My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

英語力が無い人が発言するために-MBAで良い発言を増やすには

2009-11-27 05:58:40 | 6. 英語論・英語学習

この前、どうやってケースを速読するか、を書いたので、今度はどうやってアウトプット(発言)するか。

私は、職業柄なのか、性格なのか、英語も出来ないくせに、MBAの授業中は頻繁に発言する。
まあ、英語がうまく出て来ず、その結果イイタイコトが伝わらず、たいした発言にならないことも未だに多々あるが、
うまく論旨が通って、先生に素晴らしいと評価され、クラスメートにすごいね、と言われた経験も多々ある。

MBA初期の頃は、価値のある発言:ダメ発言(通じない含む)=2:8くらいだったが、最近は6:4くらいに進歩してきた、と思う。
せめて、8:2くらいになって卒業したいね(笑)。

さて、「発言が出来ない」と悩み、解決できていない人の理由は主に次のようなものじゃないかと思う。
a) リスニング。先生・クラスが言ってる内容が全部聞き取れないので、正しい発言内容が出てこない
b) 発言のタイミングがつかめない。考えてたことを他の人に言われてしまい、Build upするのが難しい
c) 授業のテンポに合わせて速く考えられない、すぐにアイディアが出てこない
d) 恥ずかしい。うまく言えない、恥をかくかもかもしれない、と思うと手を上げそびれる

正直、この問題設定を正攻法で解こうとするのは大変だ。
a) リスニング能力を上げる
b) タイミングを理解する、すなわちアメリカ人のビジネス文化、コンテクスト(文脈)を理解する
c) 英語で速く考えられるようにする
d) 性格を変える(笑)。 授業前に酒を飲む(冗談です)
こんなの、どれも非常に時間がかかる話で、解決できないのは当然である。
まさに、解けない問題を解こうとしている良い例だ。

リスニング能力や英語で速く考えられるに越したことは無い。
でも、実際にはそんなことしなくても、意味のある発言は出来るはずだ、と私は思う。

意味のある発言とは、どのような能力から生まれるのか?
基本的には次の2つしかない、と思う。

1) 相手が知らない知識・ファクトを知っており、それに基づいて質問に答えられる
2) 同じ知識・ファクトから、相手が考え付かなかった意味合い・インサイトが出せる

この二つがあれば、リスニング力が多少劣ろうとも、英語力が多少無くとも、意味のある発言が常に出来るはずだ。
すなわち、発言できないのは英語力じゃなくて、中身の問題じゃないかと。

更に、中身はちゃんと準備すれば絶対につけられるものだ、と私は思ってる。
昔書いた英語就活準備と同じで英語力が無いものにとっては、1にも2にも準備が大事なのだ。
(そのために時間が必要だから、
ケース読むのに時間かけてるのは馬鹿馬鹿しい、と思うのだ)

1) 相手が知らない知識・ファクトを知っておく

知識を披露するだけの発言はウザイ。
私も、知識は本来インサイトを出すためのものだと思う。
しかし、最初のうちは知識だけでも、何も発言できないよりはいいだろう、と思っている。
それに発言の仕方によっては、知識なのに、インサイトに見えるように発言できる。

このパターンの典型が「お国の事例を紹介する」というやつなのだが、以前も書いたとおり、正直MBAのクラスで、日本の事例を話すことを求められるのは余り無い。
相対的に日本への注目度は下がってきているからだ。

それに、企業がグローバル化してる今、業界の軸やマーケティング・テクノロジーなどの機能軸の知識の方が、誰にとっても重要になってきている。
かといって、自分の業界のことしか話せなかったら、発言の幅は非常に狭まるだろう。

