ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

グルーヴィー (Groovy)

2007年04月28日 | 名盤


 今夜はジャズを聴いている。
 ぼくはピアノ・トリオが好きなのだ。
 CDプレーヤーのトレイに載っているのは、レッド・ガーランド・トリオの「グルーヴィー」。
 タイトル通り、とてもグルーヴィーな好演である。


 レッド・ガーランドは1923年生まれ。
 楽器を手にするようになってからはクラリネットやアルト・サックスを吹いていたようだ。ピアノを教わったのは軍隊時代で、その頃から音楽に夢中になったという。
 除隊後の1945年にプロとなり、46年にビリー・エクスタインのバンドに入った。この頃チャーリー・パーカーやコールマン・ホーキンス、ソニー・スティットら多くの一流ミュージシャンと共演し、腕を磨いた。
 1955年から58年まではマイルス・デイヴィス・クィンテットに加わり、スター・ピアニストとして活躍している。


     
 
 
 ガーランドの特徴といえば、軽快なスウィング感、明快なアドリブ、鍵盤の上を指が転がってゆくような心地よいタッチ、タイミング良く入る左手のブロック・コード、などがあげられる。
 カウント・ベイシーや、ナット・キング・コール、バド・パウエルらから影響を受けているようで、泥臭いけれどもどこまでもスウィングするブルージーなピアノを弾いている。


 1曲目「Cジャム・ブルース」は、その快演で知られている。右手の魅力的なシングル・トーンでのソロ、それを支える的確な左手のブロック・コード、これらから生み出されるスウィング感はとても小気味良いものだ。
 2曲目のしっとりとしたバラード「ゴーン・アゲイン」と、4曲目のブルージーな「柳よ泣いておくれ」はスローで演奏されている。ガーランドのフレーズはさらに丹念に、流れるように、紡がれてゆく。


 「ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?」が3曲目。アップ・テンポの4ビートで、軽快に流麗にスウィングしているのが気持ち良い。
 5曲目「ホワット・キャン・アイ・セイ・ディア」と、このアルバム唯一のガーランドのオリジナルである6曲目「ヘイ・ナウ」、この2曲のメロディー・ラインも明るく、ハッピーにスウィングしている。
 ガーランドの適度な力の抜き加減が心地良いタッチとスウィング感を生み出しているのだろう。


          
 
 
 脇を固めているチェンバースとテイラーのふたりのサポートも素晴らしい。
 ベースのチェンバースはいわゆるウォーキング・ベース主体で、ぐいぐいとビートを出していて、それがガーランドにも好影響を与えているようだ。
 テイラーは脇役に徹していて、堅実なプレイでバンドのグルーヴに大きく貢献している。


 ビルの谷間の薄汚れたコンクリートの壁に白く書かれた落書き風の文字をあしらった有名なジャケットも、いかにも「グルーヴィー」。
 このアルバムには全6曲が収録されているが、そのどれもが珠玉の好演だ。このCDをかけていると、いつのまにか部屋がジャズ・クラブにでもなったような、心地よい錯覚に陥るのである。


◆グルーヴィー/Groovy
  ■演奏
    レッド・ガーランド・トリオ/Red Garland Trio
  ■リリース
    1957年12月
  ■レーベル
    プレステッジ/Prestige
  ■プロデュース
    ボブ・ワインストック/Bob Weinstock
  ■レコーディング・エンジニア
    ルディ・ヴァン・ゲルダー/Rudy Van Gelder
  ■収録曲
   A① C ジャム・ブルース/C Jam Blues (Barney Bigard, Duke Ellington)
    ② ゴーン・アゲイン/Gone Again (Curtis Lewis, Curley Hamner, Gladys Hampton)
    ③ ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?/Will You Still Be Mine? (Matt Dennis, Tom Adair)
   B④ 柳よ泣いておくれ/Willow Weep For Me (Ann Ronnell)
    ⑤ ホワット・キャン・アイ・セイ、ディア/What Can I Say, Dear (Walter Donaldson, Abe Lyman)
    ⑥ ヘイ・ナウ/Hey Now (Red Garland)
  ■録音
    1956年12月14日④⑤、1957年5月24日⑥、1957年8月9日①②③
    ヴァン・ゲルダー・スタジオ (ニュージャージー州ハッケンサック)
  ■録音メンバー
    レッド・ガーランド/Red Garland (piano)
    ポール・チェンバース/Paul Chambers (bass)
    アート・テイラー/Arthur Taylor (drums)




 


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2 コメント

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Unknown (ジェイ)
2007-04-29 06:40:09
私もこのアルバムも、レッド・ガーランドも大好きです。ピアノ・トリオの良い所が全部出てるって感じがします。このジャケットも勿論お気に入りです。
これを見ると「ベガーズ・バンケット」を思い出すのは私だけでしょうか?(笑)
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ジェイさん (MINAGI)
2007-04-29 11:26:46
ジェイさんもこれ好きですか(^^)
ピアノ・トリオ・アルバムの定番、といった感じの一枚ですよね。効きすいし、楽しく聴けるし。

>ベガーズ・バンケット
 あ、あのトイレの落書きのやつですね。そういえば雰囲気似てる似てる~
 そういえば「ベガーズ・バンケット」ってジャケが2種類あるんですね。落書きのと、タイトル文字だけのシンプルなのと。
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