一身に集め、ものすごい形相のまま飛び六法で引っ込む鳴神上人
なのだった。


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2 コメント

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うらやましいなぁ (どら猫)
2008-02-24 08:57:24
おはようございます。
詳細なご報告をありがとうございます。
悔しいなぁと思いつつも楽しく拝見しました。
博多のお芝居は寒さを吹き飛ばすくらい熱かったようで。
劇場も見やすくて良いし、周りには美味しいお店も沢山あるしで、行きたい劇場のひとつですが、いかんせん、遠いですし、チケット代も高いですもんね。
今度は、お泊りでゆっくりして行かれるといいですね。
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記憶に残る・・・ (ムンパリ)
2008-02-25 00:47:02
どら猫さん、長文ですのに引き続きお読み頂いてありがとうございます。現地に行きながら残念な思いをされたどら猫さんにも伝わればウレシイです。
博多はこの盛り上がりのおかげで、とっても記憶に残る公演になりました。たしかに遠征費もチケット代も浅草より高くつきますから、場所柄、旅と割り切って楽しむのがベストですね!
今回の私のように1日しかお休みがとれないとチョット厳しものが・・・。でも、行ってみてヨカッタです。来年は・・・大阪でもやってくれないかなあ~(けっこうマジ!)
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