MBAの他の学生をOutsmartするためには、それなりの準備が必要だ。
発言のためだけじゃなく、自分が理解を深めるために非常に役に立つ。

この準備のコツは、「ケースに全くかかれてないことを知っておく」こと。

・(時間軸)ケース事例・会社について「その後」の最新のニュースを知っておく
授業で使われるビジネスケースは、既成のケース商品の場合、最新でも2年前のものだ。
だから、クラスでも「その後どうなったか」「どうすべきだったか」というのが語られる。
例えば、新規に始めた事業が成功したのか、M&Aがどうなったか、組織変革がどうなったか、など。

ネット上に、大量のWeb記事が落ちていて、簡単に調べられるんだから、チェックしておかない手は無い。
「その後」を知るだけでなく、何故その方向に行ったのか、それに対し業界人・専門家はどう見てるか、を調べておく。

発言に生かすときは、「その後こうなった」と披露するのではなく、「何故か」「正しかったか」ということにフォーカスして発言すること。

・(3C軸)その業界の有力プレーヤーや代替技術・商品、顧客ニーズについて知っておく
ケースに、業界の他のプレーヤーや技術を紹介してある場合は、わざわざ調べる必要は無い。
ところが、その企業の事例にフォーカスして、他のプレーヤーや技術などに全く触れてない場合がある。
市場ニーズについて想像しやすい消費者向け商品ならともかく、B2Bなのに市場の反応・ニーズが書いてない場合もある。
こういう場合は、100%クラスの議論でそれが肝になってくると考えていい。

ネイティブも含めて、「ケース」という目先の事例に捕われて議論が進む中、一歩引いて、本当にそこで議論されている方法が、この企業にとってベストなのか、を考える。
そのためには、自社だけでなく、競合や市場・顧客を知る必要がある。
いわゆる3C(Company, Competitor, Customer)で考える意味がここで出てくるのだ。

発言に生かす場合は、
-当時はこういう代替技術があった。それに比べて劣っていたのが、この製品がうまくいかなかった理由のひとつじゃないか。
-実際には顧客はこういうニーズを持っていたんじゃないか?だとしたらそもそもこの商品自体、ニーズにこたえてないのが問題じゃないか。
のように使う。

・(バリューチェーン軸)その業界の周囲の業界の変化を知っておく
この話は2)に書くFive Forcesに強く関係するが、企業はその業界のみと戦ってるわけじゃない。
特に、業界構造が変化する場合、サプライヤーやバイヤーとの力関係が変化することで、その企業の戦略が大きく変化する。

具体的には、技術の変化により、サプライヤーがより技術を持つようになり、力を失うケース。
バイヤーが巨大なBuying powerを持つようになり、力を失うケースなど。

こういう視点は通常ケースでは与えられてないので、これも発言に生かせば、あたかもインサイトを与えているように話せるだろう。

他にもあるが、だいたい知識として知っておいたほうが良いのはこのあたりだろう。
私も授業の準備にいつもここまで綿密にやってるわけではないが、時間軸、3C、バリューチェーンで自分の知ってる知識を整理しておくくらいはやる。
それだけで、発言は大分しやすくなる。

2) 知識・ファクトから他の人に無いインサイトを出す

インサイトとは、他の人が気がつかない、正しい論点に対する、正しい解のこと、だと思う。
知識の収集を上に書いた方法でやれば、それだけでもそれなりのインサイトが出てくるとは思う。
が、ここではそれ以上のインサイトを出すために、やるべき優先順位が高い順に書きます。

1.正しい論点を出し、仮説を用意しておく
以前の「ケース速読法」で書いたが、まずは論点は何か、と解くべき問題をしっかり認識しておくのが重要。
何が論点になるかは、先生の好みや教えたいことによって変わるので、いくつか自分なりの論点を準備しておく。
テストで山を張るのに似ている(笑)

この論点に対する答えは、仮設を立て、ちゃんとケース内の事例で検証・補強しておく。

いくつか準備しておけば、必ずその中のどれかはクラスで議論になったりする。
または、議論にならなくても、自分が重要な論点だと思えば、質問の形でクラスに投げかければよい。

論点を認識するのは、発言する、という目的だけでなく、その授業での学びを最大限にするために非常に重要だ。

2.フレームワークを活用して分析する
フレームワークを活用してその業界・企業を見ると、色んなことが見えてくる。
コンサルタントが、知らない業界を最初に見るときにフレームワークを活用するのはそのためである。
ただし、フレームワークを知ってることは何のとりえにもならない。
論点をしっかり認識してるのが大切。

S-curve:詳しい使いかたは、以前のエントリ「どの事業に参入すべきか超簡単に見極める方法」に書いたのでそちらを参照。
新規事業や事業の整理、M&Aなどの場合に、「その事業は本当に今から参入する・力を入れる余地があるのか」という論点に答える際に有効。
または、組織変革の際、「どのような組織にすべきか」「どのような人材を登用すべきか」に対して、事業の成熟度が重要になってくるので、これにも有効。
(簡単に言うと、未熟→フラットな組織。クリエイティブ。成熟→コスト重視。正確な管理。製品の多様化に対応できる組織)

Five Forces:マイケル・ポーターのFive Forces。
このフレームワークはMBAにいる人でも誤解して、過大評価したり過小評価してる人が多くて腹が立つので(笑)、いずれ詳しく記事にします。

ポイントは、業界の構造変化があって、力の源泉が移動する場合に使う。
「以前その企業が持っていた力は何が源泉だったのか?」
「今、誰にその力を奪われているのか?」
「その力をどうやって奪い返せばいいのか?」
という論点に答えるために使う。

他にも、Marketingの4Pとか組織の7Sとか、Growth-Share matrixとか、いろいろあるし、戦略論の授業なんかでも色々習うと思う。
習ったフレームワークを使うほうが、チームやクラスで議論するときも通じるので、私はそうすべきだと思う。
何度も書くが、どの論点に答えるための分析なのか、を認識するのが一番重要

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「クラスで発言をする」ということだけを考えた場合、こういう広い視野や知識を持ってると、
リスニングに問題があっても、タイミングに問題があっても、必ずどこかで自分の意見を言う機会に恵まれるはずだ。

それに、自分に自信を持てるだろう。それだけでも英語力で萎縮することは無くなる。

大切なのは、発言することじゃなくて、発言を目的としてこうやって勉強・分析することで、自分の確かな知識になっていくこと
そして、こうやって発言するうちに、英語で考える力や文脈を判断する力など、本当の英語力がついてくること

と、色々エラソーに書いたけど(笑)、私もまだまだ発展途上で、常に努力してるところ。
「他にもこういうコツがある」という方は是非是非教えてください。

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4 Comments

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賛成、反論、追加 (a golden bear)
2009-12-02 06:49:56
御久しぶりです。まず、前の記事にあった30分以内で要点をつかむ仮説思考の読み方、及び、本記事2)で述べられているフレームワークを使うなどでインサイトを出そうとする点は、賛成です。一方、違和感があったのが下記2点

○ 本記事1)にある、ケース外の情報を調べまくって出席する、というのは、通常禁じ手ではないのでしょうか。MITでどう教えているか知りませんが、ケースメソッドでは特に指定がない限り、ケース内に書かれた情報のみを前提として、準備・議論を進めるのがルールと認識してました(だから、ケースで書かれた業界出身者に脚光があたる)。まあ、別にそんなルール気にしない、と言われればそれまでですが、これ、結構ごまかすの難しいと思うので、他のクラス全員に卑怯者、と思われたくなければ、避けたほうが無難と思います。むしろ、それを調べる時間で、ケースの細部に目を払ったほうが、英語力の増加にも繋がる気がします。

○ 独力で面白い意見を生み出すことのみに絞ったアドバイスに見えます。もちろん、授業中にパッと独自の視点で意見が言えればかっこいいですが、ケースは数十人でのチームディスカッションの場。別にそんなホームランばかり狙って空振りしなくても、バントや犠牲フライなど、面白くなくてもチームプレーとして意味ある発言は色々あると思います。

というわけで、ここに書かれてないコツとしては、すぐ思いつくもので下記でしょうか。
○ 自分にわざとコールドコールが当たるように仕向ける: 席の位置の工夫や、事前に教授に「不意に当ててくれ」とお願いするなどしておき、実際とっさに指された時に、どれだけ無駄のない英語ではっきり答えられるかの練習
○ 質問を投げかける: ケースを読むうちに、毎回3つほど重要な質問を思い浮かべておき、実行する
○ 一番最初に手を大きく上げて、ケースのサマリーを30秒~1分で言う役を買って出る
ケースメソッドのあり方を考えさせられますね (Lilac)
2009-12-02 07:31:44
>golden bearさま

>ケース外の情報を調べまくって出席する、というのは、通常禁じ手ではないのでしょうか

なるほど。通常はどうなのか知らないのですが、私がMITで受けている授業では特にそんなことは言われてないんです。
もし通常のビジネススクールがそうなら、特に時間軸に沿って調べたりするのはあまりよくないかもですね。

MITで言われないのは。、授業の発言数などが成績で特に重要ではないからかもしれません。
また、Technologyバックグラウンドの人が多いので、それをやってしまうと、Tech系のクラスとか彼等の発言でDominateされてしまうというのもあるのかも。
もちろん「いかにも調べました」みたいなことだけ話したら、クラスで顰蹙買うのはMITも一緒です。

それにしても、そもそも業界に関する知識を着け、色んな視点から十分な議論を出来るようにするのがビジネススクールだと思うのに、「ケース以外は調べちゃダメ」なんて、何ともバカバカしい決まりですね。
90年代ならともかく、今の世の中って、たくさん情報がある中から、本当に必要なものを選び出し、意味合いを出す方法こそ問われているのに。
こんな前近代的な発想での手法を続けるなら、ケースメソッドというやり方自体、考え直した方がいいかもしれない、と思いますね。

>ここに書かれてないコツとしては

有難うございます。
更に補足すると、授業中は、どの質問にも最初に手を上げて答える、というのを私はやります。
そうすると、当たる回数は自然と増えます。

また、本文にも書きましたが、単に質問をする、というよりも「問題提起」をする、皆が気がつかなかったような、新たな論点を投げかける、というのがクラスにとっても役に立つと考えています。
ケースディスカッションについて (Big Arch)
2009-12-07 04:37:43
通りすがりの某MBA2年生です。セオリー通り、ちょっと違った視点からコメントさせていただきます。クラスで発言するのは、最初は本当に億劫でした。でも突き詰めて考えると、それは英語力の問題ではなく、日本語での思考力の問題ではないかと最近感じています。日本語だと、流暢に(当り前か、笑)話せるぶん、例え論理構造が明確でなくとも最終的には相手に十分言いたいことは伝わります。例え英語であっても、自分の頭の中にしっかりした論旨があれば、英語力(発音、単語のチョイス等)が不十分でも聞き手にしっかりと伝わり、結果として価値のある発言ができるのではないかと思っています。
小さいころからの鍛えられ方が違うのでしょうが、今の私は例え日本語であっても、一部のアメリカ人同級生のように、どもりなく理路整然と自分の意見を人前で述べる自信はありません。
半年後、日本に帰ったら日本語の勉強をちゃんとしないといけないと思う今日この頃です(苦笑)。
はじめまして (Lilac)
2009-12-08 12:22:32
>Big Archさま

>本語だと、流暢に(当り前か、笑)話せるぶん、例え論理構造が明確でなくとも最終的には相手に十分言いたいことは伝わります

全くその通りですね。
英語で話してると、日本語のとき如何にいい加減に論理を組み立ててたか反省しますね。

逆に英語ネイティブのクラスメートの非論理的な話し方が気になったりすることもありますけどね。

語学力がないからこそ、構造化され、より分かりやすい話し方をするべきで、訓練されるな、と思います。

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